役務の割賦契約で失敗しないための法的リスクと実務対応徹底ガイド集

信販代行・ビジネスクレジット

「役務の割賦契約」を甘く見ると、売上が増えたはずの月に、現金ではなく「回収不能リスク」と「法的火種」だけが積み上がります。とくに、Web制作・スクール・コンサルなど役務メインの事業で、自社割賦やクレジット、ローンを混在させている場合、ほとんどの現場で致命的な勘違いが起きています。

多くの事業者は、次のように考えがちです。

  • 「月々払いにしているだけで、実質は売掛だから大丈夫」
  • 「クレジットカード決済だから、割賦販売法や特商法はカード会社側の問題」
  • 「LINEで分割OKと送っただけなので、正式な契約書ほどの拘束力はない」

実務では、これらはどれも危険な前提です。
割賦販売法や特定商取引法は、「誰が債権者か」「何回払いか」よりも、「どう勧誘し、どのような書面・電磁的記録を残したか」を見ています。つまり、表向きは「シンプルな役務の分割契約」のつもりでも、信用購入あっせんやクレジット取引と評価されれば、一気に規制の射程に入ります。

さらに、自社割賦で見逃されやすいのは、販売条件を決めているのが契約書ではなく、LINE・メール・チャットのラフな文面になってしまっている点です。ここが崩れていると、支払停止、中途解約、クーリング・オフ誤認といった主張が出た瞬間に、法的にも実務的にも防御しづらくなります。

本記事は、条文の解説ではなく、次の3点を徹底的に可視化します。

  • 自社割賦・クレジット・ローン・信用購入あっせんを、「誰がどこまでリスクを持つか」で一枚の図に落とすこと
  • 役務の割賦契約で実際に起きたトラブル(支払停止・中途解約・クーリング・オフ誤認)を、現場の会話レベルで分解すること
  • 手数料の安さの裏に隠れている、顧問弁護士対応・内容証明・訴訟・炎上対策まで含めた「実質手数料」を言語化すること

そのうえで、事業規模・役務の単価・顧客属性から逆算して、どのスキームを選び、どこから外注し、どこを自社で抱えない方がいいかを判断できるように設計しています。

この記事を最後まで読み、自社のスキームをチェックリストで棚卸しすれば、

  • 「このやり方は割賦販売法・特商法のどこに該当するのか」
  • 「どこまでが自社割賦で許容できるリスクで、どこから信用購入あっせんに切り替えるべきか」
  • 「既に組んでしまった危うい契約を、どう火消ししつつ軌道修正するか」

を、感覚ではなく構造として判断できるようになります。
逆に言えば、この整理をしないまま役務の割賦契約を続けること自体が、将来の売掛金を自ら“焦げ付き予備軍”に変えていく行為になります。

この記事全体から、あなたが受け取れる実利は次の通りです。

セクション 読者が手にする具体的な武器(実利) 解決される本質的な課題
前半(法律の射程・スキーム比較・典型トラブル・破綻パターン) 自社割賦・クレジット・ローン・信用購入あっせんの違いを、割賦販売法・特商法・信用情報との関係で整理できる「判断の物差し」 「自分のやり方がどの法律に当たるのか分からない」「どこからアウトなのか分からない」という状態から抜け出せない問題
後半(カード決済の誤解・コスト構造・判断フロー・チェックリスト・Q&A) 実質手数料まで含めたスキーム選択の基準と、自社の契約・勧誘・書面を5分で診断できるチェックリスト 手数料や目先の売上だけで決めてしまい、後から回収不能・紛争・炎上で事業全体が不安定になる構造

ここから先は、「役務の割賦契約」はどこから法律の射程に入り、どのラインを越えると一気にリスクが跳ね上がるのかを、自社の言葉で把握していくステップです。続きを読みながら、今のスキームを一つずつ解体していきましょう。

  1. この記事を書いた理由 – 服部純平
  2. 「役務の割賦契約」はどこから法律の射程に入るのか?割賦販売法と特商法をザックリ“自社言語化”する
    1. 役務×割賦の「いわゆる」定義を、販売現場の日本語に翻訳する
    2. 割賦販売法の目的と規制主体:金融庁ではなく経済産業省が見ているポイント
    3. 特定継続的役務提供・クーリング・オフ・解除制度が一気に効いてくるライン
  3. 自社割賦・クレジット・ローン・信用購入あっせん…何がどう違う?「誰がどこまでリスクを持つか」を一枚で理解する
    1. 割賦+信用+支払回数──同じ“月々払い”でも、契約主体と法律はまったく別物
    2. 個別クレジット・包括クレジット・ローン・自社割賦の「販売法上の位置づけ」比較表
    3. 「加盟店」「アクワイアラー」「あっせん業者」「販売店」それぞれの管理義務と罰則リスク
  4. その自社割賦、本当に“ただの売掛”で済みますか?現場で起きた3つの典型トラブル解体ショー
    1. ケース1:LINEで“分割OK”と送っただけなのに、民事トラブル化したスクール事業
    2. ケース2:年収・信用情報を見ずに分割を組み、回収不能で事業が焼けるコンサル契約
    3. ケース3:役務提供が遅れた結果、「支払停止の抗弁」的な主張で全部ひっくり返された例
  5. 「最初は順調だったのに一気に崩れる」役務割賦の破綻パターンと、プロがやっている火消し手順
    1. 売上アップに酔っている間に、総量規制的な“払いきれないライン”を越えてしまう構図
    2. 途中解約・返還制度・中途清算をどう整理すれば、裁判にならずに済むのか
    3. プロがまず確認するのは“どの法律に該当するか”と“どこまで書面が残っているか”
  6. 「クレジットカード決済があるから安心」は危険信号?カード・ローン・割賦販売法の誤解を解く
    1. 「カードの利用明細がある=法律も全部カード会社任せ」は成り立たない
    2. 決済代行業者とクレジットカード会社とアクワイアラーの役割を取り違えると危ない理由
    3. 電子・オンライン完結サービスこそ、表示義務・規約・交付義務をミスりやすい
  7. 手数料だけで選ぶと痛い目を見る:自社割賦 vs 信用購入あっせんのコスト構造を“民事コスト”まで分解する
    1. 「登録不要・手続ゼロ」の裏で発生する、見えない金銭コストと時間コスト
    2. 顧問弁護士・内容証明・訴訟・風評対策…すべて合算したときの“実質手数料”とは
    3. 信用購入あっせんを使うときに、業者側が押さえておくべき販売条件・勧誘ルール
  8. 現場で本当に役立つ「割賦スキーム選び」の判断フロー:事業規模・役務の種類・顧客層から逆算する
    1. 年商規模・営業所数・本店機能で変わる「自分で抱えていいリスクの量」
    2. 学生・主婦・専業フリーランス…属性別に変えるべき支払回数と限度設定
    3. 少額サービスの“登録少額クレジット”的な扱いと、高額役務の扱いを混同しないコツ
  9. 読者の「今のやり方」をセルフ診断:5分で分かる“グレー&レッド”チェックリスト
    1. チェック1〜5:表示義務・書面交付・規約・Mail/LINEの記載を確認する
    2. チェック6〜10:審査・管理義務・支払遅延時の対応フローを棚卸しする
    3. 結果パターン別──今すぐ変えるべき点と、顧問や専門機関に相談した方がいいライン
  10. 相談の現場から見える「よくある勘違い」Q&A:雑談レベルのやり取りをそのままケーススタディにする
    1. 「どちらが安全ですか?」にプロが即答しない理由と、代わりに必ず聞く3つの質問
    2. 「クレジットじゃなくてローンだから販売法は関係ないですよね?」にどう答えるか
    3. 「スタートアップだから、とりあえず自社割賦で…」と言われたときの現実的な落としどころ
  11. 執筆者紹介

