住宅ローンの本審査を「1社だけ」に絞るか、「複数」に出すか。ここを誤ると、何千万円もの借入条件だけでなく、そもそも契約が流れるリスクまで抱え込みます。しかも厄介なのは、多くの人が「本審査に出す前」ではなく、「出した後の何気ない行動」で信用情報を傷つけ、融資減額やキャンセルを招いていることです。
よくあるのは、次のような状態です。
- 不動産会社からは「うちの提携ローン一択で」と言われている
- ネットやランキング記事では「複数申込で金利比較を」と書かれている
- 自分の年収・返済額・過去のカード利用が、金融機関からどう見られるのか分からない
この結果、「複数申込はブラック扱いになるのでは」「2社同時申込はマナー違反か」「本審査通過後に車や家具をローン購入しても大丈夫か」といった、誰にも聞きづらい不安だけが残ります。一般的な解説はここを曖昧にしたまま、「社数はほどほどに」「事前審査を通せば安心」といった抽象論で終わりがちです。
本当に守るべきなのは、「何社出したか」よりも、どの順番で、どの内容で、どのタイミングで動くかです。審査担当は、短期間の申込集中や申告内容のブレ、他社否決後の申込、そして本審査通過後の新規ローンや分割払いを厳しく見ています。ここを外すと、同じ年収・同じ借入金額でも、条件も通過率も大きく変わります。
この記事では、住宅ローン本審査を複数出す場合のメリット・デメリットを、机上の空論ではなく審査現場の目線で分解します。事前審査との違い、信用情報機関にどう記録されるか、不動産会社との交渉フレーズ、A銀行・B銀行に出す具体的スケジュール、そして「この行動さえしなければ通っていたのに」を防ぐチェックリストまで、意思決定に直結する情報だけを詰め込みました。
読む前と読んだ後で変わるのは、「なんとなく不安だから1社に従う」状態から、2〜3社に的確に絞り込み、返済額と安心感を最大化する判断軸を自分で持てる状態へのシフトです。数千万円規模のローン条件と、自宅購入の成立そのものを左右するテーマですから、「知らないまま1社に決める」のは、静かに資産を削る行為に近いと言えます。
この記事全体で得られる実利を、先に整理しておきます。
| セクション | 読者が手にする具体的な武器(実利) | 解決される本質的な課題 |
|---|---|---|
| 構成の前半 | 本審査と事前審査の違い、複数申込の適正社数、信用情報の見られ方を前提から整理し、「自分は何社・どの銀行に出すべきか」を判断できる軸 | 「複数本審査は危険か安全か」が感覚頼みで、年収・返済額・過去の借入を踏まえた現実的な検討ができていない状態 |
| 構成の後半 | 具体的な申込スケジュール、不動産会社への伝え方、属性別シナリオ、NG行動チェックリストを通じて、「いつ・誰に・どう動くか」の実務プラン | 本審査通過後の行動ミスや不動産会社との力関係で損をし、通過していたはずの融資や有利な条件を自ら潰してしまう状態 |
ここから先は、「住宅ローン本審査を複数出しても信用情報的に問題ないライン」と「やった瞬間にマイナス評価になる行動」を、具体例ベースで切り分けていきます。
- 住宅ローン本審査を「複数」出す前に──まず押さえるべき3つの不安と勘違い
- 本審査と事前審査の違いを徹底解説:どこからが「勝負どころ」なのか
- 「複数本審査」はアリか?ナシか?──データと現場目線で白黒つける
- 複数申込が「ブラック扱い」になるって本当?信用情報の裏側をプロ流にかみ砕く
- 本審査を複数出すときのスケジュール設計術:売買契約・融資実行まで逆算する
- 業界で実際に起きた“もったいない審査トラブル”と、その防ぎ方
- 不動産会社とどう話す?「うちの提携ローンだけで」と言われたときのスマートな交渉術
- 年収別・属性別複数本審査の“攻め方・守り方”シナリオ集
- 「この行動をしなければ通っていたのに…」を避けるための最終チェックリスト
- 執筆者紹介
住宅ローン本審査を「複数」出す前に──まず押さえるべき3つの不安と勘違い
「この1回で人生が決まる気がして、指が震える」
本審査の申込ボタンを前に、現場でよく聞く声だ。特に30代の共働き夫婦や、年収400〜600万円台で返済額にシビアな家庭ほど、この不安は強くなる。
本審査を複数出すかどうか悩む人の頭の中には、概ね次の3つが同時発生している。
-
返済が家計を圧迫しないか
-
審査に落ちて「ブラック扱い」されないか
-
不動産会社や銀行に「嫌な客」と思われないか
ここを整理しないままネット検索を繰り返すと、かえって判断がブレやすくなる。
本審査にビビる人が抱えているリアルな悩みリスト(年収・返済額・ブラック化の恐怖)
年収400〜600万円帯・初めての住宅購入層の相談を整理すると、不安はかなり具体的だ。
-
「月々いくらまでなら老後貯金を削らずに返済できるのか分からない」
-
「クレジットカードの分割払いやカードローンが多くて、信用情報が怖い」
-
「過去の延滞1回で全部アウトにならないか」
-
「1社しか通らなかったら足元を見られて高い金利でも飲むしかない?」
これらは感情の不安と事実の問題がごちゃ混ぜになりやすい。まずは次の3軸で切り分けると、頭がクリアになる。
| 不安の種類 | 中身 | 本質的なチェックポイント |
|---|---|---|
| 家計の不安 | 返済額・教育費・老後資金 | 返済負担率と手取りベースのシミュレーション |
| 審査の不安 | 信用情報・他社否決・複数申込 | 過去の延滞・現在の借入・申込のタイミング |
| 人間関係の不安 | 不動産会社・銀行の機嫌 | スケジュールと役割分担の理解 |
