ベンダーリースで損しない営業実務と与信のリアル現場徹底攻略ガイド

あなたの現場で「リース審査は通ったのに、なぜか決まらない案件」が続いているなら、すでに静かに損をしています。ベンダーリースを「月額にすれば通りやすい」「資金繰りが楽になります」といった表面的な説明だけで扱うと、失注だけでなく、将来のクレーム・解約金トラブル・社内稟議での差し戻しまで抱え込むことになります。

問題は、ベンダーリースそのものではありません。
営業が押さえるべき「利害関係」と「与信と条件調整の裏側」が抜け落ちたまま、金額と料率だけで話を進めてしまう構造にあります。ユーザーの決算期、会計処理への不安、銀行借入・割賦・サブスクとの比較、リース会社ごとのクセ。これらを見ないまま提案すると、最後の最後で「やっぱり現金で」にひっくり返されます。

この記事は、ベンダーリースの仕組み解説やメリット・デメリットの一般論ではありません。
「通ったけど決まらない謎案件」「総支払額を見て破談」「更新時期のズレで資金繰りが悪化」といった、実際に起きうる失敗パターンを起点に、どこで判断を誤り、どの一言や一通のメールで巻き返せるのかを、営業実務のレベルまで分解します。

さらに、ベンダー・ユーザー・リース会社の三者の利害を整理し、銀行借入・割賦・サブスクとざっくり比較したうえで、「契約期間」「残価設定」「与信ライン」の攻防を、営業がどこまで踏み込んで設計すべきかを具体的に示します。
DX・サブスク時代に増えている「物+保守・サービス」を巻き込んだスキームや、紙とFAX文化が残る職場でボトルネックになるポイントも取り上げます。

読み終えるころには、次の3点が手に入ります。

  • ベンダーリースで「損する提案」と「得する提案」の境界線が明確になる
  • 与信がギリギリの顧客でも、無理なく通しやすい案件設計の考え方が理解できる
  • そのまま使えるトーク例・メール文面・チェックリストで、明日からの商談を即改善できる

この数十分をかけずに、今まで通り「なんとなくのベンダーリース提案」を続けることこそ、最も高くつくコストです。どの章から読めば、自社とあなたの営業にとって最短距離になるかを、次の表で整理します。

セクション 読者が手にする具体的な武器(実利) 解決される本質的な課題
構成の前半(現場トラブル〜失敗事例〜業界常識の再点検〜与信の裏側) ベンダーリース提案でどこが失敗ポイントになるかを特定し、与信・条件調整を踏まえた「通る案件」の組み立て方が分かる 「通ったのに決まらない」「最後に現金に負ける」原因が分からないまま、感覚と値引きで勝負している状態
構成の後半(トーク・文面例〜DX対応〜チェックリスト〜戦略設計) 商談トーク、メール・LINE文面、チェックリストと運用ルールを通じて、成約率と回収リスクを同時に改善する具体手順が手に入る 現場任せの属人的な提案から抜け出せず、リース会社もスキームもバラバラで、再現性のある稟議通過・継続収益が作れない状態

ここから先は、感覚ではなく、数字と与信とプロセスで「勝てるベンダーリース営業」を組み立てるパートに入ります。

  1. ベンダーリースを“なんとなく”で提案すると何が起きるか?現場トラブルのリアル
    1. 営業現場でよくある「通ったけど決まらない」謎案件の正体
    2. ユーザーが最後に口にする「やっぱり現金で」の一言の裏側
    3. 「悪質販売」扱いされかねない危ない提案パターン
  2. 「普通のリース」とどこが違う?ベンダーリースの本当の使いどころ
    1. ベンダー・ユーザー・リース会社の三者の利害関係を一度整理する
    2. 銀行借入・割賦・サブスクとの“損得勘定”をざっくり数字で比べる
    3. ここでしか語られない「契約期間」「残価設定」の攻防
  3. 失敗案件から学ぶ:最初は順調だったのに暗転したベンダーリース事例
    1. 稟議でひっくり返った設備更新案件:見落とされた決裁者の「不安ポイント」
    2. 審査は通ったのに総支払額で破談になったIT機器リプレイス
    3. 更新時期がズレてユーザーの資金繰りを圧迫したマルチベンダー案件
  4. 他社はなぜそこを説明しない?ベンダーリースの「業界の常識」をあえて疑う
    1. 「リースなら借入枠は気にしなくていい」という古い話
    2. 「どのリース会社でも大差ない」は本当か?現場感覚で切り分ける
    3. 料率だけを比べる資料がユーザーを誤解させるワケ
  5. ベンダー営業が押さえるべき「与信と条件調整」の裏側メカニズム
    1. リース審査で見られているポイントを営業がどう翻訳すべきか
    2. 金額・期間・構成をいじっても通らない案件に共通するパターン
    3. 与信がギリギリの顧客に“無理なく通す”ための組み立てかた
  6. 「売りたい側」と「払いたい側」のズレを埋める、提案トークとLINE/メール文面例
    1. 初回商談でベンダーリースを切り出すときの一言テンプレ
    2. 決裁者宛のフォローメール/社内共有用の説明文の書き方
    3. 実際のやり取りを再現したLINE風ケーススタディ
  7. DX・サブスク時代に、ベンダーリースはどう変わっているのか?
    1. リモートワーク商材・クラウドサービスで増えている新しい組み方
    2. 「物」だけでなく「保守・サービス」を巻き込んだスキーム設計
    3. 紙とFAX文化から抜け出せない現場で起きている“ボトルネック”
  8. これだけは外せない:ベンダーが自衛のために作るべきチェックリストとルール
    1. 契約前に必ず確認しておくべき7つのポイント
    2. 社内でベンダーリースを扱うときの「NGワード集」とその理由
    3. トラブルを防ぐための記録・議事メモ・見積書の残し方
  9. 今日から変えられる一手:自社に合うベンダーリース活用戦略を組み立てる
    1. 自社の商品ラインナップとベンダーリースの“相性”を見極める
    2. リース会社を増やす/絞る判断基準のリアル
    3. 半年後の成約率と回収リスクを変える「小さな運用ルール」の決め方
  10. 執筆者紹介

