Web制作の価格交渉の断り方で値下げせず利益を守る実践テクニック

「今回だけ安くしておきますよ。」
その一言で、あなたのWeb制作の利益だけでなく、今後数年の単価まで静かに削られています。

多くのフリーランスや小規模制作会社は、
「紹介元の顔」「今月の売上」「クライアントとの関係」
この三つに縛られ、値下げ要求に対して実質「ノーと言えない状態」にあります。

しかも、ダメージは値引き額だけではありません。

  • 安く受けた案件ほど修正が増え、時給換算が急落する
  • 「前回できたので、今回もお願いしますよね?」と値下げが常態化する
  • 社内や家族には忙しさしか見えず、「儲かっていない」本音を言い出しづらくなる

これは交渉スキル以前に、価格交渉の構造そのものを誤解していることが原因です。

値下げ交渉の多くは、「本当に金額を下げてほしい」のではなく、

  • 稟議を通したい
  • 予算を今期にねじ込みたい
  • 初期費用の支払いだけが重い

といった「支払い条件の問題」が混ざっています。
ここを見抜けずにメールであいまいに謝り、少しだけ値引きする。
このクセを放置すると、手元に残る現金は確実に目減りしていきます。

この記事は、一般論のマナー解説でも、精神論でもありません。

  • 今日すぐに使える断りフレーズとメール例文
  • クライアントの本音を見抜く価格交渉のチェックポイント
  • 値下げではなく、仕様・支払い条件・段階導入で落としどころを作る設計方法
  • さらに、分割払いなど支払い手段を増やして値下げ圧力そのものを減らす方法

まで、Web制作の現場に特化して整理しています。

この記事を読み終えるころには、

  • 「申し訳ありません」を口癖にせずに、
  • 相手との関係を壊さず、
  • 自分の単価とブランドを守る

ための実務的な武器が手に入ります。

まずは、この記事全体であなたが得られるものを整理します。

セクション 読者が手にする具体的な武器(実利) 解決される本質的な課題
前半(マインドセット〜魔法のフレーズ集) 値下げ要求への即時返信テンプレ、対面・オンライン・メールの具体フレーズ、NG対応の見極め 焦って返信して案件を炎上させる、断り方が分からず毎回なんとなく値引きしてしまう状態
後半(防御策〜支払い設計・自社基準) 安く受けて揉める案件を避ける防御策、分割払い・段階導入など値下げ以外のカード、自社の料金表とサービス理念の作り方 「安さで選ばれる消耗戦」から抜け出し、値下げ交渉そのものが起こりにくい営業構造への転換

Web制作の価格交渉で、これ以上「その場しのぎの値引き」に時間もお金も奪われないために。
次のセクションから、まずは「値下げメールが来た瞬間に何を考え、何を言ってはいけないか」を具体的に分解していきます。

  1. 「値下げしてくれませんか?」が来た瞬間のマインドセットとNGな返事パターン
    1. 値下げ要求が来たとき、フリーランスと会社員で心理がどう違うか
    2. 焦って返信したメールが炎上の種になる典型パターン
    3. 「申し訳ありません」より先に考えるべき3つの質問内容
  2. その値下げ、本当に必要?相手の本音を読み取る価格交渉の心理学
    1. 「予算がなくて…」は本当か?値下げ圧力の読み取り方チェックシート
    2. 他社比較・言い値・社内規定…要求カテゴリごとの対策パターン一覧
    3. 誤解されがちな「ありがとう」と「お断り」のバランス感覚
  3. 今日すぐ使える!Web制作の価格交渉を切り返す“魔法のフレーズ”集
    1. 対面・オンライン会議での断り方:一言クッション+理由+代替提案
    2. コピペOKな返信メール例文:金額NG/仕様調整/辞退の3パターン
    3. 英語で来た打診への返し方:最低限押さえたいビジネス表現
  4. 「安く受けた案件ほど揉める」現場の実例と、プロがやっている防御策
    1. 最初は順調だったのに…中盤で機能追加クレームが増えた案件の実例
    2. 仕様を削らずに値引きした結果、信頼を失ったケーススタディ
    3. 値下げ交渉のたびに相性が悪くなるクライアントの共通点
  5. 値引きせずに乗り切る“提案の作り方”:価格ではなく中身と条件で勝負する
    1. 価格だけ比較されないための「提案書」の構成とキーワード設定
    2. 機能・ページ数・納期をどう組み替えればコストを下げられるか
    3. 「今回」「次回」「以降」の3ステップで関係を分ける提案術
  6. それでも合わない案件は断るべき?関係を壊さない上手な辞退テクニック
    1. 悪人にならずに「相性」を理由に断る一言フレーズ
    2. 断りメールの書き方:謝罪・感謝・期待の配分をどうするか
    3. 次回のチャンスを残すフォロー:他社紹介・条件が合えば再提案
  7. メールだけじゃない。LINE・チャット・対面での断り方の「操作感」違い
    1. スタンプ一つで印象が変わる?カジュアルなチャットでの注意点
    2. BCC/CCの入れ方で先方との関係が悪くなるパターン
    3. 対面での価格交渉は「沈黙」と「一言」のどちらを重視すべきか
  8. 値下げ以外のカードを増やす:分割払い・段階導入・オプション化の活用法
    1. 初期費用0円+月額払いという提案が通りやすい案件・通りにくい案件
    2. 機能を「あとから足せる設計」にして、将来の追加購入につなげる
    3. 分割決済を導入している制作会社が実践しているリスクの担保と説明ポイント
  9. 単発の価格交渉で終わらせない。「料金表」と「サービス理念」で値下げ圧力を減らす
    1. Webサイト上の料金ページに書いておくべき“線引き”の一言
    2. ランキングや相場に振り回されないための自社基準の作り方
    3. 教育・情報発信で「安さではなく価値」で選ばれる状態をつくる
  10. 執筆者紹介

