自社割賦のリスクを見抜き売上を守る実務ガイド【債権と法務を整理】

一括払いでは成約しない高額サービスを、分割で取りこぼさずに売りたい。自社割賦は、その欲望にもっともストレートに応えるスキームです。しかし「カード審査に通らない顧客も拾える」「手数料を抑えられる」という表側だけで導入すると、多くの中小企業が同じパターンでつまずきます。売上は増えたのに、未収・督促・クレーム対応に現場が疲弊し、気がつけばキャッシュと評判を同時に削っている。この構造を理解せずに自社割賦を続けること自体が、すでに大きな損失です。

本記事は「自社割賦 リスク」を、一般論ではなく割賦販売法・特定商取引法・債権管理・不正検知という実務の接点から分解します。何回払いから規制対象になるのか、どんな表示・書面交付の抜け漏れが違反や契約取消につながるのか。延滞率の数字だけでは見えない、督促業務や社員メンタル、SNS炎上といった“目に見えないコスト”まで含めて洗い出します。

同時に、自社割賦・クレジットカード・包括信用購入あっせん(信販)の3つを、「誰が債権を持ち、誰が回収し、誰が罰則を受けるのか」という軸で比較します。手数料のパーセンテージだけではなく、トラブル発生時にどこまで自社が前面に立たされるのかを可視化し、手元に残る現金とブランドを守るための決済設計を組み立てます。

さらに、3〜6か月目に延滞が膨らむ典型シナリオ、「お試しのつもりだった」「総額を知らなかった」という定番クレーム、少額分割を狙った不正・なりすましなど、現場で実際に起きているトラブルのパターンも整理。危ない申込の見抜き方、LINE・メールでの火種の消し方、証跡を残すログ・スクリーンショット管理、社内ルールブックと社員教育の要点まで、今日から変えられるレベルに落とし込みます。

自社割賦を「続けるか・やめるか」を判断する撤退ラインの考え方、自社で抱える領域と信販・決済代行・顧問弁護士に任せる領域の切り分け方も具体的に示します。導入済みの事業者も、これから検討する事業者も、この1本で「どこまでリスクを負い、どこから外部に移すか」の基準を持てる構成です。

この記事で得られる実利を、先に整理しておきます。

セクション 読者が手にする具体的な武器(実利) 解決される本質的な課題
構成の前半(自社割賦の構造、リーガルリスク、現場トラブル、与信・債権管理、スキーム比較) 自社割賦と信販・クレジットの違いを、割賦販売法・特商法・債権回収・不正対策まで含めて一枚で説明できる判断軸 「手数料が安いから有利」という思い込みから抜け出し、自社がどのリスクを負っているのか把握できていない状態
構成の後半(典型トラブルの分解、現場対応テンプレ、撤退ラインとルールブック設計) 危ない申込の見抜き方、クレーム火種の潰し方、撤退基準と社内ガイドライン案という、すぐに使える運用フレーム 延滞・クレーム・炎上が発生してもその場しのぎで対応し、組織として学習せずに同じ失敗を繰り返す状態

自社割賦の導入そのものは悪ではありません。問題は、「どのリスクをどの水準まで許容するか」を決めないまま走り出すことです。ここから先の本文では、決済スキームを売上と信用を同時に守る武器に変えるための条件を、順に解き明かしていきます。

  1. 自社割賦は本当に“おいしい”のか? 売上アップの裏側で起きていること
    1. 自社で割賦販売を始める企業が急増する3つの理由
    2. 「カードが通らないお客さまを救いたい」が危険信号になる場面
    3. 中小事業が見落としがちな「手数料より高くつくコスト」とは
  2. 割賦販売法・特定商法のどこで引っかかる? 自社割賦に潜むリーガルリスクを整理
    1. 何回払い・どんな販売条件から「割賦販売法」の適用範囲になるのか
    2. 表示義務・契約書面・交付義務でよくある“うっかり違反”パターン
    3. クーリングオフ・民事ルールで「契約自体がなかったこと」になる条件
  3. 現場で本当に起きているトラブルと、数字に出ない損失
    1. 延滞率だけでは見えない「督促業務」と「社員メンタル」の消耗
    2. SNS・クチコミサイトで一気に燃え上がる風評リスクのメカニズム
    3. 相談窓口に寄せられる「お試しのつもりだった」「総額を知らなかった」という定番クレーム
  4. 与信と債権管理のプロだけが知る、“危ない申込”の見抜き方
    1. 客層・収入・既存債務…最低限チェックすべき信用ポイント
    2. 「分割後払いOK」にした瞬間に変わる申込の質と、検知すべきサイン
    3. 少額だからと油断すると狙われる、自社割賦の不正・なりすまし
  5. 自社割賦・クレジット・信販あっせん…3つのスキームを“リスクの主体”で比較する
    1. 誰が債権を持ち、誰が回収し、誰が罰則を受けるのかを一枚の図で整理
    2. 手数料だけで比較すると失敗する「トラブル時のコスト構造」
    3. 決済インフラ・信販代行を使うことで消せるリスク・消せないリスク
  6. 「最初は順調だったのに」業界で繰り返される自社割賦トラブルのパターン集
    1. 3〜6か月目に延滞が膨らむ“典型シナリオ”と、その予兆サイン
    2. 人気商材×分割販売が、一転して「モンスタークレーム」を生む瞬間
    3. 事例から見える、“やってはいけなかった一手”を分解する
  7. 現場で交わされるLINE・メールのやり取りから学ぶ「火種の消し方」
    1. 「支払えなくなりました」から始まる現場対応のリアル再現
    2. 法律用語を使わずに販売条件・リスクを伝える文章術
    3. 証明を残すためのスクリーンショット・ログの取り方とセキュリティガイドライン
  8. 自社割賦を続けるか、やめるか? 経営者が押さえるべき判断ポイント
    1. いまの回収・トラブル件数から“撤退ライン”を逆算する
    2. 「自社でやる領域」と「外部サービス・顧問に任せる領域」の切り分け
    3. 明日から変えられる3つのルール:審査、表示、督促業務の再設計
  9. これから自社割賦に参入するなら、最初に決めておくべき“ルールブック”
    1. スタート前に作るべきガイドラインとチェックリスト
    2. 社員教育で共有しておくべきキーワードとNGトーク集
    3. 無料で手に入る資料・ダウンロードで「最低限のリーガルリスク」を削る
  10. 執筆者紹介