ベンダーリースを“なんとなく”で提案すると何が起きるか?現場トラブルのリアル

「リースって言っとけば、とりあえず通るでしょ?」
この“なんとなく提案”が、案件も信頼も一気に吹き飛ばす火種になっています。現場で本当に起きているパターンだけを、営業目線で分解します。

営業現場でよくある「通ったけど決まらない」謎案件の正体

与信はあっさり通ったのに、なぜか決裁が降りない。
裏側では、多くの場合こんな構図になっています。

表で起きていること 裏で起きていること
営業「審査通りました!」と報告 経理「リースの会計処理が不安」と稟議でブレーキ
ユーザー担当者は前向き 決裁者がリースの仕組みを理解していない
見積書はリース料だけ 減価償却・残価・総支払の説明がゼロ

特に多いのが、経理・監査側の「リース会計がイメージできない」という不安です。
ここを放置すると、稟議書の片隅にこう書かれます。

  • 「オフバランスか要確認」

  • 「借入と比較した資料なし」

  • 「総支払額の妥当性説明不足」

この時点で、案件はほぼ止まります。
営業がやるべきは、審査結果を「通った/通らなかった」で終えず、経理が稟議にそのままコピペできるレベルの説明をセットで出すことです。

ユーザーが最後に口にする「やっぱり現金で」の一言の裏側

商談の終盤まで順調だったのに、見積提示後に出てくるあの一言。

「やっぱり今回は現金でいきます。」

多くの営業が「値段か…」と捉えますが、数字だけの問題ではないケースが目立ちます。

よくある本音パターン

  • 「総支払額が高く見えるが、その理由を説明してくれない」

  • 「決算期とリース期間のズレで、減価償却の絵が描けない」

  • 「途中解約や入替時のコストがどれくらい膨らむか分からない」

特に決算期とのズレは致命傷になりやすく、
例えば「3月決算なのに、4月開始・7年リース」を安易に組むと、ユーザー側の資金繰り計画と帳簿上の費用認識がかみ合わず、「なんとなく損をしそう」という不信感だけが残ります。

営業が押さえるべきポイントは1つです。

  • 「現金より支払い総額は増えるが、それでも合理的になる条件はどこか」

この腹を割った説明をしないままリースを出すと、最後の最後で「やっぱり現金」が飛んできます。

「悪質販売」扱いされかねない危ない提案パターン

ベンダーリース自体は金融商品として健全でも、提案の仕方次第で一気に“悪質寄り”に見えてしまうことがあります。

危険信号が灯る提案パターン

  • 月額だけを強調し「総額」を意図的に見せない

  • 「リースなら全部オフバランスですよ」と古い常識で押し切る

  • ユーザーの更新サイクルを聞かずに長期リースを当て込み

  • 「とりあえず通りやすい会社で出しておきます」と料率を軽視

中でも問題なのは、「通りやすいリース会社」を優先した結果、料率が高止まりし、後からユーザーが総支払額を電卓で叩いて青ざめるパターンです。ここで一度不信感を持たれると、

  • 「解約金が高すぎる」

  • 「乗り換えのたびに二重払いになっている」

といったクレームに発展し、「リースはもうこりごりだ」と業界ごと嫌われかねません。

営業側が自衛するには、

  • 最初の段階で「更新時期」「決算期」「使用予定期間」を必ずヒアリング

  • 見積書に月額・総額・想定残価・途中解約の考え方を明記

  • オフバランスの可否は「会計基準により異なるため、必ず顧問税理士・監査人と確認」と一言添える

この3点を徹底するだけで、「悪質販売」ゾーンからは一気に距離を取れます。営業負荷は少し増えますが、そのぶん失注とトラブルをまとめて減らせる“安いコスト”です。

「普通のリース」とどこが違う?ベンダーリースの本当の使いどころ

「リース付けときますね」で済ませた瞬間、その案件は“価格勝負の消耗戦”に落ちます。ベンダーリースは、本来そこから一段深く踏み込んで、利益と回収リスクを同時にコントロールするためのファイナンスの武器です。

ポイントは、普通のリースと違い「販売会社(ベンダー)が前面に出て、ユーザーとリース会社の関係を設計できる」こと。ここを理解している営業と、なんとなく申込書だけ流している営業では、3年後のリピート率も紹介案件数もまったく変わります。

ベンダー・ユーザー・リース会社の三者の利害関係を一度整理する

まずは、誰がどこで得をし、どこで損をしやすいのかを“腹落ち”させます。

立場 何を一番気にしているか ベンダーリースで得るメリット ありがちなトラブルの火種
ベンダー(販売会社) 売上・粗利・回収リスク 審査通過率アップ、一括入金、追加提案のしやすさ リース説明不足で「悪質販売」扱い、更新時期ズレ
ユーザー(中小企業) 月々の支払負担、節税、手続きの簡単さ 初期負担を抑えた設備導入、保守込みの見通しある支払 総支払額にあとから驚く、会計処理への不安
リース会社 回収リスク、残価リスク、案件ボリューム ベンダー経由の安定した案件供給 ベンダーのヒアリング不足による解約・クレーム

ここで重要なのは、利害は対立しているようで、設計次第では“全員がそこそこハッピー”を作れる点です。

営業現場で失敗するのは、多くの場合「誰か1人の視点だけで条件を組む」時です。例えば:

  • ベンダー視点だけで「とにかく通りやすいリース会社」に出す

  • ユーザー視点だけで「月額最安」に寄せて期間を無理に伸ばす

  • リース会社視点だけで「残価ゼロ・短期」でガチガチの与信にする

このズレを埋める役割を、本来ベンダーが担うべきなのに、実務では“申込書の回覧係”になっているケースが多い。ここから修正していく必要があります。

銀行借入・割賦・サブスクとの“損得勘定”をざっくり数字で比べる

ユーザーが最後に「やっぱり現金で」と言うのは、感情ではなく損得のイメージが持てない不安が原因です。そこで、商談の場では次のような“ざっくり比較”を一緒に描くと刺さります。

前提例:500万円のIT機器、5年利用想定、中小企業(製造業)

手段 月々の支払イメージ 手続きの重さ 会計・税務のポイント ベンダーのコントロール余地
銀行借入 約9〜10万円前後(元金均等なら前半重め) 重い(決算書提出、面談) 借入金・減価償却。借入枠を食う ほぼ無し
割賦販売 約9〜10万円前後(利息含む) 中程度 資産計上・割賦金の扱いに注意 中程度
普通のリース 約10〜11万円前後 比較的軽い リース会計基準の確認が必要 低め
ベンダーリース 約10〜11万円前後(保守込みにしやすい) ベンダーが段取り 保守・サービスを含めた処理設計がしやすい 高い
サブスク型サービス 7〜12万円レンジで柔軟 軽い 原則費用処理(内容による) 非常に高い

ここでのキモは、「金利が高い/安い」を話す前に、“キャッシュの動き方”と“手続きコスト”を言語化することです。

ペルソナ1の営業マネージャー視点なら、部下にこう伝えると理解が進みます。

  • 銀行借入は「金利は安いが、社長の時間が一番高くつく」

  • ベンダーリースは「金利は中くらいだが、手続きの手間を最小化して売上を前倒しできる」

  • サブスクは「単価は高く見えるが、解約の柔軟性という“保険料”も含まれている」

この翻訳をせずに料率だけを比較資料に出すと、ユーザーは“高い保険に無理やり入らされている感覚”になり、稟議で止まりやすくなります。

ここでしか語られない「契約期間」「残価設定」の攻防

現場で一番モメるのに、ネットにはほぼ出てこないのがこの2つです。ここが分かると、「通らない案件」と「通りやすくて感謝される案件」の違いがかなりクリアになります。

【1】契約期間のリアル

  • リース会社は「法定耐用年数」をベースにしたい

  • ユーザーは「実際の利用予定年数」より短くしたい(入替えリスク回避)

  • ベンダーは「月額を下げたいから長くしたいが、更新提案のタイミングも確保したい」

ここでありがちな失敗が、ユーザーの決算期と更新時期がズレる組み方です。例えば、3月決算の会社に4月スタート7年リースを組むと、更新時期が中途半端な月に来て資金繰りが乱れます。結果として「今回は見送るかも」が出やすくなり、リピートが消えます。

【2】残価設定の攻防

  • 残価ゼロ:月額は上がるが、与信・回収リスクは下がる

  • 残価あり:月額は下がるが、途中解約・トラブル時の精算が複雑になる

ベンダーリースでは、ここにベンダー独自のサービス(保守・サポート・入替保証)を絡められるのが武器です。

設計パターン 月額 与信の通りやすさ 更新・入替提案のしやすさ トラブル時のリスク
残価ゼロ・短期 高め 高い 早めに再提案できる ユーザー負担重くクレーム化しやすい
残価あり・長期 低め 中程度 更新タイミングを逃しやすい 清算金トラブルになりがち
残価小・中期+保守込み 中間 中〜高 保守更新と一体で提案しやすい トラブル時も「サービス価値」で説明可能

ペルソナ3のDX推進マネージャーが設計するなら、「残価小・中期+サービス込み」が最も運用しやすいゾーンです。理由はシンプルで、月額の説明がしやすく、更新時期もコントロールしやすく、万が一の解約時も「物だけの話」にならずサービス価値で会話できるからです。

営業マネージャーが部下に教えるべきは、「期間も残価も、料率も、全部“与信と更新戦略のつまみ”だ」という感覚です。申込書の空欄を埋める作業ではなく、三者の利害を調整する“設計図”を引いている自覚を持った瞬間から、ベンダーリースは単なる支払手段ではなく、強力な営業ツールに変わります。

失敗案件から学ぶ:最初は順調だったのに暗転したベンダーリース事例

営業現場でベンダーリースが怖くなるのは、「ドンピシャでハマった」と思った案件ほど、最後の最後でひっくり返るからです。ここでは、事務機器・IT機器ディーラーの営業マネージャーや、中小企業の経営者が実際に直面しやすい“暗転パターン”を分解します。

稟議でひっくり返った設備更新案件:見落とされた決裁者の「不安ポイント」

大型の設備更新でよく起きるのが、「営業とは盛り上がったのに、経理稟議でストップ」というパターンです。与信は問題なく、ベンダーもリース会社も手続きは進められる状態。それでも止まる理由は、経理・監査側のこの一言に集約されます。

  • 「このリース、会計処理は本当に問題ないのか」

  • 「オフバランスになるって聞いたが、今の基準でもそうなのか」

  • 「借入扱いなら、銀行との約束に影響しないか」

多くの販売会社の営業は、ここを「リース会社が説明してくれるはず」と丸投げしがちですが、決裁の場にリース会社の担当は同席しません。ベンダー側が“翻訳者”として動線を設計できていないことがボトルネックになります。

経理が気にする視点を整理すると、論点がはっきりします。

見ている人 不安ポイント 営業が話すべきポイント
経理・財務 会計処理、オフバランスの可否 会計基準の考え方と、監査人との擦り合わせ前提での説明
経営者 キャッシュと借入枠 月々手残りと他のファイナンスへの影響
現場部門 更新タイミングと業務影響 納期、入替作業、ダウンタイム