この記事を書いた理由 – 服部純平

信販会社で加盟店契約を担当していた頃、いちばん神経を使ったのが「役務の割賦」でした。2016年以降だけでも、スクールやコンサル、制作会社など延べ120社ほどをサポートしましたが、売上が伸びたタイミングで一気にトラブルが噴き出すパターンを何度も見てきました。

印象的だったのは、あるスクール事業者です。営業担当が「LINEで分割OKと送っただけ」だと思い込んでいた案件が、受講生側からの支払停止の主張をきっかけに裁判寸前まで発展しました。契約書よりも、チャットの文面が争点になり、私自身も社内の法務や外部弁護士と夜遅くまで対応に追われました。

別のコンサル会社では、年収確認もせずに24回払いを量産し、1年後に回収不能が積み上がって事業が傾きました。最初の相談時には「クレジットカード決済だから法律はカード会社側」と本気で信じておられ、割賦販売法と特商法の射程を一つずつ説明し直す必要がありました。

こうした現場を重ねるうちに、「条文の知識より、どのスキームで誰がどこまでリスクを持つのかを自分の言葉で整理できているか」が生死を分けると痛感しました。本記事は、私が加盟店と一緒に机を囲みながら確認してきた視点を、そのまま現場で使える形に落とし込んだつもりです。役務の割賦をすでに始めてしまった方が、手遅れになる前に軌道修正できるように書いています。

「役務の割賦契約」はどこから法律の射程に入るのか?割賦販売法と特商法をザックリ“自社言語化”する

「分割OKってLINEで返しただけなのに、弁護士から内容証明が飛んできた」
役務ビジネスのトラブルは、たいていこの一文から始まります。

ここでは、どこからが“ただの分割”ではなく「割賦販売法」「特定商取引法」の世界に踏み込むのかを、現場の日本語に引きずり下ろします。

役務×割賦の「いわゆる」定義を、販売現場の日本語に翻訳する

まず、よくある誤解から片づけます。

  • 「モノじゃなくてサービスだから、割賦販売法は関係ない」

  • 「うちは自社割賦でローンでもクレジットでもないから、ただの売掛」

どちらも危ない考え方です。

いわゆる「役務の割賦契約」は、現場目線で言うと次の3要素がそろった状態です。

  • 提供するものが「モノ」ではなく、スクール・Web制作・コンサル等の役務提供である

  • 代金を2回以上の分割支払(分割・月々払い)にしている

  • その支払が、一定の期間継続する債務(債務の分割支払)になっている

ここでポイントになるのが、「書面やページにきちんとした契約内容がなくても、LINEやメールのやり取りが契約内容として評価される」という現実です。

典型的には、こんな流れが多いです。

  • LPや説明ページで支払方法をふんわり案内

  • DMやZoom商談で、「クレジットカードか自社分割もOKです」と口頭・チャットで説明

  • お客さまのスマホ上には、利用明細とLINEスクショだけが“証拠”として残る

この状態でトラブルになると、裁判所や消費生活センターは、
「何が“役務の内容”で、何が“分割契約の条件”だったのか」を、
LINE・メール・決済履歴・契約書面を束ねて判断します。

私はこの分野を整理している立場で言いますが、
「契約書を交わしていないから安全」という発想は真逆です。
むしろ、ラフな電磁的方法(メール・LINE・フォーム)だけで契約締結しているほど、後から“言った/言わない”が地雷化しやすいと考えた方がいいです。

割賦販売法の目的と規制主体:金融庁ではなく経済産業省が見ているポイント

次に、「誰があなたの事業を見ているのか」を整理します。

割賦販売法の目的をざっくり言い換えると、

  • 消費者に払えないレベルの分割契約を組ませない

  • クレジット・信用購入あっせん・登録少額クレジットといった取引で、

    販売業者・あっせん業者・加盟店が暴走しないように管理する

という「割賦×信用取引の暴走防止法」です。

そして、ここをよく間違えられますが、
この法律を所管しているのは金融庁ではなく経済産業省です。

項目 割賦販売法 貸金業法
主な所管機関 経済産業省 金融庁
主役になるプレーヤー 販売業者・あっせん業者・加盟店・カード会社 貸金業者(お金を直接貸す業者)
典型的な取引 クレジットカード・個別クレジット・信用購入あっせん・登録少額クレジット キャッシング・フリーローン等の金銭消費貸借
規制の主眼 割賦購入時の信用供与・販売方法・書面交付・勧誘ルール 貸付総量規制・利息制限・取立て方法

役務ビジネスが巻き込まれやすいのは、このうち

  • クレジットカード決済を使った包括クレジット

  • 信販会社を通じた個別クレジット(信用購入あっせん)

  • 自社で分割を組む自社割賦(販売業者が債権者)