「ブラック化」への恐怖から複数申込を避ける人もいるが、実務上は申し込み社数そのものより、“申込内容の整合性”と“他の動き”の方がよほど重要になる。
「1社だけは危険?」「複数はNG?」ネット記事が読者を迷わせる理由
検索すると、真逆の主張が並んでいる。
-
「1社だけは危険、必ず複数比較を」
-
「複数申し込みは信用情報に傷、1社に絞るべき」
読者が迷子になる理由は3つある。
-
誰の立場の話かが混ざっている
- 申込者目線(返済額を1円でも下げたい)
- 不動産会社目線(スケジュールを死守したい)
- 金融機関目線(リスクに見合う金利で貸したい)
これがごちゃ混ぜのまま「メリット・デメリット」だけ並ぶので、判断軸がぼやける。
-
信用情報の仕組みがざっくり説明で終わっている
「6カ月は履歴が残る」とだけ書かれ、- 申込情報
- 実際の借入
- 延滞情報
がどう見られているかの解説が不足している。
-
本審査後〜融資実行までの“落とし穴”に触れていない
現場では、本審査通過後に自動車ローンやカードの増額申請をして減額・キャンセルになるケースが少なくないが、ここまで踏み込んだ記事は多くない。
不動産会社・銀行・申込者、それぞれの“本音”がズレる構造を解説
同じ「住宅ローン本審査」でも、プレイヤーごとに見ている景色が違う。
| 立場 | 表向きの説明 | 本音に近い優先順位 |
|---|---|---|
| 申込者 | できるだけ有利な金利で通したい | 返済負担を抑えつつ、落ちたくない |
| 不動産会社 | 提携ローンはお得です | 期限までに融資承認を取り、契約を流さない |
| 銀行・金融機関 | お客さまに最適な商品を | 返済能力と信用情報を見て“安定して返ってくるか” |
誤解しがちなのはここだ。
-
不動産会社が複数行申込を嫌がる主因は、「スケジュールと責任の所在があいまいになること」
-
一方で、銀行側は複数比較されること自体には慣れている
つまり「複数本審査」は、
申込者の家計防衛には有効だが、不動産会社の進行管理には手間が増える動きになる。
この“温度差”を理解したうえで、
-
どこまで比較するか(2〜3社か、それ以上か)
-
誰にどこまで正直に伝えるか
を設計していくと、余計な摩擦を避けつつ、条件と安心感を両立しやすくなる。
本審査と事前審査の違いを徹底解説:どこからが「勝負どころ」なのか
「事前は通ったから、もう家は買えたも同然」
ここで油断した人から、審査トラブルに巻き込まれていきます。
事前審査は“仮の名刺交換”、本審査は“契約目前”レベルのチェックになる
事前審査と本審査は、名前が似ていても「別モノ」です。イメージはこのくらい違います。
| 項目 | 事前審査(仮の名刺交換) | 本審査(契約目前チェック) |
|---|---|---|
| 目的 | 貸せそうかザックリ判定 | 実際に融資するか最終決定 |
| チェックの深さ | 属性中心(年収・勤務先など) | 信用情報・書類を細部まで照合 |
| 必要書類 | 少なめ・自己申告多め | 源泉徴収票・課税証明・健康保険証など実物 |
| 変更に対する厳しさ | 多少のブレは許容されることも | 事前と違うと即「再検討」や減額 |
| 影響 | 否決でも他行で挽回しやすい | 否決・減額はスケジュールに直撃 |
「仮の名刺交換」の段階では、銀行側も“本気の身元調査”までは踏み込まないケースが多い一方、本審査は融資契約・抵当権設定・団体信用生命保険まで一気通貫で見られます。ここからが、まさに勝負どころです。
審査基準と信用情報の見られ方:年収・借入・カード利用はここまでチェックされる
本審査では、申込者の「数字の整合性」が一気に炙り出されます。見られているポイントはおおよそ次の通りです。
-
年収・勤務先・勤続年数
源泉徴収票や課税証明と申込書の数字が1円単位で照合される。転職直後は「見込み年収」を高めに書くと即バレる。
-
既存の借入・カード利用
マイカーローン、カードローン、リボ残高、携帯端末の分割払いまで、信用情報機関から一括で確認される。本人が「借入のつもりではない」家具・家電の分割も、審査側では立派なローン扱い。
-
申込情報の集中具合
短期間に複数の金融機関へ申込があると、「資金繰りに困って一気に駆け込んでいるのか?」という“ブラック懸念”で詳細チェックの対象になる。
-
クレジットや携帯の延滞履歴
1〜2日のうっかり延滞はまだしも、61日以上や3ヶ月連続の延滞は、数年単位でマイナス情報として残る。
ここで重要なのは、審査担当は「年収の多さ」だけでなく、借入の総額・返済額のバランス(返済負担率)と、申込内容の一貫性を見ている点です。
「事前は通ったのに本審査で落ちた」典型パターンを分解する
現場でよく見る“悲しいパターン”は、ほぼ次のどれかに当てはまります。
-
本審査前後で新たなローンを組んだケース
- 事前審査OK → 本審査待ちの間に自動車ローンを契約
- 本審査で信用情報を再チェック → 返済負担率オーバー → 減額や否決
「クルマくらい大丈夫」と思った行動が、住宅ローンを直撃する典型例。
-
申込内容の“微妙なブレ”が積み重なったケース
- 事前審査:年収500万円と自己申告
- 本審査:源泉徴収票は年収470万円、クレジット明細から副業収入が不透明
- 借入額はギリギリライン → 銀行側が慎重になり、減額や追加書類要請が連発
審査担当が嫌うのは「嘘」そのものより、説明できないブレと隠しごと。
-
カード・分割払いを借入と認識していなかったケース