「リースで月々いくらです」だけでは、決裁者の財布の不安も、監査人のチェックも越えられません。初回提案の段階で、会計処理と稟議用の説明文テンプレを同時に出せるかどうかが、成否を大きく分けます。

審査は通ったのに総支払額で破談になったIT機器リプレイス

IT機器のリプレイスでは、「とりあえず通りやすいリース会社で」と申し込んだ結果、後半で顧客の表情が一気に曇るケースが目立ちます。よくある流れはこうです。

  • 高額だが必要性は理解され、見積までは順調

  • 営業が“通りやすさ優先”で特定のリース会社に申込

  • 承認が下りて、いざユーザーに総支払額を提示

  • 経営者が「これなら銀行借入の方が安いのでは」とブレーキ

この構図には、ベンダーとリース会社の利害関係が潜んでいます。ベンダーにとっては「審査が通る」「手続きサポートが早い」サービスがありがたい一方で、ユーザーは総支払額とキャッシュアウトのタイミングを見ています。

比較軸 銀行借入 ベンダーリース
金利・料率 低めになりやすい 商品・期間で幅が出やすい
手続き 書類が多く時間も長い ベンダーとリース会社で一気通貫
交渉余地 金融機関との関係次第 構成・期間調整で実質負担を動かせる
見え方 借入として認識 サービス込みの利用料に見える

営業が「月額だけ」見せていたのに、最後に総支払額を出すと、「なんでここまで高くなるのか」という心理的ギャップが生まれます。ここを防ぐには、以下をセットで提示するのが基本です。

  • ベースとなる現金購入・銀行借入の概算シミュレーション

  • ベンダーリースでの総支払額と、キャッシュフローの平準化メリット

  • ファイナンスではなく「サービス付き利用権」としての位置付け(保守・サポート込みかどうか)

最初から“比較表前提”で話す営業と、「とりあえずリースもあります」と後出しする営業では、破談率と紹介案件の数に大きな差が出ます。

更新時期がズレてユーザーの資金繰りを圧迫したマルチベンダー案件

複数メーカー・複数サービスをまとめて提案するマルチベンダー案件では、更新時期のズレが資金繰りを直撃することがあります。典型的な失敗は次のパターンです。

  • 既存のリース契約がそれぞれバラバラの満了月

  • 新規提案の際、「今の機会に全部入れ替えましょう」と営業が一括提案

  • 既存契約の中途解約金を織り込みつつ新契約を組成

  • 数年後、想定よりも高い月額負担が続き、資金繰りを圧迫

背景には、「リース会社を増やしすぎて、毎回見積比較で疲弊している販売会社」「更新管理をエクセルとFAXで回している現場」があります。営業は自社の売上の山を見ていますが、ユーザーは決算期ごとのキャッシュフローの谷を見ています。

更新案件で必ず押さえたいのは、次の3点です。

  • 既存リースの満了月・残存期間・残価の整理

  • 決算期とボーナス月のキャッシュの山谷

  • 保守・クラウドサービスなど「物以外」の契約期間

この整理をリース会社任せにすると、ユーザーの資金繰り目線が抜け落ちます。営業側で、少なくとも次のような簡易シートを用意しておくと、「売り急ぎによるキャッシュ圧迫」というレッテルを避けられます。

項目 現状契約 新提案案A 新提案案B(緩やかプラン)
月額負担 30万円 50万円 40万円
ピーク月負担 35万円(3月) 60万円(3月) 45万円(3月)
中途解約金総額 0円 150万円 80万円
買い替えタイミング バラバラ 一括更新 2年かけて分割更新

「今期の売上」だけを見るのか、「3年後の紹介案件と信頼残高」まで見るのか。ここを腹を括って設計できるかどうかで、ベンダーリースは“消耗戦の道具”にも、“継続ビジネスを支えるファイナンスサービス”にもなります。

他社はなぜそこを説明しない?ベンダーリースの「業界の常識」をあえて疑う

「リースは金融の話だから、細かく話すと嫌がられる」
そうやって説明をサボった結果、稟議でひっくり返されている営業現場は少なくない。ここをきちんと整理できるベンダー営業だけが、単価もリピートも一段上がる。

「リースなら借入枠は気にしなくていい」という古い話

今も営業トークで飛び交うこのフレーズ、決裁者の前で口にした瞬間に「この販売会社は会計とファイナンスを分かっていない」と判断されるリスクがある。

ポイントは次の3つだけ押さえれば十分だ。

  • 銀行の融資枠と「実質的な有利子負債」は、金融機関側では一体で見られている

  • 会計基準の変更で、多くのリース契約がオンバランス扱いになっている

  • モニタリング銀行は、リース残高も含めて資金繰りをチェックしている

ユーザー経営者の頭の中を整理すると、感覚値は次のようになる。

視点 昔の感覚 今、金融機関が見ている現実
借入枠 リースは別枠 リースも「実質借入」に近く評価
財務への影響 オフバランスで軽い 資産・負債として把握
印象 攻めのファイナンス 過度だと「借り過ぎ」評価

だからこそ、今の現場で効くトークは「枠を使わない」ではなく、「銀行借入とリースをどう配分すると、御社の財布(手残り)が一番ラクか一緒に整理しましょう」という言い方だ。ここまで踏み込むと、経営者の表情が明らかに変わる。

「どのリース会社でも大差ない」は本当か?現場感覚で切り分ける

リース会社を3社も4社も増やした結果、見積もり比較のたびに営業が疲弊している現場は珍しくない。「正直、どこでも同じですよ」と営業が口にしてしまうのも、その疲労の表れだ。