自社割賦は本当に“おいしい”のか? 売上アップの裏側で起きていること

「分割OKにした途端、受注が2倍になった」
営業現場でよく聞くこのフレーズには、続きがあります。数カ月後にやってくるのは、未収金の山・督促電話・クレーム・法務チェックです。自社割賦は、売上という“入口”を広げる代わりに、信用リスクと業務負担という“出口”を自社で全部抱える仕組みだと押さえておく必要があります。

ここからは、ペルソナで想定した中小事業の経営者・営業責任者が、実際に判断に使える視点だけに絞って整理します。

自社で割賦販売を始める企業が急増する3つの理由

自社割賦導入のきっかけは、感覚的には次の3つに集約されます。

  1. カード・信販の審査に通らない顧客を取り込みたい
  2. 手数料を抑えて“自社の取り分”を増やしたい
  3. 自社で分割条件を柔軟に設計したい(回数・頭金・キャンペーンなど)

整理するとこうなります。

理由 表向きのメリット 裏側で増えるリスク・業務
カード・クレジット審査に通らない層を拾う 売上・成約率アップ 貸倒れ・多重債務化・債権回収負担の増加
手数料を節約したい 粗利率アップ 与信・債権管理コストが“見えない手数料”として発生
柔軟な分割サービスを提供したい 顧客満足・差別化 割賦販売法・特定商取引法への対応難度アップ

どの理由も一見もっともらしく見えますが、「信用」と「法務」を自社で抱える覚悟があるかをセットで問う必要があります。

「カードが通らないお客さまを救いたい」が危険信号になる場面

営業現場では、「カードがダメなら自社割賦で通してあげたい」という心理が強く働きます。ただ、与信のプロの視点で見ると、

  • クレジットカード会社や信販会社は、過去の延滞情報・他社債務・収入情報をデータで見た上で「NO」と判断しています

  • その顧客を、自社がほぼノーチェックで受け入れるのは、プロが止めた取引を素人判断で拾いに行く行為です

特に危ないのは次のようなパターンです。

  • 他社カード・クレジットの枠がすでに埋まっている顧客

  • 収入に対して、既存の分割支払が明らかに多い顧客

  • 申込情報に小さな矛盾(勤務先の在籍年数と年齢が合わない等)がある顧客

「救っているつもりが、多重債務側に押し込んでいる」という構図になれば、割賦販売法だけでなく、消費者トラブル・行政指導・SNS炎上のリスクも跳ね上がります。

中小事業が見落としがちな「手数料より高くつくコスト」とは

自社割賦を検討する経営者が最初に見るのは、クレジット・信販手数料のパーセンテージです。ただし、現場で本当に効いてくるのは数字に出にくいコストです。

  • 債権管理コスト

    • 延滞一覧の管理、リマインドメール・電話、内容証明、弁護士相談
  • 社員のメンタル負担

    • 営業担当が「売った相手に督促する」心理的ストレス
  • リーガルチェックの継続コスト

    • 割賦販売法・特定商取引法の改正への対応、約款・表示の見直し
  • トラブル対応コスト

    • 消費生活センターからの照会対応、レビューサイト・SNSへの書込み対策

手数料を3〜5%節約したつもりが、回収不能債権+人件費+ブランド毀損でそれ以上の“支払”になっているケースは珍しくありません。
「いくら売れたか」だけでなく、「何%がきちんと回収されて、どれだけ現場の時間を食っているか」という視点で、自社割賦の採算性を計算し直す必要があります。

割賦販売法・特定商法のどこで引っかかる? 自社割賦に潜むリーガルリスクを整理

「手数料を惜しんで自社割賦に踏み切ったら、気づけば“法律違反のデパート”だった」
現場では、そんなシャレにならない相談が珍しくない。割賦販売法と特定商取引法は、売上よりも先に押さえるべき“地雷マップ”だ。