「値下げしてくれませんか?」が来た瞬間のマインドセットとNGな返事パターン

「値下げできますか?」は、Web制作者にとってのメンタルクラッシャー通知だ。メールの件名を見た瞬間、手が止まり、頭の中で「断ったら次の仕事がなくなるかも」という不安が膨らむ。ここで焦って返信すると、その1通が赤字案件と関係悪化の種になる。

まずは「すぐ返さない自分を許す」ことからスタートしてほしい。価格交渉は、ビジネスとして冷静に扱うべきテーマであり、あなたの人格やデザインの価値を否定されたわけではない。

値下げ要求が来たとき、フリーランスと会社員で心理がどう違うか

同じ「値引き要求」でも、フリーランスと会社員では背負っているものが違う。その違いを自覚しておくと、ムダな罪悪感に振り回されにくくなる。

立場 頭によぎる本音 典型的な不安 やりがちなNG行動
フリーランス 仕事を失ったら家賃が払えない 「この依頼を逃したら次がない」 時給を無視して言い値で受ける
制作会社のディレクター 売上目標を落としたくない 「断ったら社長に何て言おう」 社内調整せずその場で値下げ確約
社内デザイナー 営業との関係を壊したくない 「面倒を起こしたくない」 納期や工数を削って残業で吸収

ペルソナ1のようなフリーランスは「紹介元の顔」と「自分の生活」を同時に守ろうとして自滅しやすい。ペルソナ2のような小規模制作会社のディレクターは、社内の売上プレッシャーから「とりあえず受ける」が口癖になりがちだ。

自分がどのパターンに近いかを認識した上で、「怖さゆえの自動値引き」を止めるのが第一歩になる。

焦って返信したメールが炎上の種になる典型パターン

現場でよく見る「後から自分の首を締める返信」は、だいたい次の3タイプに集約される。

  • 金額だけを下げて送ってしまう

例:「では60万円のところを40万円で対応します」
→仕様も納期もそのままなので、相手は「この内容で40万が相場」と認識し、次回以降も同条件で要求してくる。

  • ぼかした表現で期待だけ上げる

例:「何とかご希望に近づけられるよう社内で調整します」
→社内では調整できず、結局「やっぱり無理でした」と二重にガッカリさせる。

  • 感情で反応してしまう

例:「この金額でもかなり抑えているので、これ以上は厳しいです!」
→言っている内容は正しくても、トゲのある言葉遣いで関係をこじらせる。

「早く返さなきゃ」はビジネスマナーとして大切だが、早さより中身の方がダメージに直結する。最低でも数時間は置いて、「事実」「コスト」「今後の関係」を整理してから返信したい。

「申し訳ありません」より先に考えるべき3つの質問内容

値下げメールに対して、いきなり「申し訳ありません」「今回だけ特別に」という言葉を打ち始める前に、次の3つを自分に質問してほしい。

  1. この金額は、時給に直したときに赤字にならないか?
    過去の似た案件の工数を思い出し、ざっくりで構わないので「自分の手残り」を計算する。ここで赤字ラインを割るなら、値下げは論外と決めておく。

  2. 相手が本当に欲しがっているのは「安さ」か「支払いの楽さ」か?
    メール文面に「予算が固い」「今期は厳しい」「初期費用が…」といった言葉があれば、ニーズは金額そのものよりキャッシュフローにある可能性が高い。フェーズ分割や支払い条件の見直しも選択肢になる。

  3. このクライアントと今後も付き合いたいか?
    過去のやりとりを振り返り、コミュニケーションの相性やレスポンス、リスペクトの有無をチェックする。「毎回値切られる」「常に急ぎで投げてくる」相手なら、ここで線を引く判断もあり得る。

この3つを紙やメモアプリに書き出してからメールを書くと、「ビジネスとして筋の通った返事」になりやすい。感情ベースの自己犠牲ではなく、プロとしての価格と関係性を守るための交渉に切り替わる。

その値下げ、本当に必要?相手の本音を読み取る価格交渉の心理学

値下げ要求に即座に「申し訳ありません…」と反射すると、財布だけでなく自分の評価も一緒に削ってしまいます。まずやるべきは値下げではなく、「この要求は本気か、社交辞令か、単なるクセか」を見極めることです。

「予算がなくて…」は本当か?値下げ圧力の読み取り方チェックシート

予算理由の価格交渉が来たときは、感情ではなく事実ベースで仕分けします。下のチェックを3つ以上満たすときは「本当にお金の問題」である可能性が高めです。

  • 具体的な金額や予算枠が口に出ている(「80万円まで」「今期は50万円まで」)

  • 社内の決裁プロセスが説明される(「稟議の上限が●●円」)