しかし、現場で見ると差ははっきりしている。

切り口 差が出やすいポイント 営業マネージャーが見るべきところ
与信姿勢 中小企業・創業期への柔軟さ 自社のメイン顧客層と相性が良いか
事務フロー 手続きスピード・オンライン化度合い DX推進との親和性・社内負荷
商品設計 サービス付き・サブスク型への対応力 自社ビジネスモデルの将来像との整合
サポート 契約変更・解約時の対応 クレーム発生時に守ってくれるか

特に見落とされがちなのが「契約変更・解約」の扱いだ。同業他社がヒアリングを省略した結果、解約金トラブルになったケースでは、リース会社の規定の固さが炎上の火力を一段上げた。
ベンダーとしては、

  • 自社が狙う案件の「典型パターン」

  • そのときに多い「変更・増設・途中解約」の頻度

を洗い出し、それに強いリース会社を2〜3社に絞る方が、成約率と営業生産性の両方が上がりやすい。

料率だけを比べる資料がユーザーを誤解させるワケ

最後に、ベンダーリースの提案資料で一番事故を生むのが「料率比較だけのチラシ」だ。

ユーザー側の経営者は、次のように誤解しやすい。

  • 「料率が低い=総支払額もほぼ変わらないだろう」

  • 「リースなら全部オフバランスでしょ?」

  • 「保守・サービス込みの月額だから、解約も柔軟にできるはず」

実務では、次の要素で総負担が大きく変わる。

  • 契約期間(3年か7年かで、財布から出ていく総額は別物になる)

  • 残価や再リース条件(更新時の「縛り」の強さ)

  • 保守・サービス部分の扱い(途中解約時の精算条件)

ここをきちんと見せるなら、「料率表」ではなく、3パターンのキャッシュアウト比較表が効く。例えば、

  • 現金一括

  • 銀行借入5年

  • ベンダーリース6年(保守込み)

の「5年間の手残り」を1枚の表にして、「社長の財布に一番お金が残るのはどれか」を一緒に眺める。
この瞬間、ユーザーは「リースは高いか安いか」ではなく、「自社のビジネスに合うファイナンスかどうか」で判断するようになる。ここまで伴走できる販売会社が、次の決算期も声をかけられるベンダーだ。

ベンダー営業が押さえるべき「与信と条件調整」の裏側メカニズム

「与信で落ちたらリース会社のせい」
その思考のままだと、いつまでも“通る案件”は増えません。与信はブラックボックスではなく、営業が設計できるファイナンス条件です。

リース審査で見られているポイントを営業がどう翻訳すべきか

リース会社が見ているのは、ざっくり言えば「完走できるかどうか」です。現場では、これを営業向けの言葉に翻訳して扱うとミスが減ります。

【審査で見られる主なポイントと営業用の翻訳】

リース会社の視点 営業が押さえるべき翻訳
財務内容(自己資本比率、債務超過) 「この金額・期間で、この会社の体力は持つか」
直近の業績トレンド 「売上が落ちている時期に長期リースを組んでいないか」
既存借入・他社リース残高 「これ以上月額を積んだら資金繰りがパンクしないか」
対象物件・メーカー・ベンダー 「転売されず、最後までちゃんと使われる商材か」

営業がやるべきは「決算書を読み込むこと」よりも、ヒアリング情報を審査部の言葉に変換してあげることです。

  • 決算は悪いが、大口案件の受注が決まっている

  • 赤字だが、銀行が中長期のリスケ計画を組んでくれている

  • 業種的に在庫が重く見えるが、回転率は実は高い

こうした話を、申込書の備考や別紙で補足しないと、リース会社は「数字だけ」で判断せざるを得ません。逆に、ここを押さえるベンダーはSMFL含め複数社の審査部から“説明が上手い販売会社”として覚えられます。

金額・期間・構成をいじっても通らない案件に共通するパターン

「じゃあ金額を少し下げてみます」「期間を短くして再申請します」
こうした“当てずっぽうの調整”で何度も落ちる案件には、はっきりした共通点があります。

【何度組み替えても通りにくい案件の特徴】

  • 対象物件が「汎用的すぎて」転売リスクが高い(PC単体のみ、スマホ端末のみなど)

  • 既存のリース・借入がパンパンで、月額がどうしても増えざるを得ない

  • 売価が相場から乖離しており、リース会社の残価評価と合わない

  • ベンダー側のクレーム率・解約トラブルが多く、販売会社としての評価が低い

特に見落としがちなのが販売会社の“過去の振る舞い”です。
同業他社が、説明不足のままベンダーリース契約を量産し、解約金トラブルを多発させた結果、「このベンダー経由の案件は慎重に」というフラグが立っていることがあります。

この場合、金額・期間いじりではほぼ解決しません。
必要なのは

  • 商材の構成を「保守・サービス込み」にして、長期利用前提を示す

  • 営業プロセスと説明内容を見直し、「悪質販売リスク」を減らすルール化

  • 問題になりやすい契約条件(中途解約、残価)の整備を、リース会社と協議

といった、ベンダー側の“ビジネス活動”そのもののアップデートです。

与信がギリギリの顧客に“無理なく通す”ための組み立てかた

「このユーザー、ギリギリだな」と感じた瞬間から、営業の腕の見せどころです。
無理に押し込むと、後で資金繰りを壊し、「悪質販売」扱いになりかねません。

与信ギリギリ案件を“通しやすく・破綻させない”ためのチェックポイント

  • 決算期と導入時期を合わせる

    決算直前に大型リースを組むと、減価償却と資金繰りがズレてユーザーが苦しくなります。更新タイミングを1〜3か月ずらすだけで、「完走可能性」は一気に上がります。

  • 物件構成を分けてリスクを調整する

    コア設備は長期、周辺機器は短期や現金・割賦など、1本の契約に全部載せない設計が有効です。

  • リース会社の得意領域に合わせる

    ITが得意な会社、医療機器が得意な会社など、リース会社ごとに“胃もたれしない商材”があります。ベンダーがリース会社を増やしすぎて比較疲れしている現場ほど、商材ごとの使い分けルールが武器になります。