何回払い・どんな販売条件から「割賦販売法」の適用範囲になるのか

ポイントは「分割回数」と「支払時期」「相手が消費者かどうか」の3つ。

チェック項目 引っかかりやすいライン 割賦販売法との関係
分割回数 おおむね2回払い以下 多くは割賦販売法の「分割払い」に該当しない可能性が高い
3回以上の分割 ボーナス併用・長期支払 割賦販売・個別クレジットの規制対象になり得る
支払時期 商品・役務提供後も分割 「後払い・分割」の典型的な規制対象
相手 個人消費者向け 割賦販売法・特商法の保護対象になりやすい

「3回払いならセーフ」という現場の俗説は危険で、実際には契約の目的・支払期間・金額・継続性などを総合して判断される。グレーゾーンに感じた時点で、弁護士や専門家への相談を“初期コスト”として組み込んだ方が結果的に安くつくことが多い。

表示義務・契約書面・交付義務でよくある“うっかり違反”パターン

割賦販売法・特定商取引法が本気で見ているのは、「顧客が支払総額とリスクを理解しているか」。ここでのうっかりが、行政処分や業務停止命令の入り口になる。

よく出るNGパターンは次の通り。

  • 広告・LPで「月○円〜」だけ大きく出し、総支払額・支払期間・回数を小さく、または別ページに追いやる

  • ECやオンライン契約で、契約内容を保存可能な書面・メール・PDFを交付していない

  • 「クーリングオフできます」と曖昧に書きつつ、対象外条件や期間を明示していない

  • 所有権留保や中途解約の条件を、約款の奥に埋めて実質読ませていない

本来必要とされるのは、少なくとも次の情報を一画面で“ひと目”で分かる形で表示し、契約時には書面(電子書面含む)として交付する運用だ。

  • 現金販売価格

  • 割賦販売価格(利息・手数料込みの総額)

  • 支払回数・支払期間・各回の支払金額

  • 代金の支払方法(口座振替・カード決済・コンビニ等)

  • 解約・取消・クーリングオフに関する条件

クーリングオフ・民事ルールで「契約自体がなかったこと」になる条件

自社割賦の怖さは、「取れたと思っていた売上が、ある日まるごと消える」点にある。割賦販売法・特定商取引法には、消費者保護のための強力な民事ルールが用意されている。

押さえておきたい代表的なパターンは3つ。

  1. クーリングオフ期間内の解除
    訪問販売・電話勧誘販売などでは、所定期間内の通知で契約は遡ってなかったことになる。割賦契約も原則白紙扱いになり、既に受け取った代金の返還義務が発生する。

  2. 不実告知・重要事項不表示による取消
    収入・効果・リスクを誤認させる説明をしていた場合、「最初から合意がなかった」と評価され、契約取消しが認められることがある。広告表現と営業トークの両方が対象になる。

  3. 中途解約・返還義務に関する特則
    役務提供(スクール・エステなど)では、提供済み部分を超える金額の請求が制限される。長期一括前提で自社割賦を組んでいると、「残り分は請求できない」現象が起きる。

自社で割賦を組むということは、信用リスクだけでなく“法律で巻き戻されるリスク”も自社で抱えるということになる。ここを直視せずに分割導入に踏み込むと、数字上は黒字でも、手元のキャッシュと時間と評判が静かに削られていく。

現場で本当に起きているトラブルと、数字に出ない損失

「延滞率は3%だから問題ない」と安心した数カ月後、営業が督促に追われ、口コミでは社名が炎上寸前。自社割賦の怖さは、決算書に見えない場所で静かに積み上がります。

延滞率だけでは見えない「督促業務」と「社員メンタル」の消耗

自社で割賦取引を抱えると、未回収債権は単なる数字ではなく「毎日鳴り続ける電話」として現場にのしかかります。

  • 1件の延滞対応で発生しがちな業務フロー

    • 支払リマインドメール送付
    • 電話連絡と通話内容の記録
    • 分割条件の再提案や契約書面の確認
    • 場合によっては内容証明や弁護士への相談

この繰り返しが、営業やカスタマーサポートの本来の売上活動を侵食します。延滞率が同じでも、「何回連絡すればつながる顧客層なのか」によって、現場の負担はまったく別物です。

指標 数字に出るコスト 数字に出ないコスト
延滞 貸倒損失、回収コスト 営業時間の圧迫、社員の疲弊
督促 通信費、システム費用 クレーム対応ストレス、離職リスク
回収不能 販売原価のロス 経営者の意思決定の萎縮

国民生活センターの多重債務相談は年間2万件超という水準で推移しており、支払に追われる消費者は珍しくありません。この層に自社割賦を広く開放すると、「売上増」より先に「督促増」がやって来ることを、現場は体感します。

SNS・クチコミサイトで一気に燃え上がる風評リスクのメカニズム

割賦販売法や特定商取引法の表示義務を形式上は守っていても、顧客が「だまされた」と感じた瞬間に、話は法律からSNSに移ります。

  • 「支払総額がイメージと違う」

  • 「途中解約できないと言われた」

  • 「対応が高圧的だった」

こうした不満は、まず消費生活センターや自治体の相談窓口に届き、その後クチコミサイトや掲示板に転載されるパターンが目立ちます。相談件数の統計は公表されていますが、「社名つきの投稿件数」は決算書にも管理表にも出てきません。