に関わる部分です。

経済産業省や各経済産業局の行政資料、
日本クレジット協会のガイドラインを読むと、繰り返し出てくるキーワードが

  • 書面の交付義務

  • 電磁的方法による重要事項の表示

  • 不適切な勧誘・過量販売の防止措置

  • 加盟店・あっせん業者の管理義務

です。

つまり、「カード会社がいるから安心」ではなく、
販売業者であるあなた自身も“規制の真正面に立っている”場面が多い、ということです。

特定継続的役務提供・クーリング・オフ・解除制度が一気に効いてくるライン

役務ビジネスで本当に危険なのは、特定商取引法の“特定継続的役務提供”と重なった瞬間です。

特定継続的役務提供に入りやすい分野の一例を挙げると、

  • 語学スクール

  • エステ・美容関連

  • 学習塾・資格スクール

  • 結婚情報・結婚相談サービス

  • パソコン教室 等

これらで、一定期間継続する役務を、分割で支払う契約になると、

  • クーリングオフ(一定期間内の無条件解除)

  • 中途解除・中途解約時の清算方法

  • 書面交付義務(契約書面・概要書面)

  • 誇大広告・不実告知・威迫勧誘の禁止

といった特商法の制限が、一気に乗ってきます。

視点 割賦販売法のライン 特商法(特定継続的役務)のライン
何を見ているか 支払回数・信用供与・クレジット・あっせんの仕組み 役務の内容・期間・勧誘方法・書面
問題になりやすい場面 信用情報を見ない“なんちゃって審査”で高額分割を組む 口頭説明とページの内容が違う・LINEでの約束と書面が違う
典型的な紛争 支払停止の抗弁・割賦代金の残額請求 クーリングオフ・中途解約・返金割合

役務×割賦のトラブル処理に入る弁護士は、まず

  • この契約が割賦販売法の世界なのか

  • 同時に特商法の特定継続的役務にも該当するのか

を切り分け、次に

  • どの情報が「書面」扱いになるか(紙・PDF・メール・ページ・LINE)

  • どこまでが「説明済み」と認められるか

を洗い出していきます。

ここまで押さえておくと、
「うちは単なる分割だから関係ない」という発想から抜け出し、
“どの法律の射程に入っている前提で、スキームと書面を組むか”という発想に切り替えやすくなります。

自社割賦・クレジット・ローン・信用購入あっせん…何がどう違う?「誰がどこまでリスクを持つか」を一枚で理解する

月々払いの裏側で、本当に握っているのは「売上」ではなく「債務リスク」です。ここを取り違えると、売上グラフが伸びた直後に、回収不能とクレームで一気に焼け落ちます。

私の視点で言いますと、役務ビジネスの相談の半分は「スキームの名前」ではなく「誰が債権者か」を誤解しているところから始まります。

割賦+信用+支払回数──同じ“月々払い”でも、契約主体と法律はまったく別物

まず押さえる軸は3つです。

  • 割賦か一括か(支払回数・期間)

  • 誰が立て替えるか(信用を誰が提供するか)

  • 誰がどの法律の規制対象か(割賦販売法・貸金業法・特商法)

役務の月々払いを整理すると、だいたい次の4パターンに収まります。

  • 自社割賦(自前の分割・売掛)

  • 個別クレジット(信用購入あっせん・信販)

  • 包括クレジット(クレジットカード決済)

  • ローン(金融機関との立替払契約)

ポイントは「顧客から見た体感」と「法律上の契約関係」がズレていることです。顧客からは全部「カード払い」「分割」でも、規制主体・管理義務・書面交付義務はまるで違います。

個別クレジット・包括クレジット・ローン・自社割賦の「販売法上の位置づけ」比較表

役務ビジネスで特に誤解が多いポイントだけを抜き出して比較します。

スキーム種類 債権者 主な法律の射程 事業者側の位置づけ リスクの主な所在
自社割賦 販売業者(あなた) 特商法(役務提供・表示・クーリングオフ)※条件により割賦販売法 販売店・債権者 未収金・延滞・民事紛争をフルで抱える
個別クレジット(信用購入あっせん) 信販会社(あっせん業者) 割賦販売法(登録・書面交付・立替払規制)特商法(販売業者として) 販売業者・加盟店 勧誘・表示違反の責任+一部求償リスク
包括クレジット(カード決済) カード会社 割賦販売法(包括信用購入あっせん)資金決済法等 加盟店 チャージバック・カード不正利用対応
ローン(銀行系・ノンバンク) 金融機関 貸金業法・銀行法等(総量規制・信用情報調査) あっせんする場合は「紹介」立場 ローン審査は金融機関側、役務側は契約紛争リスク

同じ「分割12回」でも、自社割賦だけは売上と一緒に債務不履行リスクも丸抱えになります。逆に、信用購入あっせんやカードは、「割賦販売法の番号通知・書面交付・登録少額クレジット」の世界に入る代わりに、未収金は外に逃がせる構造です。

「加盟店」「アクワイアラー」「あっせん業者」「販売店」それぞれの管理義務と罰則リスク

呼び名が多くて混乱しやすいので、「誰が誰を監督しているのか」を整理します。

  • 販売店(あなた)

    • 役務提供の主体
    • 特商法の勧誘規制・表示義務・書面交付義務の直接の相手
    • 違反すると行政処分・業務停止・契約解除請求のターゲットになる
  • 加盟店

    • カード会社・アクワイアラーと加盟店契約を結んだ販売業者の呼び名
    • 不当表示・不適切な分割勧誘があれば、加盟店契約の解約や加盟停止のリスク
  • アクワイアラー(加盟店管理会社)

    • カード会社と加盟店の間をつなぐ決済代行業者
    • 加盟店のモニタリング義務(不当勧誘・高額役務・チャージバック多発)
    • 不適切な加盟店を放置すると、カードブランドから制裁を受ける可能性
  • あっせん業者(信用購入あっせん業者)

    • 割賦販売法上の登録・認定の対象
    • 個別クレジット契約の書面交付・事前説明・信用情報の調査義務
    • 違反すれば登録取消や業務停止、監督機関(経済産業省・各経産局)からの行政措置

役務ビジネス側が見落としがちなのは、「カード決済を入れた瞬間、あなたも『加盟店管理の監視対象』に入る」という点です。チャージバックやクーリングオフ的トラブルが積み上がると、「手数料を払えば安全」どころか、「高リスク加盟店」とマークされます。