  • 一括では厳しいが、月額や分割の話には前向き

  • 目的やKPIの話になると目が輝くが、支払いタイミングで急にトーンが落ちる

  • 値下げ要求の前に、内容やデザインにきちんと質問が出ている

一方で、次の要素が強いときは「とりあえず言ってみている」「値引きがクセになっている」パターンが多いです。

  • 金額の根拠が「他の会社はもっと安い」「相場はもう少し安いはず」の一言だけ

  • 仕様や工数の話をすると、急に興味をなくす

  • 予算を聞いても「とにかく安い方がいい」としか答えない

この仕分けをしておくと、「値下げに応じるべき人」と「価格で振り回す人」を早い段階で見極めやすくなります。

他社比較・言い値・社内規定…要求カテゴリごとの対策パターン一覧

値下げ要求は、理由によって打ち手がまったく変わります。現場で頻出するパターンを整理すると、こうなります。

要求のタイプ 典型フレーズ 本音になりやすい事情 有効な切り返し軸
他社比較型 他の会社は40万と言っている 情報の非対称を利用して値引きしたい 内容の差を一緒に確認、優先順位の整理
言い値型 予算は30万です 相場を知らない、単なる値切りクセ 工数と範囲を説明し、段階導入を提案
社内規定型 上限が100万までで… 稟議の上限、予算枠の制限 フェーズ分割、支払い方法の工夫
キャッシュフロー型 初期費用が厳しい 手元資金は薄いが投資意欲はある 分割払い、月額化、オプション化

同じ「安くしてほしい」でも、キャッシュフロー型なら金額より支払い方法の相談に乗る方が成約しやすい一方、言い値型に安易に合わせると、修正要求だらけの赤字案件になりがちです。

誤解されがちな「ありがとう」と「お断り」のバランス感覚

値下げ交渉を断るときのメールや言葉は、「感謝だけ」「謝罪だけ」だと相手に誤解を与えます。大事なのは、次の3要素のバランスです。

  • 感謝:依頼や紹介をくれたことへの「ありがとう」

  • 理由:金額を下げられない、あるいは条件を変える「ビジネス上の理由」

  • 代替案:関係を続けるための別の提案や今後のチャンスへの言及

例えば、他社比較で値下げを迫られたときの一言は、こう組み立てます。

  • 感謝

「今回のご相談と、他社様との比較の情報を共有いただき、ありがとうございます。」

  • 理由

「提示している金額は、要件定義からデザイン、公開後のサポートまでを含めた必要工数に基づいており、ここから単純な値下げをしてしまうと品質の保証が難しくなります。」

  • 代替案

「もしご予算を重視される場合は、ページ数を減らすか、一部機能を次回リニューアルに回す形で調整することは可能です。」

この3点を押さえておくと、「ありがとう」と「断り方」がセットになり、相手の印象を悪くせず、自分の価値も守れます。価格交渉は、金額の押し引きではなく、ビジネス関係を設計し直す対話だと捉えると、迷いが減っていきます。

今日すぐ使える!Web制作の価格交渉を切り返す“魔法のフレーズ”集

「その金額、もう少しなんとかなりませんか?」と来た瞬間が、プロと消耗戦プレイヤーの分かれ目です。ここでは、フリーランスでも小規模制作会社でも今日から使える、実務直結フレーズだけを並べます。

対面・オンライン会議での断り方:一言クッション+理由+代替提案

声で伝える時は、次の3ステップを意識すると印象がガラッと変わります。

  1. クッション言葉
  2. 値下げできない理由
  3. 代替提案(仕様調整や支払い条件)

よく使う型をまとめると、こうなります。

シーン 魔法フレーズ例 ポイント
単純な値下げ要求 「ご相談ありがとうございます。ただ、この金額が品質を守れるぎりぎりのラインでして…」 まず感謝、その後にラインを明示
他社比較を出された 「他社様と比べていただけるのは光栄です。当社は●●のサポートまで含めた価格になっています」 価格ではなく内容の違いに話を移す
予算オーバー 「予算感は理解しました。その中で優先度の高いページに絞る、という形なら対応可能です」 値引きではなく仕様調整へ切り替える
初期費用が重い 「初期の負担がネックとのことですので、分割や段階導入という形でならご一緒できそうです」 金額ではなく支払い条件を動かす

クライアントが「断られた」のではなく「提案してもらえた」と感じるかどうかは、この3ステップでほぼ決まります。

コピペOKな返信メール例文:金額NG/仕様調整/辞退の3パターン

メールは証拠が残るぶん、ビジネスのマナーと表現がシビアに見られます。よく使う3パターンをそのまま貼れる形で整理します。

【1】金額は下げないが、関係はキープしたい時


○○株式会社
△△様

いつもお世話になっております。
Webデザイナーの□□です。

お見積り金額についてご相談いただき、ありがとうございます。
今回ご提示した金額は、企画・デザイン・実装後のサポートまで含めて、必要な工数をもとに算出した最低ラインとなっております。

大変申し訳ないのですが、同内容のままでの値下げは対応が難しい状況です。
その代わり、ページ数や更新サポートの範囲を見直すことで、ご予算に近づけるご提案は可能です。