- 家具・家電を60回払いで購入した直後に本審査
- 本人は申込書の「他の借入」に書かず
- 信用情報で発覚 → 「申告漏れ+返済額増」で評価ダウン
-
転職直後+高めの希望額で攻めすぎたケース
- 勤続数ヶ月で高めの借入希望額
- 複数行に申込んでも、信用情報と属性の組み合わせで一斉NGになりやすいパターン
事前審査はあくまで「この条件なら、たぶん大丈夫そう」という一次判定。
複数本審査を出すかどうか考える前に、本審査で見られる“生活の実態”と、“動かしてはいけないお金の行動”を掴んでおくと、落とし穴をかなり避けられます。
「複数本審査」はアリか?ナシか?──データと現場目線で白黒つける
「1社で外したら人生設計が一気に狂う」「でも、複数出してブラック扱いされたら怖い」──本審査で迷子になる人がいちばん知りたいのは、ここです。
結論の方向性だけ先に押さえておくと、“出し方を間違えなければ”複数申込はむしろ家計防衛策です。ただし、社数とタイミングを外すと一気にリスクに変わります。
実際に何社出している?アンケートデータから見る“普通の目安”
住宅ローン利用者の調査を見ると、2社以上に審査を出した人がほぼ半数というデータがあります。さらに、申込社数が多い人ほど「金利・条件への満足度」が高い傾向が出ています。
体感値もほぼ同じで、現場では次のような分布が典型です。
| 申込社数 | ボリュームゾーン | よくある背景 |
|---|---|---|
| 1社 | 3~4割 | 不動産会社の提携ローンをそのまま、時間に余裕がない |
| 2~3社 | 4~5割 | 金利や団信、変動金利・固定プランを比較したい |
| 4社以上 | 1~2割 | 転職直後、年収に対して借入金額が高め、信用情報に不安 |
「複数=特殊」とはまったく言えない状態になっているのが、足元の市場です。
2〜3社に絞るのが現実解と言われる理由(比較とスケジュールのバランス)
本審査を出す相手を2〜3社に抑えるのは、「銀行の機嫌取り」ではなく自分の時間とリスク管理のバランスの問題です。
ポイントは3つあります。
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比較に必要な“最低限の母数”が2〜3社
- 金利だけでなく、団体信用生命保険(がん特約の有無など)、保証料、事務手数料、繰上返済ルールまで見比べるには、1社では足りないが、3社あれば傾向がつかめる
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売買契約~融資実行までのスケジュールに載せやすい社数
- 物件の契約から融資実行まで、標準で1.5~2カ月。書類準備とやりとりを踏まえると、2〜3社が「無理なく全部追える上限」に近い
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不動産会社との調整コストを抑えられる
- 進捗確認、契約日の調整、キャンセル連絡…これらの事務負担を考えると、現場目線では「3社を超えると一気に事故率が上がる」
整理すると、満足度を上げるための比較効果と、手間・遅延リスクのバランスが交わるポイントが“2〜3社”というイメージです。
5社以上に出すと何が起こるか:信用情報と事務負担のリアルな影響
「転職直後だし、とりあえず片っ端から5社出せばどこか通るのでは?」
この発想が、審査現場から見るといちばん危なっかしいパターンです。
信用情報機関には、一定期間「申込情報」が残ります。短期間に住宅ローンの申込が5件、6件と並んでいると、審査担当はまずここを疑います。
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「年収や返済能力に対して借入希望額が高すぎて、どこかで否決されたのでは?」
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「他行の否決理由を隠して申込内容を“盛っていないか”」
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「他のローン(カードローン・リボ・自動車ローン)に問題があり、通らない前提で数を打っているのでは?」
嫌がられるのは“社数そのもの”ではなく、「否決直後に次々と申し込む動き方」と「申込内容のブレ」です。
さらに、5社以上に本審査を出すと、こんな現実的な負担も襲ってきます。
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収入証明・源泉徴収票・健康保険証・身分証・物件資料など、同じ書類セットを5回コピーして5回提出
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条件提示後、どの銀行をキャンセルするかを決める交渉と連絡に追われる
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不動産会社との間で、「どの金融機関の承認を前提にスケジュールを組むのか」があいまいになり、決済日ギリギリで再調整が発生
結果的に、
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審査側からは「属性の割に動きが不自然な人」
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現場側からは「スケジュールが読みづらい申込者」