自社割賦は登録も番号も不要な代わりに、こうした監視の網に乗らず、すべてを民事で戦う構図になります。ここを理解した上で、「どのリスクは業者に預け、どのリスクは自社で抱えるか」を設計しておくと、あとから顧問弁護士や訴訟費用で財布が空になる事態を避けやすくなります。

その自社割賦、本当に“ただの売掛”で済みますか?現場で起きた3つの典型トラブル解体ショー

「パソコン1台・LINE1本で完結」だと思っていた役務の割賦契約が、気づいたら内容証明と弁護士からのFAXの世界にワープしている──現場でよく見るパターンを3つに絞って、どこで“アウト寄り”になるのかを分解していきます。

ケース1:LINEで“分割OK”と送っただけなのに、民事トラブル化したスクール事業

よくあるのが、スクール・講座の申込みがこの流れで進んでいるケースです。

  • 問い合わせ:InstagramからDM

  • 条件提示:LINEで「受講料30万円、分割もOKですよ」

  • 申込:Googleフォームで氏名・電話番号だけ

  • 決済:自社割賦、月々5万円×6回の銀行振込

ここで問題になるのは、LINEの断片的なメッセージが「実質的な契約書・重要事項説明」として評価される点です。割賦販売法の「書面交付義務」や特定商取引法の表示義務を意識していないと、後からこう主張されます。

  • 「総額をちゃんと説明されていない」

  • 「クーリング・オフできると思っていた」

  • 「解約したいと言ったのに既読スルーされた」

ざっくり整理すると、論点はこの3つに分かれます。

論点 どこが問題視されるか 最低限ほしい“証拠”
金額・支払条件 総額・分割回数・支払方法がバラバラのメッセージ 一枚で完結した条件提示ページやPDF
役務内容 カリキュラム・提供期間が曖昧 サービス内容と期間を明記した約款
解約・返金 中途解約ルールの不提示 解約条件と清算方法を明文化した条項

スクール側が「ただの分割払いの売掛」と思っていても、消費者側から見ればクレジット契約に近い心理負担を伴う高額取引です。ここで書面・電磁的交付をきちんとやっていないと、裁判所や紛争解決機関に持ち込まれた時点で大きく不利になります。

ケース2:年収・信用情報を見ずに分割を組み、回収不能で事業が焼けるコンサル契約

コンサルやWeb制作で多いのが、「審査」という言葉は使うのに、実質はなんちゃって審査になっているパターンです。

  • 年収・他社の債務・信用情報を一切確認しない

  • 分割の上限や支払回数に社内基準がない

  • 与信管理の担当もおらず、営業判断だけでOKを出す

ここで起きやすいのが、複数の高額役務を同時に抱えた消費者が“払いきれないライン”を越えてしまう構図です。貸金業法レベルの総量規制は直接はかからなくても、「明らかに支払不能が予見できるのに契約を締結した」と評価されれば、民事上の責任追及の余地が出てきます。

回収不能が連発し始めると、コスト構造は一気に崩れます。

  • 未収金の管理・請求業務

  • 弁護士への相談・内容証明の発送

  • ネガティブな口コミ・SNS炎上への対応

  • 担当者のメンタルダウンと離職

表面上の「手数料ゼロ・登録不要」という自社割賦のメリットが、実質的な“金銭コスト+時間コスト”に置き換わって逆襲してくる瞬間です。ここを避けるには、少なくとも以下は仕組み化しておきたいところです。

  • 申込フォームに年収・他社返済状況の項目を入れる

  • 分割上限額と回数を“属性別”にルール化

  • 支払遅延時の対応フロー(督促→分割条件見直し→法的手続)の文書化

ケース3:役務提供が遅れた結果、「支払停止の抗弁」的な主張で全部ひっくり返された例

「支払停止の抗弁」は本来、個別クレジットで信販会社(あっせん業者・クレジットカード会社)に向けて行使される仕組みですが、役務提供が遅れた自社割賦でも同じ構図の主張を受けることがあります。

典型パターンは次のとおりです。

  • 高額コンサル契約を分割購入(自社割賦)

  • 「毎月Zoom面談」「納品レポート」など役務を約束

  • 実際には開始が遅れ、面談回数も半分以下

  • 顧客が「約束どおりのサービス提供がないから、以後の支払は停止する」と主張

法的には自社割賦と個別クレジットは別物ですが、裁判や交渉の場では次のように整理されることが多いです。

観点 個別クレジット 自社割賦
債権者 信販会社 販売業者(自社)
規制法令 割賦販売法・監督機関は経済産業省 直接の登録義務は原則なし
顧客の主張 支払停止の抗弁 類似構図の「履行遅滞を理由に支払拒絶」
実務リスク 信販会社から加盟店への求償 事業者が全ての債権リスクを自腹で負担

役務提供の遅延や質の低下が明らかな場合、中途解約・返還・中途清算のルールが契約書にないと、全額返金要求まで一気に飛び火します。私の視点で言いますと、火消しの現場でまず確認するのは「どこまで役務が履行されているかを示す記録(ログ・納品物・議事録)があるか」です。

自社割賦を選ぶのであれば、少なくとも次の点は最初から設計に入れておくと、トラブル時のダメージを大きく減らせます。

  • 役務提供のタイムラインと完了基準を契約書に明記

  • 遅延時の代替措置(期間延長・内容振替)を条項化

  • 一定割合履行後の中途解約時の清算式(例:進捗○%分は精算済み)を入れておく

ここまでの3ケースに共通しているのは、「料金や支払回数」よりもLINE・メール・チャットといったラフなやり取りが、そのまま“唯一の証拠”になっている点です。役務の割賦契約を扱う事業であれば、今残っている書面とメッセージ履歴を一度棚卸しして、「法的に耐えうるレベルか」をチェックするところから始めてほしいところです。

「最初は順調だったのに一気に崩れる」役務割賦の破綻パターンと、プロがやっている火消し手順

「売上グラフは右肩上がり、キャッシュは右肩下がり」──役務の割賦契約が崩れるときは、いつもこの絵から始まります。

売上アップに酔っている間に、総量規制的な“払いきれないライン”を越えてしまう構図

役務ビジネスの自社割賦が危ないのは、「貸金業ではないから総量規制は関係ない」と思った瞬間からです。法律上の総量規制は掛かっていなくても、実務上は顧客ごとの“払いきれないライン”を越えた時点で、ほぼ同じ現象が起きます。