ご検討いただけますと幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

【2】仕様を削って予算内に合わせる提案をしたい時


今回のご予算内で進める場合、
・下層ページを○ページまでに絞る
・ニュース更新は貴社側でご対応いただく
といった内容であれば対応可能です。

上記内容での再見積をご希望でしたら、お知らせください。

【3】今回はきれいに辞退したい時


このたびは大変ありがたいご相談をいただきながら、
私の方で十分な品質を担保できる条件をご提示できず、心苦しく存じます。

貴社のご要望を拝見すると、本来であればもう少し工数をかけて取り組むべき内容と判断いたしました。
そのため、今回は無理にお受けするよりも、条件の合う他社様をご検討いただいた方が貴社のためになると考えております。

また別の機会に条件が合いましたら、ぜひお声がけいただけますと幸いです。
これからのご発展を心よりお祈り申し上げます。

「ありがとう」「今回」「今後」の3ワードをきちんと入れておくと、断り方の印象が柔らかくなります。

英語で来た打診への返し方:最低限押さえたいビジネス表現

海外企業や外資系担当から英語メールで値引き交渉が来るケースも増えています。完璧な英語より、失礼のない定番フレーズを押さえておく方が実務的です。

【値下げはできないが、理由を伝える】

  • Thank you for your inquiry and interest in our web design service.

  • Based on the required scope and workload, the proposed price is already the minimum we can offer.

  • To keep the quality and support at a professional level, we are afraid we cannot reduce the price further.

【仕様調整や分割など代替案を出す】

  • Instead, we can adjust the number of pages or features to fit your budget.

  • Another option would be to split the project into phases and start with the most important part.

  • If paying in installments is preferable on your side, we can also discuss payment terms.

【丁寧にお断りする】

  • We truly appreciate the opportunity, but under the current conditions we are not the best fit for this project.

  • We hope we will have another chance to work together in the future.

英語でも軸は同じで、「感謝→理由→代替案または今後への期待」の順番を崩さないことが、国を超えて信頼を守る鍵になります。

「安く受けた案件ほど揉める」現場の実例と、プロがやっている防御策

「安くしてあげたのに、なぜこんなに揉めるのか?」
多くのWebデザイナー・フリーランスが一度は味わう、この理不尽さの正体を、現場のケースから整理します。

最初は順調だったのに…中盤で機能追加クレームが増えた案件の実例

5名規模の制作会社が150万円のコーポレートサイトを、予算に合わせて90万円に値下げして受注したケース。
口頭で「ページ数を少し減らす」という話だけして、仕様の変更点をメールや契約書に明確に記載しなかった結果、中盤からクレームが連発しました。

  • 「最初の打ち合わせで聞いた機能が入っていない」

  • 「値引きしたけれど、内容はそのままのつもりだった」

クライアントは「金額だけ下がって中身は同じ」と思い込み、制作側は「仕様も削った」と思い込んでいる状態です。
素人が見落としがちなのは、値下げと仕様変更を必ずセットで“文章化”しないと、ほぼ確実に認識ズレが生まれる点です。

プロが実務で徹底しているのは、次の3点です。

  • 値下げ前後の仕様を【一覧表】にして、どこが変わるかを明示

  • メールで「今回の金額では、ここまでが提供範囲です」と記載

  • 打ち合わせの議事録をクライアントに共有し、回答をもらう

この3つをやるだけで、「そんなつもりではなかった」というクレームは激減します。

仕様を削らずに値引きした結果、信頼を失ったケーススタディ

別のフリーランスのWebデザイナーは、紹介案件で毎回10〜20%の値引きを「今回だけ特別」として受け続けていました。
仕様はフルセット、金額だけ下げる形です。一見「相手に世話になっているから誠意を見せた」ように見えますが、実際に起きたのは逆効果です。

視点 値引き前 値引き後(仕様そのまま)
クライアントの印象 相場通りのしっかりした会社 「頼めば安くしてくれる人」
要求の態度 遠慮がち 修正・追加の要求が増える
制作者の財布感覚 時給はぎりぎり黒字 時給はアルバイト並み

価格だけを下げると、クライアントはサービスの価値ではなく「言葉の強さ」で金額が決まると誤解しやすくなります。
そこから先は、値引き要求と追加依頼のスパイラルです。

プロがやっている防御策はシンプルです。

  • 値引きする場合は、必ず「削る仕様」をセットにする

  • どうしても金額を触れないなら、「別案件での割引クーポン」「次回のバナー制作を無償」など、範囲が明確な特典に置き換える

  • 見積書に「今回限りの値引き額」「通常価格」を両方記載して、恒常的な値下げに見せない

「安くする=好意」ではなく、「安くする=基準を曖昧にするリスク」として管理しているのがプロです。

値下げ交渉のたびに相性が悪くなるクライアントの共通点

トラブルになりやすいクライアントには、いくつか共通点があります。
現場でよく挙がる特徴を、チェックリスト形式でまとめます。

  • 予算の話をするとき、具体的な上限金額を出さず「とにかく安く」とだけ言う

  • 他社比較のとき、「あの会社はもっと安い」と金額だけを持ち出す

  • Webの目的(問い合わせアップ、採用強化など)より、デザインやページ数の多さばかりを要求する

  • 社内決裁のルールが曖昧で、「上司がこう言っていて…」と後出しの条件が多い

  • メールより電話やチャットでの依頼が多く、記録が残りにくい

こうした相手に対して、プロが最初から意識しておくべきスタンスは1つです。
「価格の交渉ではなく、条件の交渉に切り替える」こと。

  • 「その金額であれば、今回の内容から優先度の高い3ページに絞る提案はいかがでしょうか」

  • 「初期費用を抑える代わりに、保守の範囲をここまでに限定させてください」

このように「金額」ではなく「内容」と「条件」で話を組み立てると、相性の悪い依頼は早めに浮き彫りになり、早い段階でお互いにとってベストな断り方や次回のチャンスの残し方を選べます。