として見られ、本来は通るはずのローンまで“様子見”に回されるリスクが出てきます。
住宅購入は「一発勝負のギャンブル」ではなく、2〜3社を狙って出し、無駄なブレを徹底的に削る“戦略ゲーム”と捉えた方が、結果的に返済額も安心感も最適化しやすくなります。
複数申込が「ブラック扱い」になるって本当?信用情報の裏側をプロ流にかみ砕く
「本審査を2〜3社に出したら、一気にブラック扱いされるんじゃ…」
ここでストップしている人が多いですが、審査現場の感覚はかなり違います。怖がるポイントが少しズレていることが多いので、「どこまで信用情報に残るか」「本当に嫌がられる行動は何か」を一度整理しておきましょう。
信用情報機関に残るのはここまで:申込情報・借入・延滞のタイムライン
住宅ローンの本審査で使われる信用情報は、いわば「あなたの借入履歴のカルテ」です。ただし、何でもかんでも一生残るわけではありません。
| 種類 | 具体例 | 情報が残る期間の目安 | 審査への見られ方 |
|---|---|---|---|
| 申込情報 | 住宅ローン申込、カード申込 | 約6カ月 | 短期間の集中は要チェック |
| 借入情報 | 住宅ローン、車ローン、カードローン | 完済後も5年程度 | 返済負担率を計算される |
| 返済状況 | 延滞、代位弁済 | 発生日から5年程度 | 審査上かなり重く評価 |
「複数申込」が直接ブラックになるのではなく、短期間に申込がぎゅっと固まる+属性に比べて借入希望が高すぎる+他社否決直後といった“セット”で見られると、慎重にチェックされやすくなります。
審査担当が嫌がるのは“社数”より「申込の仕方」と「内容のブレ」
現場の担当者が本当に困るのは、「3社申込していること」そのものより、次のようなパターンです。
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A銀行とB銀行で勤続年数や年収が微妙に違う
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他社否決の理由を隠したまま別の銀行に申込む
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既存のカードローンやリボを「借入なし」と申告する
ポイントは、申込内容の整合性が取れているかどうか。
同じ人なのに、銀行ごとに申告内容が違うと「隠し事があるのかも」と疑われます。逆に言えば、2〜3社に並行申込していても
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年収・勤務先・借入状況の申告を全社でそろえる
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他社の状況を聞かれたら「事前は通過/本審査待ちです」と素直に答える
この2点が押さえられていれば、「比較検討している真面目な申込者」として扱われるケースがほとんどです。
カードローン・キャッシング・リボ払い──見落としがちなNG借入のチェックポイント
住宅ローンの本審査で落とし穴になりやすいのが、「本人が借入と認識していない負債」です。現場でよく問題になるのは次の3つです。
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カードローン・フリーローン
少額でも、返済負担率の計算にフルで含まれます。完済できるものは、本審査前にゼロにしておくのが鉄則。
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クレジットカードのリボ払い・分割払い
家具・家電・スマホ代の分割も「借入」として信用情報に表示されます。本人が申告し忘れ、本審査で露見して減額になるケースが多いところです。
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キャッシング枠の「使っていないけど枠だけ100万円」状態
実際の運用ルールは金融機関によりますが、審査担当は「いつでも借りられる潜在的な借入」としてチェックします。必要のない高額枠は、住宅ローン申込前に減額・解約しておくのが安全です。
複数本審査を出す前に、まずは自分の借入の棚卸しをしておくことが、ブラック扱いを避ける一番の近道です。
「何社に出すか」より先に、「どんな状態の信用情報で出すか」を整えるイメージを持っておきましょう。
本審査を複数出すときのスケジュール設計術:売買契約・融資実行まで逆算する
「どの銀行が通るか」ではなく、「いつまでにどこを通せば安全か」で勝負が決まります。複数本審査は、スケジュール管理をミスった瞬間に一気に“事故物件化”します。
売買契約〜融資実行までの標準スケジュールをざっくり図解
目安は「売買契約日から融資実行日まで1〜1.5カ月」。そこに本審査期間(1〜3週間)をどうはめ込むかが肝です。
| 段階 | 時期の目安 | やること・審査の動き |
|---|---|---|
| 物件申込 | 0日目 | 申込金支払い、事前審査申込 |
| 売買契約 | 7〜14日目 | 少なくとも1行は事前審査承認済みで締結 |
| 本審査申込 | 10〜20日目 | 2〜3行に本審査申込(書類一気に出す) |
| 本審査承認 | 20〜35日目 | どの金融機関で借りるか最終判断 |
| 金銭消費貸借契約 | 25〜40日目 | 団信・住宅ローン契約締結 |
| 融資実行・決済 | 30〜45日目 | 残代金支払・鍵渡し |