典型的な崩れ方を整理すると、次のような流れになります。

  1. 単価を上げ、分割回数を伸ばして「成約率アップ」
  2. 年収・信用情報・既存の債務残高を見ない“なんちゃって審査”
  3. 途中から遅延が出始めるが、「催促→一部入金」で自転車操業化
  4. SNSや口コミで不満が拡散し、新規リードが急減
  5. まとめて弁護士・内容証明が飛んでくる

ここで重要なのは、1件ごとの利益より「顧客の総支払額÷支払能力」を見る視点です。貸金業法の総量規制のように「年収の3分の1」とまではいかなくても、少なくとも以下はチェックしたいラインです。

  • 他社も含めた月々の支払総額

  • 顧客の安定収入(給与・継続的売上)の有無

  • 家計や事業キャッシュフローへのインパクト

私の視点で言いますと、「売上目標」だけで分割枠を決めている事業ほど、数年後に民事トラブルと炎上対応に時間と金銭を奪われています。

途中解約・返還制度・中途清算をどう整理すれば、裁判にならずに済むのか

役務の割賦契約が揉めるポイントは、「もう通いたくない/受けたくない」となった時の途中解約・返還・中途清算です。整理の仕方を間違えると、特定商取引法や割賦販売法の議論に一気に火が付きます。

最低限、次の3点を“契約前”に顧客へ書面交付しておくことが重要です。

  • 提供済み役務の評価方法(回数ベースか、期間ベースか、進捗ベースか)

  • 解約事由ごとの返金ルール(自己都合・事業者都合・不可抗力)

  • 違約金や解約手数料の上限(「実費+合理的範囲」に収まるよう設計)

視覚的に整理すると、こうなります。

論点 やりがちなNGパターン 争いを減らす整理の仕方
提供済み役務 「原則返金なし」とだけ記載 回数・期間・達成度など具体的な按分基準を明示
解約事由 事業者都合と顧客都合を区別せず一律扱い 事業者都合時は返金多めなどバランスを調整
解約手数料 高額の一律○%を設定 実費+合理的な事務コストの範囲に抑える

途中解約が発生したとき、プロはまず「特定継続的役務提供に該当するか」「クーリング・オフや中途解約のルールがどこまで強制されるか」を確認し、そこから逆算して中途清算額を計算します。ここでグレーな設定をしていると、裁判所の判断で一部条項が無効とされ、“全部取り消し”に近い結果になるリスクがあります。

プロがまず確認するのは“どの法律に該当するか”と“どこまで書面が残っているか”

火消しの現場で、最初にやることは感情論の整理ではありません。チェックする順番はほぼ決まっています。

  1. スキームの特定

    • 自社割賦か、個別クレジットか、ローンか、信用購入あっせんか
    • 誰が債権者か(販売業者・信販会社・金融機関)
  2. 適用法令の確認

    • 割賦販売法の対象か(支払回数・金額・信用供与の有無)
    • 特定商取引法の特定継続的役務提供か(役務の種類・期間・金額)
    • 消費者契約法で無効となりうる条項はないか
  3. 証拠(書面・電磁的記録)の有無

    • 契約書・約款・利用規約の版数と交付方法
    • 申込ページ・LP・チャット・LINE・メールのスクリーンショット
    • クレジットカードの利用明細や決済代行ページのログ
  4. 対応フローの整備状況

    • 遅延時の督促履歴(電話・メール・郵送)
    • 返金交渉や減額提案の経緯
    • 顧問弁護士や専門家への相談タイミング

特に役務ビジネスでは、LINEやメールの“ラフなやり取り”が実質的な契約内容として評価される場面が非常に多く見られます。申込ページでは「返金不可」と書いていても、個別のチャットで「状況によっては柔軟に対応します」と送っていれば、その文言を根拠に主張されることがあります。

プロが火消しをする際は、これらの情報を一度すべて時系列で並べ直し、「どの時点でどの法律のルールを踏み外しているか」「どこまでなら和解で巻き戻せるか」を冷静に判定します。ここまで整理してから動けば、裁判に行かずに済む余地はまだ残ります。

「クレジットカード決済があるから安心」は危険信号?カード・ローン・割賦販売法の誤解を解く

「カードで払ってもらってるから、法律まわりはカード会社が見てくれるでしょ」
この一言から、後ろ向きの売上が一気に膨らむケースが本当に多い。
役務ビジネスの月々払いは、「カード会社任せ」のつもりでいても、割賦販売法と特商法の射程には、がっつり自社も入ってくる構造になっている。

オンラインスクールやコンサル、Web制作のような役務ビジネスほど、クレジット・ローン・自社割賦の境界が曖昧なまま運用されているため、ここを一度、整理しておきたい。

「カードの利用明細がある=法律も全部カード会社任せ」は成り立たない

クレジットカード決済を使っていても、顧客と契約を締結するのはあくまで販売業者である自社。
割賦販売法と特定商取引法が見ているのは、「誰が役務を提供し、誰が顧客に説明しているか」という点だ。

下の比較で、「誰がどの法律の直接の射程に入るか」をざっくり押さえてほしい。

スキーム 顧客の契約相手 主な規制の矛先 役務業者側の責任感覚
クレジットカード一括 販売業者+カード会社 特商法(販売業者) 「カード会社任せ」と誤解しがち
クレジットカード分割 販売業者+カード会社 割賦販売法+特商法 実は販売条件の管理義務が重い
自社割賦(分割売掛) 販売業者 特商法中心 債権もリスクも全抱え
ローン(信販・銀行系) ローン会社 割賦販売法(あっせん含む場合) 販売側も説明義務は免れない

カードの利用明細が発行されていても、
・契約書面の交付
・クーリング・オフの説明
・中途解約の扱い
といった「販売条件の骨格」は、販売業者側が整えていないと、紛争時に不利な評価を受けやすい。

私の視点で言いますと、支払停止の抗弁が表に出る前段階で、LINEやメールのスクショが「契約内容の証拠」として出てくる場面が急増している

決済代行業者とクレジットカード会社とアクワイアラーの役割を取り違えると危ない理由

「うちは決済代行を挟んでいるから、その会社が全部チェックしているはず」
この思い込みも、役務割賦の現場でよく見る危険パターンだ。

プレーヤー 役割のイメージ 基本スタンス
加盟店(あなた) 役務の提供者・販売業者 説明義務・書面交付義務の主役
カード会社 顧客にカードを発行し、立替払いをする 割賦販売法上のクレジット事業者
アクワイアラー 加盟店を審査し、カードネットワークに接続 加盟店管理義務はあるが、現場説明はしない
決済代行業者 ネット決済の窓口を提供するシステム事業者 法律説明よりも「決済インフラ」寄り