値引きせずに乗り切る“提案の作り方”:価格ではなく中身と条件で勝負する

「60万の見積を出した瞬間、相手の頭の中で“金額だけ比較ゲーム”が始まる」。ここを止めないかぎり、値下げ交渉は永遠に続きます。鍵になるのは「提案書の設計」と「条件の組み替え方」です。

価格だけ比較されないための「提案書」の構成とキーワード設定

同じ60万円でも、見せ方次第で印象はまったく変わります。金額の行だけが太字になっている提案書は、自分から「値下げして」と言っているようなものです。

提案書の骨格は、次の流れを外さない方が価格交渉に強くなります。

  • 目的・ゴール(問い合わせ増、採用強化など)

  • 現状課題(アクセス、導線、ブランド、運用体制)

  • 解決のための戦略(情報設計、コンテンツ方針)

  • 必要な機能・ページ構成

  • 体制・スケジュール

  • 金額と支払い条件

ここで意識したいキーワードは「売上」「採用」「工数」「保守」。金額の前に、クライアントの社内稟議にそのままコピペできる言葉を並べておくと、「高いか安いか」より「効果が出るかどうか」で議論されやすくなります。

価格欄は単に「一式 600,000円」ではなく、次のように分解します。

  • 企画・要件定義

  • デザイン

  • 実装

  • テスト・公開

  • 保守・サポート

これだけで、「ここまでやってこの金額なら妥当かもしれない」という空気をつくりやすくなります。

機能・ページ数・納期をどう組み替えればコストを下げられるか

値下げに応じるのではなく、「どこを削れば工数が下がるか」を冷静に示すのがプロの防御策です。

以下のようなマトリクスを1枚作っておくと、打ち合わせ中に迷いません。

調整項目 制作側の負担 クライアントへの影響 先に削る優先度
ページ数を減らす デザイン・コーディング工数が減る 情報量が減るが優先順位で調整可
動的機能を削る 実装・テスト工数が大きく減る 更新の手間が増える可能性
納期延長 短納期対応の残業が減る 社内スケジュール次第
保守縮小 月次の負担が減る トラブル時の安心感が下がる

会話の型はシンプルです。

  • 「金額を下げることは難しいですが、内容を調整して工数を抑えることはできます

  • 「この3パターンなら、どれが御社の優先度に合いそうでしょうか」

ここで「予算に合わせた値下げ」ではなく、「目的に合わせた内容の再設計」に話題をすり替えるのがポイントです。

「今回」「次回」「以降」の3ステップで関係を分ける提案術

ペルソナのように紹介案件が多いフリーランスほど、「今回値下げしたら、今後もずっとそれが基準になる」恐怖を抱えています。このリスクを減らすには、タイムラインで関係を切り分けておくと楽になります。

フェーズ 提案の軸 使えるフレーズ例
今回 スコープ調整で対応 「今回はこの範囲でご一緒させてください」
次回 正価ベースへの復帰 「次回以降は通常の設計と料金でご提案します」
以降 長期的な体制・支払い設計 「中長期の運用を見据えて、段階導入や分割払いも選択肢に入れていきましょう」

紹介元の顔を立てたい場面なら、値引きではなく「追加作業サービス」を一度だけ付ける形も有効です。その際は必ず提案書にこう記載します。

  • 「今回限定の追加対応(○○を無償で実施)」

  • 「次回以降は通常条件でのお見積りとなります」

一度きりの例外であることを紙で残しておけば、「今回が特別だった」という記憶が共有され、将来の価格交渉がかなり穏やかになります。

それでも合わない案件は断るべき?関係を壊さない上手な辞退テクニック

「このまま受けたら赤字確定。でも、断ったら次の仕事が来ないかも」
フリーランスでも制作会社でも、一度は胃がキュッとなる場面です。ここからは、悪人にならずに線を引く技術をまとめます。

悪人にならずに「相性」を理由に断る一言フレーズ

ポイントは、相手の人格ではなく「条件・体制」との相性」に責任を置くことです。

よく使える一言フレーズを整理します。

NG寄りの表現 OKな表現(相性ベース)
「その金額では無理です」 「弊社の制作体制では、この内容をその金額でお受けできません」
「そのやり方はできません」 「弊社の進め方と異なる部分が多く、良い結果を出せるイメージが持てません」
「時間がありません」 「現在のリソースとスケジュールを踏まえると、十分なクオリティを担保できません」
「他の仕事があって…」 「既存案件との兼ね合いで、今回のご期待水準を満たせないと判断しました」