年収400〜600万円帯の共働き世帯だと、返済額と家計のバランス調整で本審査を出し直したくなるケースが多いので、「契約から決済まで45日あるか」は最初に確認しておくと安全です。
A銀行・B銀行に同時申込する場合の“ずらし方”とキャンセルのマナー
複数申込で一番まずいのは、「どれにもはっきりNOと言わず、全社をギリギリまで引っ張る」パターンです。信用情報より先に、スケジュール崩壊と不動産会社との関係悪化が起きます。
複数本審査の組み方のコツはこの3点です。
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同日申込でもOKだが、優先順位は決めておく
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第1候補の結果が出たら、48時間以内に他行へ連絡
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キャンセル理由は「条件」と「スケジュール」に限定して伝える
現場でトラブルが少ないパターンは、次のような“1.5段構え”です。
| 行 | 申込タイミング | ねらい |
|---|---|---|
| A銀行(第1候補) | 売買契約直後に本審査申込 | 金利・団信・保証料など条件重視 |
| B銀行(第2候補) | Aの本審査申込から3〜5日以内に申込 | Aが否決/減額時の保険・比較材料 |
Aが希望条件で通過したら、Bには「今回はA銀行の条件がよく、そちらで契約することにしました。審査いただいたのに申し訳ありません」と早めにキャンセル連絡。
キャンセル自体は日常茶飯事で、金融機関も慣れています。嫌がられるのは「承認後、契約日時まで押さえてからのドタキャン」です。
「本審査通過後にやってしまいがちな行動」リスト(自動車ローン・カード増額など)
本審査を通過してから融資実行までの数週間は、「静かに過ごすのが最強」です。ところが、ここで動いてしまう人がかなり多く、現場では融資減額やキャンセルの引き金になっています。
本審査後〜融資実行前のNG行動の代表例は次の通りです。
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自動車ローンを新規で組む
返済負担率が一気に跳ね上がり、再審査で減額・最悪NGに。
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家具・家電を分割払いで大量購入
「ショッピングだから借入じゃない」と思いがちだが、信用情報では立派なローン。
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クレジットカードのキャッシング枠を増額する
実際に借りていなくても、“いつでも借りられる枠”としてチェックされる。
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新しいクレジットカードを多重申込する
申込情報が短期間に集中し、“資金繰り悪化か”と疑われやすい。
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転職や勤務形態の変更(正社員→契約社員等)
収入の安定性が崩れ、条件変更や見送りの対象に。
本審査通過後から融資実行までは、家計の動きは可能な限り「現状維持」。車・家具・家電は、鍵渡し後に現金+最小限の分割で検討するくらいが、長い目で見ると一番コスパが良い動き方になります。
業界で実際に起きた“もったいない審査トラブル”と、その防ぎ方
「本審査は通ったのに、あと一歩で融資ストップ」
現場では、こんな“逆転負け”が毎年のように起きています。どれも防げるパターンばかりなので、同じ轍だけは踏まないようにしておきましょう。
本審査OK後にクルマを買って返済額オーバーになったケース
住宅ローンの承認通知を見て安心した瞬間、ディーラーでマイカーローンを組んでしまうケースは想像以上に多いです。金融機関は融資実行の直前まで信用情報を再チェックするため、新しい借入が乗った時点で「返済負担率オーバー」と判断され、条件変更や減額、最悪キャンセルになることがあります。
本審査OK〜融資実行までのNG行動を整理すると、イメージしやすくなります。
| タイミング | やりがちな行動 | 審査への影響 |
|---|---|---|
| 本審査通過直後 | マイカーローン契約 | 返済負担率の悪化で再審査・減額 |
| 金銭消費貸借契約前 | クレジットカード新規・増枠 | 「借入が増える予備軍」としてマイナス評価 |
| 融資実行直前 | ボーナス払いローンの多用 | 返済余力を疑われるリスク |
防ぎ方はシンプルで、本審査から融資実行までは「新規ローンは一切増やさない」と決めておくことです。車がどうしても必要なら、住宅ローン実行後に、家計全体を再設計してから検討する方が安全です。
家具・家電の分割払いが原因で希望借入額を減額されたケース
「分割払いは現金払いと同じ感覚」という人もいますが、審査側では立派な借入としてカウントされます。とくに新生活に向けて、冷蔵庫・洗濯機・大型テレビを一気にショッピングローンで組むと、返済額が積み上がり、希望金額で承認できない事態が起きます。
見落としやすい“隠れ借入”の代表例をチェックしておきましょう。
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家具・家電のショッピングローン