  • 総支払額のインパクトを先に見せておく

    「誰でも通りやすい会社だから」と料率の高いところに出し、稟議段階で総支払額を見られてひっくり返る案件は少なくありません。見積の初期段階で、ユーザーにキャッシュアウトの全体像を必ず共有しておきます。

与信と条件調整を“裏側の魔法”扱いせず、ベンダー・ユーザー・リース会社の三者が納得できるビジネス設計の一部として扱う。
ここを押さえた営業チームほど、ベンダーリースは「怖い金融商品」から「売上と信頼を同時に積み上げるサービス」に変わっていきます。

「売りたい側」と「払いたい側」のズレを埋める、提案トークとLINE/メール文面例

「リースの説明をした瞬間、空気がフッと冷える」―その違和感の正体は、多くが言い方のズレです。ここでは、現場でそのまま使えるテンプレと文面を一気にまとめます。

初回商談でベンダーリースを切り出すときの一言テンプレ

初回商談は「金融商品の説明」ではなく、「資金繰りと入れ替えサイクルの相談」に変換するのがコツです。

【設備系商材の場合】

  • 「今回の機器入れ替え、現金か借入かリースかで資金の減り方が全く変わります。

    御社の決算期とキャッシュの動きに合わせて、3パターンくらいざっくり試算してみましょうか?

【IT・サブスク寄り商材の場合】

  • 「このサービス、買い切りよりも利用期間に合わせたファイナンスにした方が、リモートワークの見直しにも対応しやすいです。

    ベンダーリースを使うと『いつまで・いくらで・どう更新するか』を先に決められるので、あとで揉めにくくなります。」

NGは「リースなら初期費用ゼロです」「月々これだけです」だけで押し切るパターン。減価償却と決算期のズレに触れない提案は、決裁者の耳に届いた瞬間に止まりやすくなります。

決裁者宛のフォローメール/社内共有用の説明文の書き方

メールは「経理が読みたい3点」を必ず押さえます。

  • 1 支払総額と契約期間

  • 2 会計処理の考え方(リース or 割賦 or サブスク)

  • 3 更新・解約時の選択肢

サンプル文面:

件名: 複合機入替案 ベンダーリース案内と会計処理の整理

社長、経理ご担当者様

先日の打合せでご相談いただいた複合機入替について、
「現金払い」「銀行借入」「ベンダーリース」の3案を比較しました。

  1. ベンダーリース案の概要
    ・契約期間: 5年
    ・月額: ○円 (年間○円、総支払額○円 税抜)
    ・リース会社: ○○リース (販売会社と連携し保守サポートまで一括窓口)

  2. 会計処理の考え方
    現行のリース会計基準では、契約条件によりオンバランスとなる可能性があります。
    本件は「所有権移転なし」「残価設定あり」のため、通常のファイナンスリースとして処理する前提で設計しています。

  3. 更新・解約時の想定
    ・5年後は「再リース」「入替」「返却」の3パターンから選択
    ・決算期と更新時期がズレないよう、○月決算に合わせて満了月を設定

ご懸念や監査人のご意見があれば、それに合わせて条件を調整いたします。

このレベルまで書いておくと、「稟議でひっくり返る」確率が目に見えて下がります。

実際のやり取りを再現したLINE風ケーススタディ

営業と中小企業社長のLINEをイメージすると、会話の組み立てがクリアになります。

【NGパターン】

営業: 見積送りました。リースなら月々7万円です。
社長: うーん、やっぱり現金でいいかな…

【改善パターン】

営業: 先ほど見積送付しました。

営業: 現金・銀行借入・ベンダーリースで、
「5年後に手元資金がいくら残るか」を比較した表もつけています。

営業: 社長のところは来期に採用と店舗改装のご予定があると伺ったので、
キャッシュを残す案としてはベンダーリースが一番動きやすい設計です。

社長: なるほど。総額は少し高くなるけど、
来期の投資を考えるとキャッシュ優先の方がいいかもしれないですね。
一度、うちの経理にもその表を共有しておきます。

ここで効いているのは「月額の安さ」ではなく、ビジネス全体の資金繰りと今後の投資計画に話を引き上げている点です。

比較の話をするときは、シンプルな表が一番伝わります。

支払方法 初期支出 月額 契約期間 キャッシュの残りやすさ
現金購入 大きい 0 なし その年は減りやすい
銀行借入 小~中 3~7年 借入枠を圧迫
ベンダーリース 中~やや高 3~7年 設備更新と合わせやすい

この表をベースに、「御社のビジネス活動にどれが一番合うか」を一緒に決めるスタンスに変えた瞬間、ベンダーリースは「売り込み用の金融サービス」から「経営の選択肢」に格上げされます。

DX・サブスク時代に、ベンダーリースはどう変わっているのか?