一度「高額の自社割賦でトラブルになった会社」というラベルが付くと、カード会社や信販会社の加盟店審査にも影響する可能性があります。信用リスクは、顧客だけでなく自社側にも跳ね返ると押さえておく必要があります。

相談窓口に寄せられる「お試しのつもりだった」「総額を知らなかった」という定番クレーム

公的な相談事例では、定期購入やサブスクリプションと絡んだ「支払が終わらない」ケースが繰り返し報告されています。自社割賦でも、構造はほぼ同じです。

  • 「初回お試しのつもりが実は長期の割賦契約だった」

  • 「月々の金額だけ見て申込み、支払総額を把握していなかった」

  • 「クレジットカードではなく自社割賦だと理解していなかった」

原因を分解すると、次の3点に集約されます。

  • 販売ページでの現金販売価格・支払総額・支払期間の表示不足

  • 申込画面でのチェックボックスが形式的で、顧客の理解度確認が機能していない

  • オンライン契約にもかかわらず、交付義務のある契約書面に相当する情報が整理されていない

ここを「他社もこの程度だから」と妥協すると、相談窓口経由で是正指導が入り、割賦販売法違反として行政処分や業務改善命令につながる可能性も出てきます。

自社割賦の導入を検討するなら、延滞率や売上予測だけでなく、「相談リスク」「炎上リスク」をどこまで自社で飲み込むのかを、最初に経営判断として決めておくことが欠かせません。

与信と債権管理のプロだけが知る、“危ない申込”の見抜き方

「売上は伸びているのに、手元の財布が軽くなる」自社割賦の崩壊パターンは、危ない申込を初期で見抜けるかどうかでほぼ決まります。

客層・収入・既存債務…最低限チェックすべき信用ポイント

カードやクレジット会社が当たり前に見ている「信用のツボ」を、自社でも最低限おさえる必要があります。

  • 年齢・職業・雇用形態(転職直後、日雇い中心は要注意)

  • 月収と割賦代金の比率(手取りの3割超は危険水域)

  • 他社借入・リボ残高の有無(多重債務相談の典型パターンと直結)

  • 緊急連絡先や勤務先情報の正確性(ここが曖昧な申込は貸倒れ率が跳ね上がる)

ポイントは「売れるか」ではなく、「完走してもらえるか」を軸に審査することです。割賦販売法の規制対象になる取引ほど、ここを甘くするとトラブル時に自社が全ての債権リスクを被ります。

「分割後払いOK」にした瞬間に変わる申込の質と、検知すべきサイン

分割決済を導入した瞬間から、問合せの質は目に見えて変わります。現場で体感しやすいサインは次の通りです。

  • 価格よりも「月々いくらなら通るか」だけを聞く

  • 見積段階で「職場への連絡は絶対NG」と強く主張する

  • 同じ顧客が短期間に別商品を追加申込してくる

この時点で「売れた」と判断すると、3〜6か月後の延滞ラッシュに直結します。与信ポリシーとして「同一顧客の利用上限」「短期間の再契約禁止期間」を事前に決め、システムかチェックリストに落としておくことが、自社割賦の最低限のセーフティネットです。

少額だからと油断すると狙われる、自社割賦の不正・なりすまし

不正検知の現場では、あえて少額の割賦から攻めてくるケースが目立ちます。理由は「販売業者の警戒心が低いから」です。

危ない申込のサイン 背景にあるリスク 初期対応のポイント
住所や勤務先の入力ミスが多い なりすまし・架空申込 公的身分証と照合し、一致しない場合は契約保留
高額なのに即決・質問ゼロ 転売目的・不正利用 連絡先に事前コールし、本人確認ログを保存
IPアドレスや端末情報が毎回違うEC申込 組織的な不正アクセス セキュリティガイドラインに沿ったアクセス制限と追加認証

「少額だから被害も少ない」と考えると、狙う側にとっては格好の“テストベッド”になります。ログイン履歴やアクセス元IPといった決済情報をセキュアに保管し、怪しいパターンを社内で共有・更新していく運用こそ、割賦ビジネスを長く続けるための本当の「売上対策」です。

自社割賦・クレジット・信販あっせん…3つのスキームを“リスクの主体”で比較する

「どの決済を選ぶか」は、売上の話ではなく“誰がどこまでリスクを背負うか”の設計です。ここを曖昧にしたまま自社割賦を導入すると、手数料で浮いた分より、トラブル処理で財布が一気に痩せていきます。

誰が債権を持ち、誰が回収し、誰が罰則を受けるのかを一枚の図で整理

まずは割賦販売法やクレジット取引で、どこに債権と責任が残るかを切り分けます。

スキーム 債権の持ち主 回収業務の主体 法令違反時の主なリスク主体
自社割賦(自前分割) 販売業者(自社) 販売業者(自社) 販売業者(割賦販売法・特商法違反、行政処分、民事責任)
クレジットカード決済 カード会社 カード会社(請求)+加盟店はチャージバック対応 カード会社+加盟店(加盟店規約違反・不正検知強化など)
信販あっせん(包括信用購入あっせん型) 信販会社 信販会社 信販会社が割賦販売法の直接当事者/販売業者は特商法等の責任