一言クッションを付けると刺さりにくくなります。

  • 「せっかくお声がけいただいたのに大変恐縮ですが、〜」

  • 「お役に立ちたい気持ちは強いのですが、〜」

  • 「長期的なお付き合いを前提に、正直にお伝えしますと、〜」

目的は“角を立てずに本音を伝える”ことであって、媚びることではありません。
自分の価値と相手の予算・進め方が噛み合わない時は「相性」という言葉が一番平和です。

断りメールの書き方:謝罪・感謝・期待の配分をどうするか

価格交渉を断るメールは、謝罪7:感謝2:期待1くらいのバランスが扱いやすいです。
「申し訳」連発だけだと暗く、「ありがとう」だけだと軽く見えます。

構成はこの4ステップが定番です。

  1. お礼(紹介・依頼・見積検討への感謝)
  2. 判断理由(予算・スケジュール・体制など“ビジネス上の理由”)
  3. お詫び(お世話になっている相手なら強めに)
  4. 未来への含み(次回・条件が合えば、の一言)

例文(コピペ調整OK):


この度はWebサイト制作のご依頼およびお見積りの機会をいただき、誠にありがとうございます。
内容とご予算を慎重に検討した結果、弊社の標準的な制作プロセスでは、ご提示いただいた金額・スケジュール内で期待水準のクオリティを担保することが難しいと判断いたしました。

せっかくお声がけいただいたにもかかわらず、このようなお返事となり大変申し訳ございません。
長期的に信頼いただける関係を大切にしたく、今回は無理にお受けしない判断とさせていただきました。

今後、条件が合う案件や別の形でお力になれる機会がございましたら、ぜひ改めてご相談いただけますと幸いです。

「断り方のマナー」でよくある失敗は、理由をぼかしすぎて“単なる気まぐれ”に見えることです。
金額・予算・体制など、ビジネスとして腑に落ちる理由を1つだけでも明確に書くと、相手も感情的になりにくくなります。

次回のチャンスを残すフォロー:他社紹介・条件が合えば再提案

案件を断っても、関係を切る必要はありません。
むしろ、ここでのフォローが次の紹介・次回の依頼につながります。

有効なフォローは3パターンです。

  • 他社紹介型

    「今回の条件でしたら、〇〇分野が得意な△△社様の方がマッチするかもしれません」
    →自分の“得意・不得意”をはっきり示せるので、専門家としての信頼が上がります。

  • 条件が合えば再提案型

    「もし来期以降、予算が〇〇円以上確保できるようでしたら、改めて最適なご提案をさせてください」
    →相手の社内稟議や予算編成のタイミングと紐づくので、次回の連絡の口実になります。

  • 別サービス提案型

    「フルリニューアルではなく、まずはトップページの改善のみであれば、□□円〜から承ることも可能です」
    →今回は見送っても、小さな案件からスタートする導線を残せます。

電話や対面で断る時も、最後に一言こう添えておきます。

  • 「今後ともWebまわりで何かございましたら、まずはお気軽にご相談ください」

  • 「予算やスケジュールの条件が変わった際には、ぜひまた声をかけていただければうれしいです」

値下げを断ることは、自分の価値を守るビジネス判断です。
そのうえで、メールや言葉の選び方・他社紹介・次回提案の“逃げ道”を用意しておけば、「断ったのに信頼が増える」という状態も十分狙えます。

メールだけじゃない。LINE・チャット・対面での断り方の「操作感」違い

同じ「値下げNG」の内容でも、メールとLINEと対面では、相手に届く温度がまるで違います。フリーランスでも会社員でも、ここを取り違えると「マナー違反」「感じが悪い」と一瞬で信頼が溶けます。

手段 主な用途 強み 失敗しがちな断り方
メール 取引先・企業間の正式連絡 記録が残る、丁寧な説明がしやすい テンプレ丸出しで冷たく感じられる
LINE/チャット 既存クライアント・紹介案件 反応が速い、距離が近い 軽すぎてビジネス感が消える
対面/オンライン会議 初回打ち合わせ・重要案件 表情と声で誠意を伝えやすい 準備不足で言い負ける

スタンプ一つで印象が変わる?カジュアルなチャットでの注意点

紹介経由のクライアントから、LINEで「予算キツいんだけど、もう少しなんとかならない?」と来るケースはかなり多いです。ここでやりがちなのが、友だち感覚のノリで返してしまうパターンです。

悪い例
「了解ですー!どのくらいの金額イメージですか?😊」

この一文だけで、相手の頭の中では「値下げ交渉OKな人」に分類されます。スタンプや絵文字は便利ですが、価格・契約の話では乱用しない方が安全です。

チャットでのおすすめフォーマットは、次の3ステップです。

  1. 感謝+受領
    「ご相談ありがとうございます。メッセージ拝見しました。」

  2. 方針+理由
    「今回の内容ですと、作業工数と今後の更新サポートを含めて、提示金額が必要になります。」

  3. 代替提案の提示
    「もし予算が厳しい場合は、ページ数を絞るか、公開時期を2フェーズに分ける形で調整できます。」

スタンプを使うなら、やり取りの最後に「了解」系を1つ添える程度で十分です。値下げNGの核心部分は、あくまで文字で明確に伝えます。

BCC/CCの入れ方で先方との関係が悪くなるパターン

メールでの断り方は、文面より先に「誰に送るか」で地雷を踏みがちです。特に小さな制作会社のディレクターが注意したいのは、次の2つのパターンです。

パターン ありがちな設定 どう見えるか
紹介案件 宛先:担当者、CC:紹介元 「紹介元を巻き込んで圧をかけている?」と警戒される
社内共有 宛先:クライアント、BCC:社長 万一転送されると「こっそり社長に監視させている」印象になる