決済代行業者の管理画面に「クレジット利用規約」が並んでいたとしても、それはカード利用の規約であって、あなたの役務契約の規約ではない
・役務内容
・支払回数と支払総額
・中途解約時の精算方法
といった重要事項を、自社の書面やページで説明していないと、「説明不十分」「重要事項不告知」と評価されるリスクが残る。

電子・オンライン完結サービスこそ、表示義務・規約・交付義務をミスりやすい

「パソコン1台で完結」「スマホだけで申し込み完了」というサービスは、紙の契約書を交わさない分、電磁的方法による書面交付の扱いがシビアになる。

よくある抜け漏れをリストアップすると、こんな形になる。

  • 申込ページに、支払総額ではなく「月額」だけを強調表示している

  • 「分割回数」「支払期間」「遅延時の対応」を、利用規約の奥深くにしか書いていない

  • 申込完了メールに、重要事項説明の全文リンクがない

  • クーリング・オフや中途解除の条件が、スクールLPには一切出てこない

  • LINE上のやり取りが実質的な契約条件なのに、保存・管理のルールがない

電磁的方法での交付が有効とみなされるには、「顧客がいつでも内容を確認できる状態であること」がポイントになる。
一度きりのポップアップ表示や、消えてしまうストーリー投稿に契約条件を載せているだけでは、「交付」と評価されないおそれがある。

役務ビジネスでカード決済を導入するのであれば、
・自社が販売業者として負っている義務
・カード会社やアクワイアラーが担っている範囲
を切り分けたうえで、オンライン上の「見せ方」と「残し方」を、割賦販売法と特商法のラインに合わせて再設計しておくことが、後悔しない運用につながる。

手数料だけで選ぶと痛い目を見る:自社割賦 vs 信用購入あっせんのコスト構造を“民事コスト”まで分解する

「登録不要・手続ゼロ」の裏で発生する、見えない金銭コストと時間コスト

「カード手数料3.5%?高い、高すぎる。自社割賦なら0%でいけるじゃん」
ここでニヤっとしている瞬間が、役務ビジネスの地雷ポイントです。

自社割賦は、割賦販売法上は単なる売掛に見えますが、実務では次の“見えないコスト”が積み上がります。

  • 延滞・未払の督促にかかる人件費と時間

  • LINE・メールの“ラフな合意”を巡る認識ズレの調整コスト

  • 解約・返還交渉での値引き・減額という形の実質損失

  • 内容証明や弁護士相談に至るまでの心理的負担

私の視点で言いますと、月商数百万円レベルのスクールやコンサル事業ほど、「登録不要」「審査なし」という甘さに引き寄せられ、結果的に営業所1つ分の工数を未回収対応に食いつぶされるケースが多いです。

一方、信用購入あっせんは、登録・審査・加盟店契約といった手続が面倒な反面、債権者があっせん業者に移るため、回収・延滞管理の大部分を手放せます。

項目 自社割賦(役務) 信用購入あっせん
債権者 販売業者(自社) あっせん業者
初期手続 契約書作成程度 登録・審査・加盟店契約
表面上の手数料 0〜1% 数%のクレジット手数料
延滞対応 自社で督促・管理 原則あっせん業者側
法的トラブル時の窓口 ほぼ自社一択 業者と分散

表面の手数料だけで見ると自社割賦が圧勝に見えますが、「未払対応」という見えない金銭コストと時間コストを計上しない限り、正しい比較になりません。

顧問弁護士・内容証明・訴訟・風評対策…すべて合算したときの“実質手数料”とは

役務の割賦契約がこじれると、次のような支出が一気に噴き出します。

  • 顧問弁護士との相談料・着手金

  • 内容証明郵便の作成・発送費用

  • 少額訴訟・通常訴訟の印紙代・出廷コスト

  • SNS・口コミサイト対応の風評被害対策コスト

これを1年間の売上に対する“実質手数料”として見ると、次のような構図になりがちです。

1年間の状況 自社割賦のみ 信用購入あっせん併用
表面手数料 0.5%(決済代行) 3.5%(クレジット)
法律トラブル関連費 売上の2〜5%に相当 売上の0.5〜1%程度
オーナー工数 月20〜30時間督促 月数時間の照会対応
実質トータル手数料感 3〜7% 4〜5%前後

数字はイメージですが、未回収・値引き・炎上対応も“見えない手数料”として乗ってくることを前提にしないと、割賦スキームの選択を誤りやすくなります。

特に「支払停止の抗弁」的な主張が出たとき、自社割賦では販売業者がフルで矢面に立ちます。信用購入あっせんスキームでは、割賦販売法・特定商取引法に沿った事前の販売条件管理が進んでいる分、紛争の整理がしやすいのが実務上の差です。

信用購入あっせんを使うときに、業者側が押さえておくべき販売条件・勧誘ルール

「クレジット会社が間に入るから安心」という発想で雑な勧誘をすると、一気に規制の射程に入ります。信用購入あっせんを使うなら、販売業者として次のポイントは外せません。

  • 割賦販売法・特定商取引法に基づく書面交付義務(概要書面・契約書面)の徹底

  • ウェブページ・LP・動画セールスでの重要事項の表示(役務内容、期間、支払総額、分割回数)

  • LINE・メール・チャットでのやり取りも、契約条件の一部と評価されうる前提でログ管理

  • 勧誘時に「ローン」「分割」「クレジット」を混同した説明をしない(誤認させる表示の禁止)

  • あっせん業者の加盟店規約にある禁止勧誘・クーリングオフ対応ルールの社内共有

信用情報の調査・審査は基本的にあっせん業者の役割ですが、販売側にも「無理な支払条件で契約を締結しない」という管理義務があります。年収・属性をざっくり把握せずに高額の役務を長期分割で締結すると、形式的にはセーフでも、民事紛争では不利な事情として評価されがちです。

自社割賦か、信用購入あっせんかを選ぶ場面では、「誰が債権者か」「誰が規制の正面に立つか」「トラブル時の民事コストはいくらか」を一枚で描き出してから判断することが、役務ビジネスを長く続けるための最低ラインになります。