現場感覚でいうと、

  • 自社割賦は「売上もリスクも丸ごと自社」

  • クレジットは「リスクの大半をカード会社に預ける」

  • 信販あっせんは「長期分割のリスクと法律対応を信販に預ける」

という構図です。まかせて信販のような信販代行サービスは、この信販あっせんにスムーズにアクセスするための「入り口と事務の肩代わり」を提供している立ち位置になります(加盟店審査や事務負担を軽くする役割)。

手数料だけで比較すると失敗する「トラブル時のコスト構造」

「手数料が○%だから、年間×円損する」という計算だけで判断しがちですが、現場で効いてくるのはトラブル発生後の“見えない固定費”です。

  • 自社割賦の隠れコスト

    • 延滞発生後の督促メール・電話にかける社員の時間単価
    • 債権管理システムの導入・運用費用
    • 弁護士相談・内容証明・訴訟対応の費用
    • クチコミサイト・SNS対応にかかる広報コスト
  • 信販・クレジット利用時のコスト

    • 手数料率(売上の一定%)
    • 加盟店審査・モニタリング対応の事務工数
    • 不正検知強化のための社内オペレーション整備

多重債務や割賦トラブルに関する相談は、国民生活センターの統計上も年間2万件超の水準で続いており、一度炎上すると販売停止や行政指導で“売上ゼロ期間”が生まれるリスクがあります。数%の手数料と、数ヶ月の売上停止を天秤にかける視点が欠けると、判断を誤りやすくなります。

決済インフラ・信販代行を使うことで消せるリスク・消せないリスク

「じゃあ全部信販に投げれば安心か」というと、そこにも線引きがあります。決済インフラや信販あっせんで消せるリスクと、どうしても自社に残るリスクを分けておきましょう。

  • 消せる・軽くできるリスク

    • 長期分割に伴う貸倒れリスク(債権の大部分)
    • 与信審査そのものの設計・運用
    • 割賦販売法上の書面交付・契約締結プロセスの多く
  • 消えない・自社に残るリスク

    • 誇大広告・不十分な表示による特定商取引法違反
    • 「お試しのつもりだった」「総額を知らなかった」といった説明不足クレーム
    • 従業員の営業トーク・LINEやメールの文面から生じる消費者トラブル
    • サービス品質そのものへの不満・返金要求・風評被害

決済会社や信販会社は金融と債権のプロですが、顧客との最前線である「販売条件」「説明」「アフター対応」までは肩代わりできません。
自社割賦をやめて信販に切り替えるのは、「リスクの主体を金融プロ側に移す」選択であり、そのうえで自社が担うべき“販売業者としての責任”をどこまで磨くかが次の論点になります。

「最初は順調だったのに」業界で繰り返される自社割賦トラブルのパターン集

売上グラフは右肩上がり、カード決済が通らない顧客も自社割賦で取り込めて、「これは勝ちパターンだ」と油断した頃に、じわじわと足元を崩してくるのが自社割賦のリスクです。現場で何度も見てきた“お決まりの崩れ方”を、時間軸とともに整理します。

3〜6か月目に延滞が膨らむ“典型シナリオ”と、その予兆サイン

導入直後の1〜2か月は、ほぼ全件支払が順調に入り、「割賦販売法の規制も最低限は押さえたし、問題なさそうだ」と感じやすい時期です。崩れ始めるのは3〜6か月目。そこには共通するパターンがあります。

延滞が膨らむまでの“よくある流れ”を簡略化すると次のようになります。

時期 現場で起きていること 見落とされがちなポイント
導入〜2か月 申込増加、入金も良好。営業は「分割OK」を強く訴求 与信基準が実質ゼロに近いが、数字が良いので誰も気にしない
3〜4か月 一部顧客で支払遅延が出始める 督促フローがなく、担当者ごとに“自己流対応”
5〜6か月 延滞常習者・連絡不能債権が増える 回収より新規販売を優先し、未収残高が雪だるま化

ここで押さえておきたい予兆サインは次の通りです。

  • 支払期日の3〜10日遅れが目立ち始める

  • 督促電話を「営業担当が片手間で」行っている

  • 延滞状況を債権管理システムではなくExcelやメモで追っている

  • 分割回数や代金に対する「社内の上限ルール」が決まっていない

この段階で与信ポリシーと債権管理フローを見直さないと、7か月目以降に「売上は出ているのに、手元のキャッシュが増えない」という財務リスクに直結します。

人気商材×分割販売が、一転して「モンスタークレーム」を生む瞬間

人気のスクールやエステ、Web制作など、高額役務サービスほど、自社割賦と相性が良さそうに見えます。ところが、販売条件の伝え方を誤ると、一気にモンスタークレーム製造機に変わります。