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スマホ本体代の分割払い
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通信販売の長期分割
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リボ払い残高
これらはすべて信用情報機関に記録され、住宅ローン審査では他のローンと同列に扱われます。防止策としては、審査前に「借入の棚卸し」をして、可能な分は一括返済や分割回数の短縮を行うことが重要です。
転職直後+高めの希望額で、複数申込でも一斉NGになったケース
「複数の銀行に出せばどこかは通るはず」と考え、転職して数カ月の状態で高額の住宅ローンを申し込むケースもあります。しかし、金融機関は勤務年数・年収・借入希望額のバランスをかなりシビアに見ています。属性に対して明らかにオーバーな金額だと、2〜3行どころか、5社に出しても横並びで否決になることがあります。
とくにチェックされるポイントは次の通りです。
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転職後1年未満で年収証明が不安定
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前職より年収ダウンしているのに希望金額が高い
-
短期間に申込情報が複数の金融機関へ集中している
複数申込は「保険」にはなっても、属性バランスの悪さをねじ伏せる魔法にはなりません。転職直後で不安がある場合は、申込前に年収シミュレーションを行い、無理のない金額に絞るか、少なくとも1年分の収入実績が出てから検討する方が、通過確率と将来の返済の両方の意味で合理的です。
不動産会社とどう話す?「うちの提携ローンだけで」と言われたときのスマートな交渉術
「提携ローン一択でお願いします」と言われた瞬間に、空気がピタッと固まる人は多い。ここをうまくさばけるかどうかで、返済総額も安心感も数百万円レベルで差がつくゾーンになる。
なぜ不動産会社は提携ローン推しになるのか──スケジュールと責任の関係
不動産会社が提携ローンを勧める理由を、「マージン欲しさ」とだけ見ると交渉がこじれる。現場で大きいのは次の2点だと理解しておくと話がかみ合いやすい。
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スケジュール管理がしやすい
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誰がどこまで責任を持つかがはっきりする
提携ローンだと、不動産会社と金融機関の担当者が日常的に連絡を取り合っており、「この人はこの条件なら通る」「この属性は時間がかかる」といった“肌感覚”を共有している。逆にネット銀行や他行に分散されると、以下のリスクを不動産会社は恐れる。
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本審査通過のタイミングが読めず、売買契約の融資特約期日に間に合わない
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どの銀行でトラブルが起きたのか、売主に説明しづらい
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否決や減額の理由を買主が十分に把握しておらず、情報が錯綜する
この「スケジュールと責任」を理解したうえで、複数行検討の話を切り出すと、不動産会社の警戒心はかなり下がる。
「複数行で検討したい」と伝えるときのフレーズ例(LINE/メールの再現付き)
角が立つのは避けたいが、言うべきことはきちんと言いたい場面。実際のやり取りイメージを整理しておく。
まず押さえたいポイントは3つ。
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不動産会社の提携ローンを「否定しない」
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スケジュールを守る意思を最初に示す
-
比較の目的を「家計防衛」として伝える
LINEの文面イメージはこうなる。
「○○様
提携ローンをご紹介いただきありがとうございます。
スケジュールを遅らせないことを最優先にした上で、家計の負担をしっかり確認したく、提携ローン+ネット銀行で2〜3行だけ本審査を比較させていただきたいと考えています。
融資特約の期限までに、どの銀行にするか必ず決めますので、スケジュールの組み方も含めて一度ご相談させていただけますでしょうか。」
対面でのフレーズ例も用意しておく。
-
「提携ローンを軸に考えつつ、同じ時期に1〜2行だけ比較させてもらえますか」
-
「期限までにどの銀行にするか決める前提で、複数行の本審査を出したいです」
“提携ローンをベースに”という一言を入れると、担当者の表情が和らぎやすい。
提携ローン+ネット銀行を組み合わせて比較する現実的なプラン
現場で「現実的に回る」パターンは、提携ローンとネット銀行をうまく役割分担させる形だ。
| 役割 | 提携ローン | ネット銀行 |
|---|---|---|
| 強み | スケジュールの読みやすさ、事務手続きのサポート | 低金利、団信や保証の選択肢 |
| 不動産会社の安心度 | 高い | 低い |
| 買主のメリット | 期日遅延リスクが小さい | 返済額を抑えやすい |