「コピー機とPCをリースで…」だけの時代は終わりつつあります。今、ベンダーリースは“物販ファイナンス”から“サービス込みのビジネスモデル設計ツール”に変わり始めています。

ここを押さえないと、DX・サブスク商材を扱う販売会社ほど「売れるはずのサービスが、契約スキームでこける」というもったいない状態になりがちです。

リモートワーク商材・クラウドサービスで増えている新しい組み方

リモートワーク導入やクラウドサービス販売では、ユーザーが気にしているのは「総額」よりも月々キャッシュアウトの安定です。ここにベンダーリースを絡めると、商談の組み方が一気に変わります。

典型的な組み合わせを整理すると次の通りです。

提案パターン 中身 向いているユーザー 現場のポイント
ハード+ライセンス一括リース PC・UTM・初期ライセンス 初期費用を抑えたい中小企業 契約期間とソフト更新周期のズレに要注意
ハードはリース+クラウドは月額課金 端末・ルーターはベンダーリース、SaaSは別請求 既存クラウドを使い続けたい会社 「請求窓口をどこにまとめるか」を早めに合意
オールインワン月額(擬似サブスク) ハード+初期設定+保守をリースに内包 サブスク慣れした成長企業 解約・更新時の残債処理ルールを事前に説明

リモートワーク商材で失敗しやすいのは、クラウドの契約年数とリース期間が噛み合っていないケースです。3年更新のSaaSを5年リースで組むと、3年目のリプレイス提案で「リース残債」が障害になり、ユーザーのDX更新スピードを自分で殺すことになります。

営業マネージャー視点では、リモートワーク関連の提案時に次の3点を必ずチェックしておくと安全です。

  • クラウド・ライセンスの更新サイクル(何年ごとに見直す前提か)

  • ユーザーの人員増減の可能性(アカウント数が大きく動くか)

  • リース会社がSaaSやクラウド名義をどこまで対象資産として認めるか

「物」だけでなく「保守・サービス」を巻き込んだスキーム設計

DX案件では、「ハード売って終わり」の発想だと確実に取りこぼします。ユーザーが欲しいのは、PCや複合機そのものではなく、止まらない業務プロセスと安定したIT環境です。

ここでカギになるのが、ベンダーリースに保守・サービス費用をどこまで巻き込むかという設計です。

組み方 含める費用 メリット 注意点
ハードのみリース 機器本体のみ 月額を抑えやすい サービス契約が切れやすく、保守未加入リスク
ハード+初期構築費 本体+キッティング・設定 導入時の赤字工数を平準化 構築内容が変わるとクレームになりやすい
ハード+保守+定期点検 本体+保守契約+オンサイト対応 長期の安定収益をファイナンスでロック サービス内容の定義を契約書レベルで明確にする必要

ここでよくある失敗が、「サービス内容を口頭説明のままリース契約に乗せてしまう」パターンです。後から「そこまでやってくれると思っていた」とクレームになり、解約金トラブルに直結します。

サービスを巻き込む場合は、次を最低限そろえておくとトラブルが激減します。

  • どこまでが無償対応で、どこからが有償かを書いたサービス仕様書

  • 1件あたりのオンサイト対応回数・時間の上限

  • リプレイス時に保守をどう引き継ぐか(新規契約か、条件変更か)

紙とFAX文化から抜け出せない現場で起きている“ボトルネック”

DX・サブスク時代と口では言っても、ベンダー側の社内手続きは紙とFAXだらけというギャップを抱えている販売会社は少なくありません。ここが放置されると、せっかくのベンダーリース提案が次のように目減りします。

  • リース申込書の再記入・再FAXで、ユーザーのテンションが下がる

  • 社内与信チェックとリース会社審査が二重化し、契約まで数週間ロス

  • 電子契約に対応していないリース会社を優先してしまい、料率・条件で損をする

営業マネージャーがまずやるべきは、「どのリース会社がDXに対応しているか」を棚卸しすることです。

リース会社選定軸 DX対応が進んでいる会社 旧来型のままの会社
電子契約 対応済みでポータル発行 紙・押印・郵送必須
Web申込・与信 ベンダーポータルで即時申請 FAX・メールでPDF送付
データ連携サポート 販売会社の基幹システムと連携支援 CSV手入力前提

DX商材を扱う販売会社こそ、自社のファイナンス実務もDXすることが成約率アップの近道です。紙とFAX文化を残したままサブスクやリモートワークを語ると、ユーザーの経営者は敏感に矛盾を感じます。

ベンダーリースは、単なる資金調達の手段から、自社サービスとユーザーのキャッシュフローをデザインするファイナンスツールに変わりました。この視点を持てるかどうかが、DX時代に「損する営業」と「得する営業」を分けていきます。

これだけは外せない:ベンダーが自衛のために作るべきチェックリストとルール

「書いていないこと」が、後から必ずあなたの首を絞めます。ここからは、ベンダーリースを扱う販売会社が自衛のために持っておくべき「最低限の安全装置」を固めていきます。

契約前に必ず確認しておくべき7つのポイント

営業会議で揉める案件の大半は、実はこの7項目のどれかを確認していません。

  1. 誰が最終決裁者か(経営者/本部長/経理責任者)
  2. ユーザーの決算月と導入予定月のズレ
  3. 会計処理方針(オンバランス前提か、オフバランス志向か)
  4. 将来の増設・入替の可能性とタイミング
  5. 既存リース・割賦・サブスク契約の残期間と解約条件
  6. 「月々いくらまでなら安全か」という資金繰りの限度額
  7. リース会社の選定理由(与信の通りやすさだけで選んでいないか)

この7つを商談チェックシートにし、案件レビューで必須項目にしておくと、「審査は通ったのに稟議でひっくり返る」パターンが目に見えて減ります。

社内でベンダーリースを扱うときの「NGワード集」とその理由

リースそのものより、「言い方」でトラブル化するケースが増えています。特に避けたい表現を整理します。

NGワードと理由の整理

NGワード例 問題になる理由
「全部経費で落ちます」 会計基準や税務の取り扱いを営業が断定するのは危険。監査人からの指摘リスク。
「借入枠は関係ありません」 与信は実質的に金融債務。銀行との取引方針によっては誤解を招く。
「リースならノーリスクです」 解約金・中途解約不可を軽視した発言。後のクレーム火種になる。
「どこのリース会社でも同じです」 料率・残価・サポート体制が会社ごとに異なる現実を無視している。
「とにかく通りやすい会社で出します」 総支払額が膨らみやすい会社を示唆している印象になり、破談要因になる。