典型的なのが次のようなケースです。

  • LPやECサイトで「月1万円〜」だけを大きく表示

  • 割賦販売法上必要な「総支払額」「支払期間」「販売条件」の表示は文字が小さいか、別ページ依存

  • オンライン契約時も、特定商取引法の趣旨に沿った書面・メール交付の設計が甘い

相談窓口には、こうした販売方法に対し、次のような苦情が寄せられやすくなります。

  • 「お試しのつもりだったのに、長期の契約だとは思っていなかった」

  • 「総額いくら払うことになるのか、契約時には分からなかった」

  • 「クレジットカードではなく、会社に直接分割で払う仕組みだと知らなかった」

ここで一度炎上すると、SNSとクチコミサイトの拡散速度は督促業務の何十倍も速いため、1件の契約から企業ブランド全体の信用リスクに飛び火します。売上アップ目的で導入した割賦取引が、レピュテーションの毀損という“見えないコスト”を生む瞬間です。

事例から見える、“やってはいけなかった一手”を分解する

自社割賦トラブルの裏側を冷静に分解すると、「これさえ先に決めておけば防げた」という共通点が浮かび上がります。重要なポイントを“やってはいけなかった一手”として整理します。

  • 与信を売上目標に従属させた

    • 「今期売上◯◯万円」が先にあり、審査・信用チェックが後回しになる
    • 結果として、カード会社がNGを出すレベルの顧客まで自社で引き受けてしまう
  • 債権管理を“事務作業”扱いした

    • 督促メールや支払案内を、アルバイトや新人に一任
    • 延滞時の対応履歴・ログが残っておらず、消費者トラブル時に証明できない
  • 割賦販売法・特定商取引法の「線引き」を曖昧にした

    • 「3回払いだから大丈夫」「少額だから規制対象外」という社内の思い込み
    • 実際には販売条件や役務の性質によって、書面交付義務やクーリングオフの適用余地がある
  • 「他社もやっているから」で表示・契約書面をコピーした

    • 自社の商品・サービス特有のリスク説明が抜け落ちる
    • 法律改正やガイドライン改訂へのキャッチアップができず、気づかぬうちに違反状態になる

自社割賦の怖さは、「最初は順調に見える」ことです。導入の目的が売上アップであるほど、信用リスクや割賦販売法の遵守といった“ブレーキ側の設計”が後ろ倒しになりがちです。

ここまでのパターンを自社の契約・決済フローに当てはめてみると、どこに火種が潜んでいるかが見えます。次章以降では、与信・債権管理・リーガルの観点から、どこまで自社で抱え、どこから信販や決済インフラに委ねるべきかを具体的に切り分けていきます。

現場で交わされるLINE・メールのやり取りから学ぶ「火種の消し方」

「支払えなくなりました」から始まる現場対応のリアル再現

自社割賦で一番多いのは、静かな一通のメッセージから始まるトラブルだ。

「今月の支払が厳しくて…少し待ってもらえませんか?」

ここで返す一文で、その後の債権回収コストもSNS炎上リスクも大きく変わる。現場で実際に使われている流れは、次の3ステップが鉄板だ。

  1. 事実確認
  2. 代替案の提示
  3. 記録が残る形での合意

悪い例は「了解です。今月はスキップで」の一行返信。契約条件も販売法上の扱いも曖昧になり、後から「そんな約束はしていない」と言われやすい。

良い返信の型はこうだ。

  • 「ご連絡ありがとうございます。◯月◯日お支払予定の◯◯円(分割契約:全◯回中◯回目)について、今月が難しいという理解でよろしいでしょうか。」

  • 「一時的な支払猶予の候補として、(1)支払日を◯日まで延期 (2)今月は半額支払で残額を最終回に上乗せ のどちらかをご提案できます。」

このレベルまで「金額・回数・契約内容」を具体的に書き込むと、消費者トラブル時にも「どの債権についてのやり取りか」が即座に追跡できる。多重債務相談が毎年2万件超ある現実を踏まえると、曖昧なやり取りはそれだけでリスクだ。

法律用語を使わずに販売条件・リスクを伝える文章術

割賦販売法や特定商取引法の条文をそのままコピペしても、顧客はまず読まない。現場で効いているのは「法律用語を生活言葉に翻訳する」ことだ。

例えば、よくある勘違いワードをこう言い換える。

  • 「分割払い」

    →「今申し込むと、商品は先に全部受け取り、代金だけを毎月◯円ずつ支払う契約になります」

  • 「クーリングオフ」

    →「申し込みから◯日以内なら、理由を問わずやめられ、その時点までの支払も全額お返しできます」

  • 「割賦販売価格」

    →「毎月の支払を全部足した合計金額(◯円)です。一括払いの金額(◯円)とは異なります」

顧客に送る案内メールやLINEのテンプレを作るときは、「3行で“財布への影響”がイメージできるか」を基準にすると良い。支払総額や期間を太字や改行で目立たせ、「お試し」「初回◯円」よりも前に置くことが、国民生活センターの相談傾向と整合する実務的な対策になる。