| 使い方のイメージ | 「最低ラインを確保する保険」 | 「条件が良ければ本命」 |
よくある進め方は次の流れになる。
- 提携ローンで事前審査→本審査へ進めておく
- 並行して、ネット銀行1〜2行に本審査を申し込み
- 期限の数日前までに、「最終的にどの金融機関で契約するか」を不動産会社へ共有
- 採用しない銀行は、早めに丁寧にキャンセル連絡を入れる
このとき重要なのは、「複数申込をすること」よりも「情報を共有しないこと」の方が信頼を失うという視点だ。不動産会社は複数行での審査自体には慣れているが、申込状況を知らされないまま期限ギリギリで否決を知らされる展開を最も嫌う。
「いま何行に出していて、結果がいつ頃出るのか」を、2〜3日に1回程度のペースで簡単に報告しておくだけで、「きちんと管理しているお客様」という評価に変わりやすい。ここまでできれば、提携ローン推しの担当者とも、むしろ同じチームとして動きやすくなる。
年収別・属性別複数本審査の“攻め方・守り方”シナリオ集
「どこまで攻めていいのか」「どこから守りに入るべきか」は、年収や働き方、借入状況でまったく変わります。ここを読み違えると、“通せたはずのローンを自分で狭める”ことになりかねません。
まず全体像から。
| 属性 | 攻めるポイント | 守るポイント |
|---|---|---|
| 年収400〜600万会社員 | 金利・団信・手数料を2〜3社で比較 | 返済比率・教育費・老後資金のバランス |
| フリーランス・転職直後 | タイミングと証拠書類で“安定感”を演出 | 申込社数と時期を絞り、否決連鎖を避ける |
| カード利用多めの人 | 先に整理・減額してスコアを底上げ | 本審査前後の新規借入・リボ増額を完全ストップ |
年収400〜600万円台会社員:月々返済額と老後資金の両立をどう設計するか
このゾーンが、住宅ローン審査で一番“シビアに見られる層”です。理由はシンプルで、教育費・老後資金との綱引きが激しいからです。
ポイントは 「返済額優先」ではなく「残せるお金優先」 で複数本審査を組むこと。
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目安イメージ
- 返済額:手取りの25%前後まで
- ボーナス払い:できれば0〜少額
- 老後・教育の積立:毎月2〜4万円は死守
複数本審査を出すなら、次の“役割分担”がおすすめです。
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A銀行:提携ローン(手続き・スケジュール重視)
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B銀行:ネット銀行や低金利型(総返済額重視)
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C銀行:団信やがん保障が手厚い商品(保険とのトータルコスト重視)
落とし穴は「通った額=借りていい額」と思い込むこと。 審査通過後も、不動産会社ではなく自分の家計を“最終審査担当”に据える意識が重要です。
フリーランス/転職直後:申込タイミングと書類準備で差がつくポイント
この属性は、複数本審査の「攻め方」を間違えると、一気に“全滅コース”に入りやすい層です。審査側が気にしているのは、属性よりも 「収入の読みやすさ」と「説明の一貫性」。
押さえておきたい順番は次の通りです。
- まずは収入証明を固める
- フリーランス:直近3期の確定申告書・納税証明
- 転職直後:内定通知書・雇用契約書・前職の源泉徴収票
- 不動産会社とスケジュールを共有した上で出す銀行を絞る
- 「属性に比較的優しい金融機関 → ネット銀行系」の順に広げる
複数本審査を出す際、審査担当が警戒するのは社数というより 内容のブレ です。
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転職時期の申告が銀行ごとに違う
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事業所得の数字が銀行ごとに微妙にズレている
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他社否決の理由を隠したまま、すぐ別の銀行に申込む
このパターンは“ブラック懸念”として見られがちです。申込書と提出書類は、コピペできるレベルで条件を統一しておくと安全度が上がります。
カード利用が多い人向け:先に「借入の棚卸し」と「減額」をするという発想
「なんとなくカード払いやリボ払いが多い」人の住宅ローンは、複数本審査よりも先に“家計の大掃除”が必須です。現場では、次のようなトラブルが頻発しています。
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家具・家電の分割払いを「借入」と認識しておらず、本審査で露見して希望額減額
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本審査通過後にクレジットカードのキャッシング枠を増額して、再審査・条件変更
着手の順番はこうなります。
- 信用情報に載る借入を全部書き出す
- カードローン
- リボ払い・分割払い
- 自動車ローン
- 金額の小さいものから繰上げ返済し、本審査前に完済ステータスにしておく
- 新規カード作成・キャッシング枠増額を、本審査申込〜融資実行まで完全停止