現場で本当に役立つ「割賦スキーム選び」の判断フロー:事業規模・役務の種類・顧客層から逆算する

「とりあえず自社割賦」「カード決済あるから大丈夫」から一歩抜けて、“どこまで自分で債務リスクを抱えるか”を決めるのが出発点です。私の視点で言いますと、ここを曖昧にしたまま始めた事業ほど、2〜3年後に民事トラブルで一気に利益を削られています。

年商規模・営業所数・本店機能で変わる「自分で抱えていいリスクの量」

まずは「うちが背負っていい割賦残高はいくらまでか」を、感覚ではなく事業規模ベースで決めます。

事業の状態 割賦スキームの基本方針 自社で抱える割賦残高の目安
年商〜5,000万・営業所1(本店=自宅レベル) 自社割賦は少額・短期のみ。高額役務は信用購入あっせん・ローン中心 年商の5〜10%まで
年商5,000万〜3億・営業所1〜2 自社割賦と個別クレジットを併用。与信ルールと書面管理を必須化 年商の10〜20%
年商3億超・営業所複数・本店機能あり 社内に与信・回収フローを整備し、あっせん業者との契約も分散 年商の20%前後(上限管理必須)

ポイントは「売上」ではなく未回収リスクの総額を見ておくことです。割賦販売法そのものは売上規模で直接線を引きませんが、債権管理・訴訟対応・弁護士費用を自前で回せるかどうかは、年商と本店機能の有無で体感がまったく違います。

学生・主婦・専業フリーランス…属性別に変えるべき支払回数と限度設定

役務の割賦契約は、「属性ごとにどこまで背負わせるか」を決めないと、総量規制“的”な破綻ラインを一気に超えます。

  • 学生・専業主婦(収入不安定・信用情報も薄い層)

    • 支払回数: 3〜12回を上限
    • 限度額: 月収見込みの0.5〜1か月分まで
    • 原則として自社割賦より、信用購入あっせんかカードの一括・分割を優先
  • 会社員(給与所得者)

    • 支払回数: 12〜24回程度
    • 限度額: 手取り月収の3〜6か月分を上限目安
    • 勤務先確認や支払遅延歴のヒアリングを与信プロセスに組み込む
  • 専業フリーランス・個人事業主

    • 支払回数: 6〜24回(案件の入金サイクルに合わせる)
    • 限度額: 直近1年の平均月商の1〜2か月分
    • 売掛先の分散状況もヒアリングし、実質的な返済能力を確認

ここでの肝は、「なんちゃって審査」で済ませないことです。割賦販売法や貸金業法の厳密な枠外であっても、事後の支払停止・中途解約トラブルの頻度は“審査の甘さ”とほぼ比例します。

少額サービスの“登録少額クレジット”的な扱いと、高額役務の扱いを混同しないコツ

オンライン講座の分割1万円×3回と、コンサル契約の50万円×24回を、同じ「月々払い」として扱うと足をすくわれます。割賦販売法上も、一定金額・回数を超えると規制・書面義務・クーリング・オフの射程が一気に変わるため、金額レンジごとにスキームを切り替える発想が必要です。

  • 少額レンジ(合計5万〜10万円未満・12回以内)

    • 実務イメージ: 「登録少額クレジット」に近い扱い
    • 自社割賦でも管理はしやすいが、LINE・メールのやり取りを必ず書面(電磁的記録含む)に整理しておく
    • 決済代行・カードの分割を基本にして、未払時リスクを外部に逃がす設計が無難
  • 中〜高額レンジ(10万円超・13回以上、特に役務が長期継続)

    • 特定継続的役務提供・クーリング・オフ・中途解約ルールが一気に関係してくるゾーン
    • 信用購入あっせん業者やローン会社を前提にし、「誰が債権者か」「支払停止の抗弁がどこまで飛ぶか」を契約時に整理
    • 自社割賦を使うなら、解除・返還・中途清算の条件を規約と個別書面で二重に明示しておく

ここまでをフローにすると、「事業規模→顧客属性→金額レンジ」の三段階で“自社で抱えるか・外部に流すか・併用するか”を決めるのが、役務の割賦契約を壊さない最初の設計図になります。

読者の「今のやり方」をセルフ診断:5分で分かる“グレー&レッド”チェックリスト

「うちはグレーなのか、真っ赤なのか」を、ここで一度はっきりさせましょう。
今から挙げる10項目に、当てはまるものの数を数えてください。

チェック1〜5:表示義務・書面交付・規約・Mail/LINEの記載を確認する

次の5つは、割賦販売法・特商法の“入り口”部分です。ここでつまずいていると、後ろのスキーム設計がどれだけ良くても崩れます。

チェック1(表示)
役務の料金・支払回数・総支払額・中途解約時の精算方法を、申込ページやパンフレットにセットで表示しているか。

チェック2(書面交付/電磁交付)
申込時または契約締結時に、特定商取引法の「交付書面」に相当する内容を、PDFや紙で保存可能な形で渡しているか。

チェック3(規約の一貫性)
約款・利用規約・申込フォーム・案内LPの内容が矛盾なくそろっているか。支払回数や返金ルールが媒体ごとに違っていないか。

チェック4(Mail・LINEの位置づけ)
LINEやDMで、「分割OK」「今だけ30回まで」など条件を書いたメッセージを残しているのに、契約書には反映していない状態になっていないか。

チェック5(クーリング・オフ説明)
特定継続的役務提供に該当する可能性があるのに、クーリング・オフの記載自体がない、または「返金不可」とだけ書いていないか。

5つのうち、3つ以上NOなら、表示・書面レベルで「法律の射程に入っているのに、実務が追いついていない」ゾーンとみてよいです。

チェック6〜10:審査・管理義務・支払遅延時の対応フローを棚卸しする

ここからは、信用供与(クレジット・自社割賦)っぽいことをしているかどうかの診断です。

チェック6(審査の有無)
10万円超の役務を分割提供しているのに、年収・家計状況・他社支払状況など支払能力のヒアリングや信用情報の確認を一切していない

チェック7(支払回数と総額管理)
顧客ごとに「合計いくら・何件の分割を抱えているか」を一覧で管理しておらず、営業担当の記憶頼みになっている。

チェック8(遅延時フロー)
支払遅延が発生したときの社内フロー(督促→内容証明→弁護士相談など)が文書化されておらず、担当者によって対応がバラバラ。

チェック9(カード決済の誤解)
「クレジットカード決済だから、割賦販売法のことはカード会社側の問題」と社内で理解している人がいる

チェック10(自社割賦の位置づけ)
「うちはローンじゃなくて、単なる売掛だから」と説明しつつ、3回以上の分割・長期の支払期間・延滞利息の設定がセットになっている。