証明を残すためのスクリーンショット・ログの取り方とセキュリティガイドライン

自社割賦で炎上した案件の多くは、「言った/言わない」「見た/見ていない」の争いに発展している。これを避けるには、アクセスログやメッセージ履歴を「第三者が見ても一目で分かる形」で残す運用が欠かせない。

最低限押さえたいポイントを整理すると次の通り。

項目 実務ポイント リスク対策の狙い
申込画面のスクリーンショット 販売条件・支払総額・回数・クレジット決済か自社割賦かを表示した画面を保存 表示内容に関する「そんな説明はなかった」を防ぐ
同意ログ チェックボックスや同意ボタンのタイムスタンプとIPアドレスを記録 契約の成立時点と本人のアクセスを証明
やり取り履歴 LINE・メールの全文を顧客IDと紐付けて社内の債権管理システムに保存 個人端末の紛失・退職による証拠喪失を防止
アクセス権限 顧客情報は「要件のある担当者のみ閲覧可」に制限 セキュリティガイドライン遵守と情報漏えい防止

ここで重要なのは、「担当営業のスマホにだけ証拠がある」状態を作らないことだ。端末紛失や退職がそのまま証拠喪失につながる。事業として割賦取引を行う以上、ログイン制の社内システムやセキュアなクラウドストレージに一元管理し、アクセス権限と操作ログを残すことが、金融系のセキュリティ水準に近づける近道になる。

この章で押さえた3つの視点――「火種が生まれた瞬間の一言」「法律用語を生活言葉に翻訳する」「証拠を会社として管理する」――を回収フローに組み込むだけでも、自社割賦の“目に見えないリスク”は確実に薄まっていく。

自社割賦を続けるか、やめるか? 経営者が押さえるべき判断ポイント

「売上は伸びているのに、財布の中身は軽くなる」──自社割賦が危険ゾーンに入ったサインを、数字と現場感で切り分けておきます。

いまの回収・トラブル件数から“撤退ライン”を逆算する

自社割賦を続けるかどうかは、感覚ではなく3つの指標で線を引きます。

  • 延滞率(30日超遅延の件数/全契約件数)

  • 貸倒率(回収不能になった代金/割賦売上)

  • 苦情・相談件数(消費生活センター行き含む)

目安として、国民生活センターが公表する多重債務相談が毎年2万件超で高止まりしている状況を踏まえると、延滞やクレームが増え始めた段階でブレーキを踏まないと、同じ土俵に乗りかねません。

指標 見るポイント 撤退・縮小を検討すべきライン例
延滞率 30日超の分割支払遅延 3〜5%を超えて右肩上がりが3か月続く
貸倒率 回収不能の債権 粗利の1〜2%を食い始めた時点
苦情件数 「総額を知らなかった」等の相談 月数件→10件超へ増加トレンド

数字がこのラインに近づいたら、「自社で審査を絞るのか」「信販・包括信用購入あっせんに切り替えるのか」を、手数料ではなく倒れた時のダメージで比較します。

「自社でやる領域」と「外部サービス・顧問に任せる領域」の切り分け

自社割賦のすべてを自前で抱える必要はありません。ポイントはどこまで自社が債権とリスクを持つかです。

自社で担うと相性が良い領域

  • 顧客とのコミュニケーション設計(販売条件の説明、FAQ作成)

  • 自社サービスの内容・品質管理

  • 軽微なリマインド(支払前の通知、支払方法の案内)

外部に任せた方が損失を抑えやすい領域

  • 与信審査(信用情報、既存債務のチェック)

  • 本格的な債権管理・回収(長期延滞、法的手続き)

  • 割賦販売法・特定商取引法のリーガルチェック(弁護士・専門家)

領域 自社対応が向くケース 外部委託が合理的なケース
与信・審査 少額、既存顧客中心 高額役務、新規顧客が多い
債権管理 年数件の延滞規模 毎月延滞が発生し始めた
法務・規制対応 シンプルな販売条件 回数・条件が複雑な割賦取引

手数料を払って信販や代金回収サービスを使うのは、「売上の一部を支払って、倒産リスクとレピュテーションリスクを買い戻す行為」と捉えると判断しやすくなります。

明日から変えられる3つのルール:審査、表示、督促業務の再設計

自社割賦からすぐ撤退しない場合でも、明日から変えられる最低3ルールを入れておくと、トラブルの増殖スピードを抑えられます。

  1. 審査ルール
    「カードが通らない顧客をすべて拾う」運用をやめ、以下のどれかに当てはまる場合は信販か前払いを提案するルールを作ります。
  • 収入に対して割賦代金が一定割合を超える

  • 他社の分割・ローンが既に多いと申告

  • 申込内容に矛盾がある、申込情報に不自然な点がある

  1. 表示ルール
    ECサイトやLPでは、月額だけでなく支払総額・支払期間・回数を必ず同じ画面で表示し、「申込前に確認しました」のチェックを入れてもらいます。割賦販売法で求められる販売条件の表示や書面交付義務を意識し、「総額を知らなかった」というクレジットトラブルを未然に塞ぎます。