紹介元をCCに入れるのは、「お世話になっている◯◯様経由でのご相談のため、やり取りを共有したい」という意図でも、クライアントからはプレッシャーや監視に感じられることがあります。

価格交渉のお断りメールは、基本は1対1で完結させる方が関係を守りやすいです。どうしても社内共有が必要なら、クライアントとは別スレッドで社内連絡を回す方が安全です。

メール本文では、次の3点だけは外さないようにします。

  • 「ご相談ありがとうございます」と感謝を先に置く

  • 「弊社の制作体制と工数を踏まえると、この金額が下限です」と理由をはっきり

  • 「仕様を絞る」「納期をずらす」など、予算に寄り添う選択肢も添える

対面での価格交渉は「沈黙」と「一言」のどちらを重視すべきか

対面やオンライン会議で「もうちょっと安くなりませんか?」と切り出された瞬間、空気が重くなります。このとき、沈黙が長すぎても、一言で即答しても、どちらも危険です。

  • 即答で「難しいです」と返す

    → こちらの都合だけを押し付けている印象になりがち

  • 気まずくて沈黙が長くなる

    → 「値下げすればいいのに渋っている」と受け取られる

現場でおすすめしているのは、「短い沈黙+整理の一言」のセットです。

1〜2秒だけ見積書に視線を落とし、次のように切り出します。

「率直にお話すると、今回の内容と工数を考えると、これ以上の金額の値下げは難しいです。ただ、予算に合わせて内容を調整することならできます。」

この「一呼吸」があるだけで、「ちゃんと検討して答えてくれた」という信頼につながります。あとは、表を使って選択肢を見せると話がスムーズです。

プラン 金額 主な違い
A案 60万円 全ページ+ブログ機能+更新サポート
B案 45万円 主要ページのみ、ブログなし
C案 30万円 LP1ページ、解析・保守なし

沈黙は「考えている時間」として短く使い、その後は一言で方針を示し、表で具体策を見せる。この組み合わせが、対面の価格交渉で最も誤解が少ないスタイルです。

値下げ以外のカードを増やす:分割払い・段階導入・オプション化の活用法

値下げ交渉で本当に削るべきなのは「金額」ではなく、「支払い方」と「導入ステップ」です。ここを設計し直すだけで、同じ見積でも通り方がガラッと変わります。

初期費用0円+月額払いという提案が通りやすい案件・通りにくい案件

初期費用0円+月額払いは、「財布の痛み方」を変えるカードです。ただし、万能ではありません。現場での感覚を整理すると次の通りです。

通りやすい案件 通りにくい案件
BtoC寄り(個人事業主・小規模店舗) 上場企業や大企業グループ
「今期は現金が薄いが、どうしても今やりたい」 設備投資は一括で処理したい経理ルール
「月々◯万円なら払える」と明言している サイトを“資産”として一括償却したい
新規事業・テストマーケ案件 超短期のキャンペーンLP(数カ月で終了)

打ち合わせで、次の質問が出たら分割案を切るタイミングです。

  • 「月々どれくらいなら現実的か」

  • 「一括が厳しいだけで、トータル金額は問題ない」

  • 「社内稟議で、◯◯万円を超えると通しづらい」

こうした声が出た時は、

「初期費用を抑えて、月額◯万円の分割(信販会社の立替払いなど)という選択肢もあります。総額は変えず、支払いのタイミングだけ調整するイメージです。」

と説明します。信販会社の立替払いスキームを利用する場合、制作側は一括入金、クライアントは分割払いになる仕組みが公表されています。このような一般的な仕組みを前提に話すと、金額ではなく支払い方法の話に軸をずらせます。

機能を「あとから足せる設計」にして、将来の追加購入につなげる

「今は予算が足りない」が本音のクライアントには、段階導入+将来の追加購入という設計が効きます。ポイントは、最初から「足しやすい骨格」で作ることです。

  • CMS構成をモジュール化しておく(ニュース機能、ブログ、会員エリアなどを別モジュール扱い)

  • デザイン段階で「将来追加する導線(メニューやバナー枠)」だけ確保しておく

  • フォームや予約システムは、リンク差し替えで拡張できるSaaSを選ぶ

提案時は、こう見せます。

  • 今回: コーポレート基本セット(会社情報+サービス紹介+お問い合わせ)

  • 半年後候補: 採用ページ・ブログ機能

  • 1年後候補: 会員制コンテンツ・多言語対応

こうしておくと、

「今回は基本セットで◯◯万円、半年後に◯◯万円でブログ機能を追加できます。」

値下げではなく、時期をずらした投資として話をまとめられます。制作者側にとっても、追加開発という将来の売上のタネを残せます。

分割決済を導入している制作会社が実践しているリスクの担保と説明ポイント

分割決済(信販会社による立替払いなど)を導入している制作会社は、価格交渉の場で次の3点を徹底して説明しています。

  1. 「価格」はそのまま、「支払い条件」だけを変えていること

    • 「値引きではなく、支払い方法の違いです」と明言
    • 見積書に「一括払い時」と「分割利用時」の支払い条件を並列表記
  2. 制作会社側のリスクは信販会社が負っていること

    • 制作会社は信販会社から一括入金される一般的なスキームを説明
    • 回収リスクや審査は信販会社が担当する構造を簡潔に伝える
  3. クライアント側の注意点・デメリットも隠さないこと