ここも3つ以上NOであれば、実質的に「自社クレジット」に近いことをしているのに、審査や管理義務の意識が追いついていない可能性が高いです。

結果パターン別──今すぐ変えるべき点と、顧問や専門機関に相談した方がいいライン

まずは「10項目中、いくつNGだったか」でレベル感をざっくり把握します。

NG項目数 リスクゾーン 今すぐやること 推奨アクション
0〜2 ライトグレー 細部の修正 表示・書面の文言を微調整し、記録の残し方を統一
3〜5 濃いグレー 仕組みの再設計 役務提供フローと支払条件を洗い直し、約款・書面を全面更新
6〜10 レッド 体制の立て直し 顧問弁護士または専門機関と一緒に、スキーム選択から組み替え

ライトグレー(0〜2)
・Mail/LINEの文面がややラフ、クーリング・オフ説明が弱い、といった「書きぶりの問題」が中心のゾーンです。
・このレベルなら、公的機関のガイドラインや経済産業省の解説ページを参照しつつ、自社で修正可能なケースが多いです。

濃いグレー(3〜5)
・役務提供の実態と契約書面がズレている、支払遅延時のフローが存在しない、といった「構造の歪み」が出始めているゾーンです。
・ここからは、顧客とのやり取りログ(Mail/LINE)を必ず回収して整理し、その上で「どの法律に引っかかる可能性が高いか」をプロに一度あたる価値があります。

レッド(6〜10)
・表示・交付・審査・管理の全部がモレている状況で、「一見順調な売上」の裏で、将来の民事コストが雪だるまになっているパターンが多いです。
・このゾーンでは、

  • 自社割賦を続けるのか
  • 信用購入あっせんやローンに切り替えるのか
  • 高額役務の販売方法自体を変えるのか
    というレベルからの見直しが必要になることがよくあります。

私の視点で言いますと、Mail・LINEのスクショとカード利用明細を一度全部並べてみる作業だけでも、どこがグレーでどこが真っ赤かが、事業者自身にもかなりクリアに見えてきます。そこから先は、NG数と売上規模を踏まえ、「自社で直す」「専門家に投げる」の線を引いていくと、ムダな民事コストを抑えやすくなります。

相談の現場から見える「よくある勘違い」Q&A:雑談レベルのやり取りをそのままケーススタディにする

「どちらが安全ですか?」にプロが即答しない理由と、代わりに必ず聞く3つの質問

「自社割賦とクレジット、どっちが安全ですか?」と聞かれた瞬間に、プロは答えを止めます。
安全かどうかはスキームそのものより、事業側の“抱えられるリスク量”で決まるからです。

私の視点で言いますと、ヒアリングでは必ず次の3つを先に聞きます。

  1. 単価と支払期間
    30万円×36回と、10万円×3回では、同じ「分割」でも割賦販売法・特商法の射程も、破綻時の債務残高もまったく違います。

  2. 顧客層と審査のやり方
    学生・主婦・フリーランス中心なのに、信用情報も年収も調査せず「なんちゃって審査」で組んでいないかを確認します。

  3. 年間件数と社内の対応体制
    年間10件と500件では、支払停止・中途解約・クーリングオフ誤認が発生する確率も、管理コストも桁違いです。

この3点を聞かずに「クレジットが安全です」「自社割賦が安いです」と言い切るアドバイスは、事業の財布事情と法的リスクを無視したガチャになりやすいところがポイントです。

「クレジットじゃなくてローンだから販売法は関係ないですよね?」にどう答えるか

次に多いのがこの質問です。
ここは「誰が債権者か」と「割賦販売法の対象か」で切り分けると整理しやすくなります。

支払スキーム 債権者 割賦販売法の典型的な位置づけ 事業者側が直接受ける規制
自社割賦 販売業者 役務の分割販売(条件により割販法の枠内) 特商法・民法・場合により割販法
個別クレジット 信販会社 割賦販売法の中心領域 勧誘・書面交付・加盟店管理
銀行系ローン 銀行等 多くは割販法の外(ただし別の金融規制) 表示・勧誘ルールは依然として問題になり得る

「ローンだから販売法は無関係」という発想は、規制主体が変わるだけで、事業者の説明義務・書面交付義務は消えない点を見落としています。
特にオンライン完結サービスでは、契約ページ・申込フォーム・電磁的交付書面をまとめてチェックしないと、後から「そんな条件は聞いていない」と支払停止的な主張をされるリスクが残ります。

「スタートアップだから、とりあえず自社割賦で…」と言われたときの現実的な落としどころ

スタートアップや小規模スクールでよく出るのがこの一言です。
手数料を嫌って自社割賦に振り切ると、回収・クレーム・炎上対応がそのまま自社の固定費になります。

現実的な落としどころとしては、次の順番で整理すると破綻しにくくなります。

  • 年商・営業所数・本店機能を基準に「抱えられる割賦残高の上限」を決める

    例: 年商3000万円クラスなら、役務残高は半年分程度まで、など内部基準を数字で持つ。

  • 高額長期だけ信用購入あっせん/個別クレジットに逃がし、少額短期だけ自社割賦に絞る

    登録少額クレジットに近い感覚で、3回払い・半年以内に限定する運用を検討する。

  • LINE・メールでの“分割OK”をやめ、必ず約款・支払条件・中途解約ルールを1枚にまとめて電磁交付する

    後日の紛争で一番揉めるのは「言った言わない」で、ここを潰すだけでも弁護士コストと時間コストは大きく削れます。

スタートアップ段階こそ、「登録不要・手続ゼロ」の楽さの裏にある民事コストという名の実質手数料を、数字ベースで試算しておくことが、役務×割賦契約を長く続ける前提条件になってきます。

執筆者紹介

主要領域は役務ビジネスの分割決済・割賦契約リスク整理。経産省・各経産局・e-Gov、業界団体、公表されている法律事務所の解説や信販あっせん事業者の一次情報を横断分析し、中小事業者が「どのスキームを選び、どこから外注し、どこを自社で抱えないか」を判断できる実務フローとチェックリストに落とし込むことを専門としています。