複数本審査は、その後です。
「借入を整理した“クリーンな状態”で2〜3社に出す」方が、社数だけ増やすよりも通過率も条件も良くなりやすいのが、審査現場で見えているリアルな傾向です。
「この行動をしなければ通っていたのに…」を避けるための最終チェックリスト
「本審査は通ったのに、最後の最後で減額・キャンセル」――現場でいちばん悔やまれるのは、ほんの数週間の“気のゆるみ”です。ここだけ押さえれば、通過ラインから自分で落ちにいく悲劇はかなり防げます。
本審査前後のNG行為リスト(新規ローン・キャッシング・高額分割)
本審査の前後1〜2カ月は「新しい借金は一切しない」が鉄則です。特に危険なのは次の5つ。
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自動車ローン・マイカーローンを新規で組む
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家具・家電を60回払いなど高額分割にする
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クレジットカードのキャッシング枠を増額する・実際にキャッシングする
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リボ払いを多用し、毎月のカード支払額が急に増える
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新規クレジットカードを短期間に複数申込する
本審査通過後〜融資実行までに上記を行うと、「返済額が増えた=返済負担率オーバー」「信用情報の状態悪化」と見なされ、減額・再審査・最悪キャンセルの流れになりやすくなります。
申込時の書類・申告内容で“矛盾”を出さないための確認項目
審査担当が複数申込より嫌うのは「話がコロコロ変わる人」です。出す銀行が増えるほど、同じ内容でそろえる意識が重要になります。
申込前に、次の項目をメモで固めておきましょう。
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年収
- 源泉徴収票・課税証明書と同じ金額か
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他の借入
- 自動車ローン・カードローン・リボ・ショッピング分割も全て合計しているか
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家族構成・勤務先・勤務年数
- 事前審査と本審査で内容がブレていないか
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希望借入金額・返済期間
- 銀行ごとに都合よく数字をいじっていないか
とくに複数行へ本審査を出す場合、「A銀行には車のローンを書いたけど、B銀行には書いていない」といったズレは、“隠そうとしている人”のサインとして一気に警戒されます。
2〜3社にだけ出して、条件と安心感を最大化するための判断軸
本審査の複数申込は、闇雲に社数を増やすより「狙い撃ちの2〜3社」の方が、通過率も満足度も高くなりやすいです。選ぶときは、次の3軸をセットで見ます。
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金利タイプ
- 変動金利で攻める銀行
- 安心重視の固定・固定期間選択型の銀行
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事務手数料・保証料・団信(団体信用生命保険)の条件
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スケジュールの組みやすさ(審査スピード・不動産会社との相性)
比較のイメージは次のような表が役立ちます。
| 軸 | A銀行(提携ローン) | B銀行(ネット銀行) | C銀行(地銀・信金) |
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| 主な金利タイプ | 変動メイン | 変動+一部固定 | 固定・固定期間選択が豊富 |
| 事務手数料等 | やや高めだが手続き楽 | 安いが自分で手続き多め | 中程度 |
| 審査スピード | 速い(不動産会社と連携) | 標準〜やや遅め | 物件によって差が出やすい |
| 融資姿勢 | 属性次第で柔軟 | 数字にシビア | 自営業・地元企業にやや強い |
年収400〜600万円台・共働き夫婦なら、目安として「提携ローン1行+ネット銀行か地銀1〜2行」に本審査を出し、
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最安金利だけでなく「総返済額」と「通りやすさ」
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売買契約の日程に間に合うか
をセットで比べるのが、無理なく・損なく・安全に攻めるコツです。
執筆者紹介
住宅ローン審査・信用情報リスクを主要領域とする編集・執筆担当者です。本記事では、業界で共有されている審査実務の知見と公的データをもとに、「何社に・どの順番で出すか」「どの行動がNGか」を読者が自分で判断できるレベルまで分解することを重視しています。実務の現場感を保ちつつ、申込者側の家計目線に引き寄せて整理する記事づくりを心がけています。