  2. 督促ルール
    延滞が発生したら、担当者の気分ではなく日数ベースのフローで動かします。

  • 1〜3日遅れ:メールとSMSでリマインド

  • 10日遅れ:電話連絡と支払計画の再確認

  • 30日超:社内決裁の上で外部回収・弁護士相談の検討

この3ルールを紙1枚に落とし込み、営業とバックオフィスで共有しておくと、「その場しのぎの甘い判断」が減り、自社割賦を続けるかやめるかの判断材料もクリアに見えてきます。

これから自社割賦に参入するなら、最初に決めておくべき“ルールブック”

「売上は伸びたのに、帳簿を開いたら未収金だらけ」
自社割賦で一番多い失敗は、仕組みより先に“ノリで運用”を始めてしまうことです。スタート前にルールブックを固めておくと、あとからの修正コストとリーガルリスクが一気に下がります。

スタート前に作るべきガイドラインとチェックリスト

まず決めるのは「どこまでリスクを自社で抱えるか」です。以下は最低限整えておきたいガイドライン項目。

【自社割賦ガイドラインの柱】

  • 対象商品・役務

    高額役務やスクールなど、どの商品を割賦対象にするか/しないか

  • 与信・審査ルール

    年齢・勤務形態・年収・既存債務(カード・ローン・他社分割)の確認項目
    「この条件ならお断り」という足切り基準

  • 債権管理・回収フロー

    何日遅れたらリマインドメール
    何日遅れたら電話
    何日で内容証明や弁護士相談にエスカレーションするか

  • 法令対応ポリシー

    割賦販売法・特定商取引法のどの条文が自社取引に関係するか
    表示・書面・交付義務を誰がチェックするか

【スタート前チェックリスト(抜粋)】

  • 割賦販売法の適用条件(支払回数・期間・金額)を弁護士または専門家と確認したか

  • LP・ECサイトに「現金販売価格・割賦販売価格・支払総額・回数・期間・支払方法・販売条件」を明記しているか

  • 契約書面または電子書面のテンプレートに、クーリングオフ・中途解約・遅延損害金の条件を明示しているか

  • 延滞発生時の対応フローを、営業・事務・経理で共有しているか

ここまで決めてからシステム・決済サービスを選ぶと、「入れてみたものの運用できない」という事故を避けられます。

社員教育で共有しておくべきキーワードとNGトーク集

リーガルリスクの多くは、現場トークから生まれます。営業・カスタマーサポートに最低限インストールしておきたい“言葉のルール”があります。

【必ず押さえたいキーワード】

  • 割賦販売法

  • 特定商取引法

  • クーリングオフ

  • 支払総額(利息・手数料を含む)

  • 所有権留保

  • 遅延損害金

  • 多重債務

【炎上を招きやすいNGトーク例】

  • 「カード審査に落ちた方でも、うちの自社割賦ならほぼ通りますよ」

    → 与信を甘く見ている発言として、後のトラブル時に致命傷になりやすい

  • 「お試し感覚で大丈夫です。支払は分割なので負担はほぼありません」

    → 支払総額・契約期間の誤認を招き、国民生活センターへの相談パターンに直結

  • 「クーリングオフはできません(理由の説明なし)」

    → 対象取引なのに一律否定すると、特商法違反指摘のリスク

【望ましい言い換え例】

  • 「カード審査とは別に、当社の基準で審査を行います。結果によってはお断りする場合があります」

  • 「総額は◯円で、◯回払い、毎月の支払は◯円です。途中解約の場合の費用も、この書面でご確認ください」

現場マニュアルには、NGトークとOKトークを並べた一覧を入れておくと、教育効果が高まります。

無料で手に入る資料・ダウンロードで「最低限のリーガルリスク」を削る

ゼロから自作するより、まずは公的資料と専門機関のひな形を“ベースキャンプ”にすると効率的です。

以下は自社割賦導入前に目を通しておきたい代表的な情報源です。

資料・サイト 提供元 主な内容・用途
割賦販売法・特定商取引法の概要解説 経済産業省・消費者庁 規制対象・表示義務・交付義務・罰則の全体像把握
多重債務・定期購入トラブルの統計・事例 国民生活センター 「お試しのつもりだった」「総額を知らなかった」といった典型クレームの把握
割賦販売に関する弁護士解説記事 弁護士法人・法律事務所サイト 自社がどの類型の割賦取引に該当するかの確認
不正検知・なりすまし対策のホワイトペーパー 不正検知SaaS・決済事業者 小規模事業でも狙われる不正申込パターンの理解

これらをダウンロードし、自社用の「自社割賦ルールブック」に差し込んでいくイメージです。
法律そのものを読み解くのではなく、「自社の販売条件・顧客層・決済手段に照らして、どこが地雷なのか」をマーキングしていく作業が、リーガルリスク削減への近道になります。

執筆者紹介

2018年創業以来、高額サービス事業者の分割決済導入を専門に支援している「まかせて信販(運営:株式会社ジブンゴト)」です。信販会社の選定から加盟店審査対策、与信・債権管理フローの設計、事務代行までを一気通貫で行い、自社割賦と信販スキームの比較検討を日常的にサポートしています。本記事では、現場で蓄積した「法令・債権・運用」の視点を、中小事業者が意思決定に使える実務知として整理しました。