    • 分割手数料が発生する可能性
    • 与信審査があること
    • 途中解約時の扱いなど「聞かれそうな質問」を先回りして説明

この3つをきちんと口頭+資料で伝えると、クライアントは「よく分からないローン」ではなく、「支払いタイミングを調整する普通のビジネススキーム」として受け止めやすくなります。

値下げカードしか持っていないと、交渉のたびに自分の単価を削ることになります。分割払い、段階導入、オプション化という3枚のカードを先に卓上に並べておけば、「金額を下げる前に、設計を変えましょう」という一言が言いやすくなります。

単発の価格交渉で終わらせない。「料金表」と「サービス理念」で値下げ圧力を減らす

値下げ交渉に毎回“アドリブ”で殴り合っているうちは、いつまでも消耗戦から抜け出せません。
価格の会話を楽にするスイッチは、実は「交渉の場」ではなく「自社サイトの料金ページ」と「サービス理念」の設計にあります。

Webサイト上の料金ページに書いておくべき“線引き”の一言

料金ページは金額を並べる場所ではなく、値下げ交渉の土俵を決める場所です。
最低限、次の3つは明文化しておくと、交渉時のメールや電話がぐっと楽になります。

  • 基本料金とオプションの分離(どこまでがセットで、どこからが追加か)

  • 値引きではなく「仕様調整」で対応する方針

  • 支払い条件(着手金・分割払い・締め日など)のルール

料金ページに添える“線引き”の一文イメージを整理すると、次のようになります。

シーン 記載しておく一言例 交渉時の効果
金額を下げてほしいと言われる 「金額調整は、機能・ページ数・サポート範囲の見直しで対応いたします。単純な値引きは行っておりません。」 値下げではなく仕様の話にすぐ切り替えられる
予算の上限が決まっていると言われる 「ご予算に合わせて、段階導入や分割払いのご提案も可能です。」 価格そのものではなく支払い条件の相談に誘導できる
毎回“今回だけ”と言われる 「継続取引での特別条件は、料金表とは別途個別にお約束書を交わしております。」 恒常的な値引きではないことを事前に示せる

ポイントは、普段から書いている内容を、交渉メールでそのまま引用できる状態にしておくことです。
「弊社の料金ページに記載の通り、単純な値引きは行っておらず…」と送れるだけで、フリーランスでも“個人のわがまま”ではなく“会社としてのルール”として伝えられます。

ランキングや相場に振り回されないための自社基準の作り方

「他の会社は30万円でやってくれるそうです」と言われた瞬間に揺れるのは、自分の基準が言語化されていないからです。
Web制作の価格は、少なくとも次の軸で決まります。

  • 工数(自分と外注パートナーの手間)

  • リスク(短納期・不確定要素・修正回数の多さ)

  • 提供価値(成果へのコミット度・コンサル要素)

これをそのまま見積書や料金ページに落とし込み、「なぜこの金額なのか」を説明できるようにします。

自社基準の軸 具体的な言葉への翻訳例
工数 「打ち合わせ×3回」「デザイン案×2案」「スマホ最適化込み」と明記
リスク 「想定修正3回まで」「短納期対応は+20%」と事前にルール化
提供価値 「公開後1カ月の運用サポート込み」「アクセス解析の初期設定込み」など

この「翻訳作業」をしておくと、ランキングサイトや相場記事を見たクライアントからの質問にも、落ち着いてこう返せます。

  • 「他社様と比べて高い部分は、要件定義と公開後サポートを含めている点です」

  • 「金額を近づける場合は、どちらかを削る必要があります」

自社基準を持っていると、価格交渉が“防戦”ではなく“情報提供”に変わります。

教育・情報発信で「安さではなく価値」で選ばれる状態をつくる

値下げ要求が多い制作会社ほど、Web上の発信が「安さ」「スピード」寄りになっているケースが目立ちます。
逆に、単価を守れている人たちは、次のような情報発信でクライアントの目線を“価格”から“成果”にずらす工夫をしています。

  • ブログやnoteで

    「安く受けた案件ほど揉めた話」「値引きの代わりに仕様を削った事例」を、失敗談として公開

  • 実績紹介で

    「問い合わせ数◯倍」など、金額ではなく結果を数字で見せる

  • FAQで

    「なぜ値下げしないのか?」に対し
    「安売りすると、必要な検証やサポートを削らざるをえず、長期的にはクライアントの損失につながる」
    とプロの視点から解説

ここに、支払い方法の選択肢も添えておくと、“高い”ではなく“どう払うか”の相談に変えやすくなります。

  • 例:「初期費用を抑えたい場合は、分割払いのご相談も可能です。信販会社を利用した最大96回払いのスキームも扱っています。」

料金表とサービス理念、そして情報発信が一枚岩になったとき、単発の「今回だけ安くして」が減り、価格交渉そのものの質が一段上がります。

執筆者紹介

Web制作など高額商材の分割決済導入支援を行う「まかせて信販」(株式会社ジブンゴト)所属。Web制作会社・システム開発・OA機器・エステ等、多様な事業者の導入支援を通じて、「値下げではなく支払い設計で成約率を高める」提案を実務ベースで行っている。本記事では、現場で実際に機能している価格交渉と支払い条件設計の考え方のみを厳選して解説。