社内ルールとして、これらに近い表現をしたら「指導対象」と決めておくと、若手の暴走をかなり防げます。

トラブルを防ぐための記録・議事メモ・見積書の残し方

ベンダー・ユーザー・リース会社が絡むファイナンススキームは、証跡が甘いほど揉めます。ポイントは「誰が」「何を」「どこまで理解しているか」を紙に残すことです。

最低限、残しておきたい記録のセット

  • 商談メモ

    → 決算月、決裁者名、資金繰りの懸念点、既存契約の有無を必ず記載。

  • 見積書のバージョン管理

    → リース期間・料率・残価前提を変えた場合は、版数と変更理由を明記。

  • 稟議向け説明資料(簡易版)

    → 「現金購入」「銀行借入」「ベンダーリース」を月額と総支払額で並べた表を1枚つける。

比較表に入れておきたい項目例

方式 初期支出 月々の支払 総支払額の目安 解約のしやすさ
現金購入 高い 0 機器価格そのもの 売却・廃棄コストは別途
銀行借入 利息分だけ上乗せ 金融機関と要相談
ベンダーリース 料率と期間で変動 原則中途解約不可

この1枚があるだけで、経理や顧問税理士との電話が「説明」ではなく「相談」に変わります。結果として、あなたの案件が止まりにくくなり、後々の「聞いていない」「そんなつもりではなかった」をほぼ封じ込められます。

今日から変えられる一手:自社に合うベンダーリース活用戦略を組み立てる

「リースを“とりあえず付ける”側から、“戦略として仕込む”側に回る」と、成約率と回収リスクの景色がガラッと変わります。

自社の商品ラインナップとベンダーリースの“相性”を見極める

まず押さえたいのは、「何でもリース」ではなく「リース向き商材を選び切る」ことです。事務機器やIT機器の販売会社で、ここを外すと失注かクレームのどちらかに寄っていきます。

相性は、感覚ではなくキャッシュフローと耐用年数で判定します。

商材とベンダーリースの相性チェック

観点 リース向き リースと相性が悪いケース
単価 50万~数百万円クラス 10万未満の細かい備品のバラ売り
使用期間 3~7年が読める設備・IT機器 1年以内に仕様変更が頻発するサービス
価値の減り方 会計上の減価償却と近いスピードで価値が落ちる 半年で陳腐化するガジェット類
付帯サービス 保守・サポートをセットしやすい 「物だけ売って終わり」の単発商材

特にIT機器・コピー機・ネットワーク機器は、「保守・サービスを月額化したいが、ユーザーは一括投資を嫌う」というギャップをベンダーリースで埋めやすく、リース会社のファイナンスをうまく使うと、ベンダー側のサービス収益も安定します。

逆に、耐用年数が読めないクラウドサービスを長期リースに縛ると、「途中解約金トラブル」になりやすく、悪質販売扱いされがちです。ここを見誤ると、ペルソナ1の営業マネージャーはクレーム処理に追われ、ペルソナ3のDX推進担当は社内稟議で止められる、というパターンにはまりやすいでしょう。

リース会社を増やす/絞る判断基準のリアル

「SMFL含め5社と付き合っているが、現場はヘトヘト」という販売会社は珍しくありません。与信比較と料率競争をやり過ぎると、営業の時間が“見積り作業”に食われていきます。

増やすか絞るかは、感情ではなくスコアで決めるとぶれません。

リース会社選定チェックポイント

  • 与信レンジ

    中小企業・創業間もない会社でもどこまで取り組んでくれるか

  • スピード

    見積もり・審査・契約手続きにかかる平均日数

  • 柔軟性

    保守サービス込みのスキームやサブスク風の組み方に対応できるか

  • 営業サポート

    稟議用資料や説明ツールを一緒に作ってくれるか

  • トラブル対応

    更新時期のズレや解約時の交渉で、ベンダー側をどこまで守ってくれるか

目安としては、「メイン2社+ニッチ1社」程度に意図して絞ると、ペルソナ1のマネージャーは管理がしやすく、ペルソナ2の中小企業オーナーには分かりやすい選択肢だけを提示できます。逆に、5社以上に広げる場合は「この会社は与信弱め専用」といった役割分担を社内で明文化しておかないと、現場がレートだけ見て迷走します。

半年後の成約率と回収リスクを変える「小さな運用ルール」の決め方

ベンダーリース戦略は、派手なスキームよりも地味な運用ルールで差がつきます。与信は通るのに社内稟議で止まる、決算期とリース開始月がズレて資金繰りが苦しくなる、といった事故は、ここでほぼ防げます。

最低限、次の3ルールを「明日からの現場マニュアル」に落とし込んでください。

現場で効くミニ運用ルール

  1. 初回ヒアリングで
    「決算月」「直近の大きな投資予定」「監査人のリース方針」を必ずメモする

  2. 提案書テンプレに
    「総支払額」「月額」「会計処理の概要」「途中解約時の考え方」を1ページで整理する

  3. 与信ギリギリ案件は
    ベンダー・リース会社・営業マネージャーで事前に電話かオンラインで3者すり合わせを行う

この程度のルールでも、半年後には「審査は通ったのに総支払額で破談」「更新時期のズレで資金繰り悪化」といった典型的な失敗パターンが目に見えて減ります。ベンダーとしては、ファイナンスを“売り方の武器”として扱いながら、自社ビジネスの信用リスクもコントロールできる状態に近づいていきます。

執筆者紹介

主要領域はベンダーリース営業と与信実務に関する一般論の整理・解説です。公開情報と業界で一般的に語られる典型パターンをもとに、「どこで案件が止まり、どこを直せば通るのか」を営業実務レベルまで分解し、現場でそのまま使えるトーク例・文面例・チェックリストとして再構成することに特化して執筆しています。